G&Bレポート

甲子化学工業/ホタテ貝殻再利用のヘルメット、サンウエスパ/水草利用のバイオエタノール事業 エコプロ2023注目した展示から(2024.1.31)

 2023年12月6日~8日、東京ビッグサイトでは、SDGs Week EXPOとしてエコプロ2023が、社会インフラテック、カーボンニュートラルテック、自然災害対策展、ウェザーテックとともに開催された。また、企画展示として海洋プラスチックごみ対策パビリオンなども実施された。脱炭素、循環型社会への移行、気候変動対策等など、各社の対応は企業イメージ向上というレベルから、より実効性のあるものに向けて動き出しており、その中から、バイオマス分野において、注目した展示を紹介する。

(東南アジア最大の湖・トンレサップ湖に繁殖するホテイアオイ)

■サンウエスパ

 ㈱サンウエスパ(岐阜県岐阜市)は、生態系に悪影響を及ぼす水草を利用したバイオエタノールのビジネスモデル、日本国内の外来水性植物から生成したバイオ炭を展示した。
 同社は、1969年に創業、岐阜県下における古紙等再生資源の回収及び卸売業を展開している。『未利用なもの、無価値なものを再定義する』を事業コンセプトに掲げ、2016年より、リサイクル困難な古紙のシュレッダーダストからバイオエタノールを製造する実証事業をスタート。そして、2017年にJICAの採択を受け、カンボジアの湖を覆う水草からエタノールを生み出す調査を進めてきた。当初は、水草由来のエタノールを燃料用として使用する計画だったが、調査を通じて「燃料用としては収益化が難しい」という結論に至る。そこで、事業を持続可能なものにするために、エタノールを高付加価値化した「クラフトジン」にすることに着目し、カンボジアで製造する。同時にブランド「MAWSIM」を立ち上げ、2022年より日本での販売を開始した。
 
 バイオエタノールの製造は、カンボジア・コンポンチュナン州で行っている。原料は、カンボジアにある東南アジア最大の湖・トンレサップ湖に繁殖する世界最悪の害草のホテイアオイ。このホテイアオイは、南アメリカ原産の水草で世界の熱帯・亜熱帯域に生息し、国際自然保護連合種の保全委員会が作成した世界の侵略的外来種のワースト100に選ばれている。7ヶ月で200万倍にもなるといわれる繁殖力を持ち、その影響で湖を覆い、水上交通や漁業の妨げとなっている。
 2017年6月より「未利用水生植物のバイオエタノール化に関する案件化調査」が途上国イノベーション枠としてJICAより採択を受け、カンボジアで1年に渡り実地調査を行ってきた。その後、量産体制を構築するべく、プラントの建設に関して「令和2年度:ODA(政府開発援助)草の根・人間の安全保障無償資金協力を活用した官民連携案件」の採択を受け、カンボジア・コンポンチュナン州と連携して建設を開始、2022年4月に施工が完了し、プラントによるバイエタノールの製造を2022年7月に開始した。
 プラントの生産能力は日量55klであり、製造したエタノールは、水上生活者の必需品である発電機を動かす燃料や、消毒液への転用として活用し、中長期では、現地の水上生活者のボート燃料として活用する小規模分散型エネルギーリサイクルの実現や、同様の被害に悩む熱帯アジアの他地域での水平転換を視野に入れていた。


 「エタノールの付加価値は、飲料用にすることで燃料用の100倍以上にもなります。この市場の現実、アイデアからカンボジアでジンを製造するに至りました。そこでまず高品質なジンを生み出すべく、サトウキビ由来のバイオエタノールを「ベーススピリッツ」とし、原料や製法にこだわり2年がかりでレシピを開発し、クラフトジン「MAWSIM(マウシム)」を製品化いたしました」(事業担当)
現在はMAWSIM事業に加え、外来水草のプロフェッショナルとして日本国内で新たなエコシステムを構築することで、水草問題を解決することを展望する。

 

■三和エナジー

 三和エナジー㈱(横浜市港北区)は、SDGs Week EXPO、社会インフラテックにヒラオカ石油、大同井本エナジー、Go‐Toアサヒエナジー、ハタエ石油、大丸通商と共同出展、展開する各種バイオ燃料を展示、ブース内ではバイオ燃料セミナーを開催した。セミナーでは2024年1月に、埼玉県狭山市にB5生産スペック5,000KL/月、2024年8月には関西岸和田市にB5生産スペック10,000KL/月の大規模バイオ燃料製造プラントの開設を予定であると発表した。狭山市のプラントは、現在竣工を終え、出荷の準備を進めている。

 三和エナジーは、宇佐美グループの一員として、建設現場の大型重機に燃料を配送する事業を核としている。ガソリン・重油・軽油・灯油などの燃料を供給し、パトロール給油などを積極的に展開し、顧客の幅広い業務をサポートしている。また、大規模災害時の燃料配送や危険物の貯蔵・取扱施設の設計に至るお客様のBCP支援事業や、災害に強い地上設置型コンボルトタンク販売やA重油循環ろ過作業などのメンテナンス事業を含めたトータルエネルギーソリューションEESS事業(Emergency Energy Support System)を提供している。今年1月に発生した能登半島地震においても総力を挙げて対応を進めている。
 同社の主要取引先の建設会社、建設機械各社では、カーボンニュートラルの達成に向けた動きが加速している。CO2削減の方法としては、電動ショベルや水素エンジンショベルもあがるが、価格が一般機に比べ大幅に高く、水素は燃料補給インフラの課題もある。バイオ燃料は軽油に比べ価格が高いものの、ディーゼルエンジンをそのまま利用でき、車体改造など追加投資が不要という利点がある。そのため、廃食用油等を原料とするリニューアブル・ディーゼル燃料(RD)や軽油代替燃料の高純度バイオディーゼルB30燃料を使う実証実験が始まっており、軽油ディーゼルと比べたエンジンへの影響などの調査検証が進んでいる。三和エナジーは、建設現場におけるCO2排出の持続的な削減と使用済み食用油のリサイクルを目指し、バイオディーゼル燃料の供給に注力していく方針だ。
 少し遡るが、2023年4月に、同社はバイオディーゼル燃料(HVO・B100) を東急建設現場内の発電機へ供給開始した。B100燃料は従来、建設機械(建設重機、発電機)での利用は想定されておらず、メーカーの保証範囲外となっているため、利用検証は行われてきたが、まだまだ浸透していないのが現状であった。 ㈱アクティオが、品質が担保されたB100燃料を使用し、発電機にて燃料燃焼実験を2年間実施した結果、2022年8月、発電機本体に問題が発生しなかったことが確認され、この実験結果を踏まえ東急建設が、2022年8月に提供開始したバイオディーゼル専用発電機でB100燃料が使用されることとなった。
 「B100のCO2削減効果は高いのですが、価格も高く、一部の大手企業に限られると考えられ、当面はB5が主流となると予測しております。B5とはB100を5%未満軽油と混合した燃料でCO2を5%削減できます。軽油同等扱いのため、軽油を利用している車、重機、非常用発電機などにおいて切り替えが可能です。さらにB5はエコマーク認定も受けており、脱炭素の活動対応のPRが可能でもあります」(三和エナジー バイオ事業部)  
 同社は墨田区で稼働中の既存プラントに加え、2023年1月に埼玉県狭山市にB5生産スペック5,000KL/月のバイオ燃料製造プラントが竣工、8月には大阪府岸和田市にB5生産スペック10000KL/月のプラント開設し、更に供給配達エリアを拡大する予定だ。

■甲子化学工業

 甲子化学工業(大阪市東成区)は、猿払村の水産系廃棄物のホタテ貝殻を再利用した、環境配慮型ヘルメット「HOTAMET(ホタメット)」を展示した。
 このヘルメット、公益社団法人2025年日本国際博覧会協会が推進する「Co-Design Challenge」プログラムに採択、これに伴い、持続可能な開発目標(SDGs)達成への貢献を目指す「大阪・関西万博」の防災用公式ヘルメットの一種として導入され、採用が決定した。
 同社は、1969年の創業以来、病院やオフィス、コンビニで使われているものや生活雑貨など、現在年間1000種類のプラスチックを軸にプラスチックを軸に金型製作・成形・塗装・溶着から組み立てまで一貫加工を行っている老舗プラスチックメーカー。石油由来であるプラスチックの存在意義が問われている中、積極的にプラスチックの良さ・悪さを理解して、社会へ良い影響を与えることはできないか、挑戦し続けている。

 ホタテは現在、ALPS処理水の海洋放出問題に絡み、中国の輸入が規制されているが、国内の水産物の中でも輸出額の最多実績をもち、猿払村はホタテ水揚げ量日本一に何度も輝く、国内有数の生産地だ。一方、猿払村の位置する宗谷地区では、ホタテを加工する際に、水産系廃棄物として貝殻が年間約4万トンも発生。2021年には、ホタテ貝殻再利用を目的とした国外への輸出が途絶えてしまったことを機に、地上保管による環境への影響や堆積場所の確保などが地域の社会課題となっていた。同村の余剰ホタテ貝殻の状況を知った同社は、ホタテ貝殻の主成分が炭酸カルシウムであることに着目し、新素材の材料として再利用開発に着手。ホタテ貝殻も、村を支える重要な資源として捉え、再資源化の取り組みを開始した。
 主成分が炭酸カルシウムであるホタテ貝殻とリサイクルプラスチックをベースに、大阪大学 宇山浩教授と共に新素材の開発に着手。猿払村から、余剰貝殻の提供支援を受け、廃棄ホタテ貝殻と廃棄プラスチックを組み合わせた、プラスチック新素材「カラスチック」を開発した。HOTAMETは、カラスチック素材を使用している。その主な特徴は、新品のプラスチックを100%利用するのと比較して、最大約36%のCO2削減、またホタテ貝殻をプラスチックに混ぜ込むことで、強度(曲げ弾性率)が約33%向上した。
 「HOTAMET」は、貝殻から着想を得た、生物模倣(バイオクリーミー)の考えに基づき、素材の一部であるホタテ貝の構造を模倣した、特殊なリブ構造をデザインに取り入れている。その結果、少ない素材使用量でありながら、リブ構造が無い場合と比較して、約30%も耐久性を向上。素材開発から、設計に至るまで、環境への負担が少ない持続可能性に配慮したプロダクトになっている。さらに、カラーバリエーションは、CORAL WHITE(白)、SAND CREAM(ベージュ)、DEEP BLACK(黒)、OCEAN BLUE(青)、SUNSET PINK(ピンク)といった海にまつわる計5つのカラーを展開。漁作業だけでなく、防災用、作業用、自転車での通勤通学用など、さまざまな用途で使用が可能なラインナップとなっており、2023年度グッドデザイン賞を受賞した。Wolt Japan㈱と、デリバリーサービスWoltの配達パートナーに向けて、「HOTAMET」を、2023年内より順次導入を開始している。

(上記画像はイメージ)

 同社企画部の南原部長は、「現在、大手ゼネコンさま、大手エネルギー企業様でも採用が内定しており、詳細を詰めております。私どもは廃棄物をこれまで以上にリサイクルすることが、持続的な社会の推進において必要不可欠であると考え、持続可能な社会の構築により一層尽力すると共に、同様の取り組みの輪が日本や世界に広がっていくことを期待しております」と語る。

 

2024-01-31 | Posted in G&Bレポート |