研究情報

住友商事と米・ソラリアント、バガスとウッドチップ活用のバイオ燃料やバイオケミカル製造の実証実験へ(2024.1)

 住友商事㈱は、米国のソラリアントキャピタル(Solariant Capital LLC)と2023年12月7日に新たなバイオ燃料製造およびサプライチェーンの構築に関する基本合意書を締結し、製糖工場でサトウキビを圧搾した後の搾りかすのバガスとウッドチップから製造したバイオ燃料でディーゼルエンジンを稼働する国内初の実証実験を開始すると発表した。

 ソラリアントは米国カリフォルニア州の再生可能エネルギーの開発・投資会社で、日本法人ではバイオ燃料の取引も行っている。今回、ソラリアントが開発したバイオ燃料は、現在一般的な廃食油由来のバイオ燃料と異なり、バガスやウッドチップを熱分解して生まれる炭化物を重油と混合したバイオマス比率30%のバイオマス石油混合燃料だ。今後、炭化物に水を混合したバイオマス比率100%のバイオマス水混合燃料の製造も目指していく。
 また、熱分解時に、炭化物と同時に精製される揮発油については原油代替活用を目指し、国内の石油精製メーカーなどと協働し、バイオケミカルの製造も視野に入れ、さらなる実証実験を進めていく。

 今回の実証でバイオ燃料の原料とするのは、製糖工場で処理しきれないバガスと森林資源から供給されるウッドチップである。
 世界で年間約1億トン排出されるバガスは、製糖工場のボイラーの燃焼に利用されているものの、ボイラーの燃料効率が向上しているほか、サトウキビの品種改良によりバガス発生量が増え、利用しきれず廃棄されるバガスが年々増えており、その廃棄が社会問題となっている。
 日本の森林面積は国土面積の66%である約2,500万haで、その4割の約1,000万haが人工林となっている。人工林は戦後から高度経済成長期に植林されたものが多くを占め、うち半数が50年生を越えて伐期を迎えているものの、伐採や再造林が進まず、資源利用されないままの木材資源が多く存在する。
 これらの余剰バガスや木材資源をバイオ燃料やバイオケミカル製造に活用することで、世界や日本における、バイオマス廃棄による環境汚染解決や、脱炭素社会に資する取り組みを目指していく。
 今回の取り組みでは、サトウキビ生産の北限で杉生育の南限である鹿児島県の種子島で、2024年にソラリアントが実証設備を建設する。原料であるバガスは住友商事の持分法適用会社である新光糖業から、ウッドチップは種子島の森林組合から供給され、実証設備で製造された燃料は2025年から住友商事グループを通じて、主に重油を使用している需要家に対し提供していく予定だ。また、実証実験終了後、住友商事とソラリアントは商業プラントを建設し、2027年度から本格的にバイオ燃料およびバイオケミカルの販売を実施する予定だ。
 住友商事グループは、総合商社として培ってきたさまざまな領域での事業実績、中でもバイオケミカル関連事業の知見や開発実績を生かし、事業化後は、バイオ燃料およびバイオケミカルのマーケティングおよびトレーディングを担う。
 これらの一連の取り組みは、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の共創の場形成支援プログラム(COI-NEXT)共創分野(本格型)における東京大学未来ビジョン研究センター「ビヨンド・“ゼロカーボン”を目指す“Co-JUNKAN”プラットフォーム」研究拠点の研究開発課題「食品生産と生態系保全を強化するGX技術の実証・社会実装」において、代表機関である東京大学や参画企業のソラリアントや日本触媒、新光糖業などとも緊密に連携し、本事業の実現に向け協力していく。

詳しくは→https://www.sumitomocorp.com/ja/jp/news/topics/2024/group/20240111_2            関連情報→https://solariant.com/index.html

2024-01-13 | Posted in 研究情報 |