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進む脱プラストロー、日本ストロー 環境性能強化で商機づくり(2018.12.3)

プラスチック製ストローの使用をやめる、あるいは素材を切り替える動きが外食産業などで広がっている。

米コーヒーチェーン大手スターバックスは7月、2020年までに世界でプラスチックストローを廃止すると発表した。日本でも対応する予定という。米マクドナルドは6月、英国とアイルランドの計1361店舗で9月よりプラスチック製ストローから紙製ストローに順次切り替えると発表した。マクドナルド全体としての目標は2025年として、日本もそれまでに切り替えを検討するという。

すかいらーくホールディングスは8月、2020年までにグループ約3200店でプラスチックストローを全廃すると表明した。「デニーズ」を運営するセブン&アイ・フードシステムは、「デニーズ」全約380店で原則として提供をやめる。まずドリンクバーの設置店を対象に11月から40店ほどで試験的に始めた。顧客の反応などを踏まえ2019年2月末までに全面実施する。日本ケンタッキーフライドチキンはプラスチック製ストローの廃止に向け、代替品の品質確認を進める。ストローや紙コップにつける蓋を求めない客には特典を用意するなどして使用量を減らすという。

そういった中、ストロー大手の日本ストロー(東京・品川区)は研究開発拠点を新設、水中でも分解するプラスチックや植物由来のプラスチックから作るストロー、紙製ストローの開発に着手した。環境負荷の低いストローの開発で先行し、「ストロー離れ」を商機に変える考えだ。熊本工場(熊本市)に約3億円を投じ、2018年中に研究開発拠点を新設する。新拠点では、環境対応商品の開発に力を入れ、第一弾は2019年春頃の製品化を目指す。従来品から切り替えやすいように価格対応に力を入れるという。また紙製ストローは強度に難があるほか、独特の香りで飲料の風味が変わる恐れがあるというが、臭いや味を押さえたストローの開発を目指す。

そもそも、使い捨てプラスチック製品が川や海に流出し、紫外線などにより、5mm以下になった「マイクロプラスチック」は有害物質を吸着しやすいといわれる。魚や海鳥に悪影響を及ぼし、人間に取り込まれる可能性もある。特にプラスチックストローはウミガメの鼻にささった痛々しい動画がWEB上で拡散したことで海洋汚染の象徴に位置づけられた格好だ。しかしながら、プラスチック製品全体に占める割合はごくわずかで、けっして根本的な解決策になっていないが、企業の失態が瞬く間に情報拡散し世界中から非難される時代。環境問題に敏感な消費者や投資家の視線を意識して、環境対策のアピールのためにやりやすいところから対応を急いだ感もある。

このような状況について、「『脱プラ』の流れについては、「なぜ、ストローなのか」という気持ちはありますが、「環境問題」全体の流れの一つとして理解しています。逆に言えば、それだけストローを含めたプラ製品が、いかに生活に身近にあるものであるかとも受け取れると思うのです。今後の国内市場については、来年のG20大阪サミットや東京オリンピックに向けた活発な動きは見られるものと思われ、国や自治体による法規制や環境整備に向けた動きはでてくると思われます。当社としては、今回の「脱プラ」の流れをひとつの契機として捉え、国内外のお客様の要望に応えるべく、各種の環境対応ストローの提案、また一方では、「プラ製ストロー」の特性・機能性がもつ、生活への必要性(乳幼児、高齢者、障碍者、医療向けなど)について改めて発信していきたいと考えています」(日本ストロー管理部)

本質的にはストローだけではなく、プラスチック製品全体の使用抑制や代替素材への転換が求められる。今後、こういったうねりは袋や容器に拡大していくであろう。また、欧米で進むように政府や自治体の規制の動きもでてくるであろう。一方、プラ製ストローの調達価格に比べ、紙製ストローの場合、5倍から10倍になるという価格問題。紙製ストローは強度に難があるほか、独特の香りで飲料の風味が変わる恐れがあるなどの機能問題。紙のほか、バイオマスプラスチックや生分解性プラスチックなども含めた代替環境素材の機能や価格、またプラスチックの資源循環の流れの中でどう位置づけるかなど、課題はでてくるであろう。政府、自治体、川上から川下にいたる企業が一体となって、どのように転換していくか、注目である。

2018-12-03 | Posted in G&Bレポート, ニュース情報/政策関連 |