研究情報

自然科学研究機構、理研等の研究G、複雑な形状のタンパク質をゼロからの人工設計に成功(2024.1)

 自然科学研究機構 分子科学研究所、同機構生命創成探究センター、理化学研究所、大阪大学、千葉大学の共同研究グループは、αヘリックスが不規則に並ぶ複雑な形状のall α型タンパク質の立体構造を人工設計する技術を開発し、これを用いることで、5本または6本のαヘリックスからなる5つの異なる複雑な形状のall α型タンパク質の人工設計に世界で初めて成功したと発表した。
 研究グループは、タンパク質の2次構造がαヘリックスのみから構成されるall α型タンパク質について、自然界に典型的に見られる18個のヘリックス-ループ-ヘリックス(HLH)モチーフと、ヘリックスの長さを組み合わせることで、αヘリックスが平行に並ぶシンプルな形状から、不規則に並ぶ複雑な形状まで多様な立体構造を生成できることを計算機シミュレーションで示した。そして、生成した構造の中から5つの異なる構造を選び、これらに折り畳むアミノ酸配列を計算機で人工設計し、生化学実験でそれらの折り畳み能を実証した。これにより、計算機で生成した多様な立体構造が実際に設計可能であることを示した。タンパク質の機能はその立体構造に基づいて発現されることから、多様で複雑な形状のタンパク質を設計することで、新規機能性タンパク質の創出につながることが期待される。

 タンパク質はアミノ酸配列に従って特定の立体構造に折り畳み、その立体構造にもとづいて機能を発現する。タンパク質の立体構造の形状は、規則的な水素結合パターンからなるβシートおよびαヘリックスと呼ばれる2次構造の3次元的な配置で大まかに決まる。しかしながら、多くの自然界のタンパク質の立体構造は、これら2次構造の配置に対称性や規則性を見出すことが難しい複雑な形状をしており、世界で初めてタンパク質立体構造を決定したKendrewは、決定したミオグロビンの下図の立体構造を見て “difficult to describe the arrangement in simple terms(そのヘリックスの配置を簡単な言葉で表現することは難しい)と述べている。

 

ミオグロビンの立体構造(リボンは2次構造であるαヘリックスを表す)

 近年、タンパク質の立体構造を主鎖を含めてゼロから設計することで、自然界に存在するタンパク質とは異なる新しいタンパク質を生み出す技術が進展している。しかしながら、2次構造がαヘリックスのみからなるall α型タンパク質については、これまでの人工設計のほとんどが、αヘリックスが構造中でほぼ平行に並ぶシンプルな形状をしており、自然界に見られるような複雑な形状を持つタンパク質を設計するための技術開発が求められていた。

詳しくは、→https://www.ims.ac.jp/news/2024/01/0105.html

 

2024-01-06 | Posted in 研究情報 |