G&Bレポート

J-POWER・アジャイルエナジーX/次世代エネルギー循環モデルプロジェクト、フィッシュパス/生物多様性評価システム エコプロ2025注目した展示から(2026.1.28)

 2025年12月10日~12日、東京ビッグサイトでは、SDGs Week EXPOとしてエコプロ2025、サーキュラーパートナーシップEXPO、カーボンニュートラルテック、自然災害対策展が開催された。またエコプロの中ではスタートアップ支援の企画展としてJAPAN IMPACT ECONOMY EXPOも立ち上がった。その展示の中から注目した展示を紹介する。

■フィッシュパス 環境DNA分析及び生物多様性評価システム

 福井県坂井市に本社を置く㈱フィッシュパスは、河川・湖沼・沿岸域・用水路など、あらゆるフィールドで取得した採水サンプルから、魚類・希少種・外来種などを検出可能な環境DNA分析技術と、解析結果を迅速にフィードバックする生物多様性評価システムを展示した。大型哺乳類(クマ類)まで検出可能であるという。

JAPAN IMPACT ECONOMY EXPOでの展示から

 環境DNA分析は川の水をすくって調べるだけでどんな魚がどこにどれだけいるかが分かる技術で、水の中に含まれている魚の粘膜や糞などのDNA内の大量の遺伝情報を高速で読み解く「次世代シーケンサー」で解析する。この技術は龍谷大学の山中裕樹教授らが開発した技術で、社会実装のため共同研究を行っている。また、福井県立大学と提携して2024年に環境DNA分析センターを開設した。同センターで大量のサンプルの分析もできる。企業が環境に関する報告をする際、生物多様性に関する定量的、科学的なデータを示すことができる分析を始めている。
 また、国土交通省は、これまで関係機関とともに調査を進めてきたが、2026年度から、水の中に含まれる組織片から生物情報を把握する環境DNAを使った調査を初めて導入する方針を昨年発表した。

 前述の中ででてきた遊漁券のデジタル化事業は同社の創業事業であるが、もはやスタートアップとはいえないのではないかと思うほどの支持を得ている。遊漁券とは「入漁許可証」のことで、主に河川で釣りをする際、釣り人はその河川を管轄する地域の漁業協同組合(漁協)が発行する遊漁券を購入することで、釣りの許可を得ている。この遊漁券をデジタル化し、スマホで買える仕組みを構築した。釣り人の利便性をアップさせたことで、結果的に漁協の業務効率化や収入アップにもつながった。以降、フィッシュパスは全国の漁協とのネットワークをコツコツと築き、内水面漁協は全国で730あるが、提携する漁協の数は全国で356、利用河川数は販売準備中を含め411河川、国内シェア5割を確保、サービス利用者数はアプリとWeb版を合わせて同月時点で約160万人になっている。
 
 代表取締役の西村氏は、福井県坂井市生まれ。関西大学文学部卒業後、化学メーカー、コンサルタント会社を経て、2004年に福井県にUターンして飲食店の経営を経て、2016年にフィッシュパスを起業した。文学と釣り、一見距離がありそうに見えるが、西村氏が学生時代、文学界で一世を風靡し、多くの人に影響を与えた開高健氏は釣りをこよなく愛した作家であった。サケのように長い回遊から戻ってきたといえるのか、そして釣りは川だけではない。「現在、海洋においてもカキが大量死するなど海洋生物において多くの問題が起こっています。そういった課題解決にも貢献できることを目指していきたいと考えています。特に環境DNA分析技術とデジタル技術を融合させた生物多様性DXというソリューション提供を進めていきたいと考えています」と語る。

 

■J-POWER/アジャイルエナジーX 次世代エネルギー循環モデルプロジェクト

 J-POWER(電源開発㈱)と㈱アジャイルエナジーXは新規事業創出の取り組みの一環として「サステナビリティ」をテーマに次世代エネルギー循環モデルプロジェクトの展示を行った。
 トラックを持ち込んだ展示には背景があり、SDGs Week EXPO開催前の昨年11月、J-POWERにおいて、再生可能エネルギーから生じた未利用エネルギーの活用を軸にした次世代エネルギー循環モデルのトラックを使った社内展示が行われた。このモデル展示は、発電された電力の供給だけでなく、未利用エネルギーを様々な形に変換して社会に循環させることで、エネルギーの価値最大化を目指すものであった。またJ-POWERが培ってきたノウハウ・アセットとスタートアップ企業等の技術の融合としての実施であった。「このソリューションは多様なパートナー企業の技術協力により着実に前進していますが、まだまだ発展途上です。今回のSDGs Week EXPOで紹介する循環モデルを元に、多くの関係者や市民の発想や意見を集め、更なるイノベーションの創出につなげていきたいと企画しました。社内展示に協力をいただいたアジャイルエナジーXチーム、また主催者の協力のもと、JAPAN IMPACT ECONOMY EXPOにおいてトラック展示を主軸に紹介することとなりました」J-POWER イノベーション推進部企画室の稲福氏は語る。

JAPAN IMPACT ECONOMY EXPOでの展示から

 共同展示を行ったアジャイルエナジーXは、東京電力パワーグリッドの子会社として2022年に設立。アジャイルとは敏捷、機敏という意味をもつが、再生可能エネルギーで発電された電力で先端技術「分散コンピューティング」システムを稼働させ、デジタル価値や環境価値を生成・提供することなどで、再エネのさらなる導入を促進していくことが同社の主軸テーマである。
 天候で発電量が変動する太陽光などの再エネ(変動性再エネ)は、電力需給バランスの維持のために出力制御や系統制約を受けやすい傾向があり、有効活用できない余剰電力が生じている。近年、このような再エネの出力制御量が全国的に増大傾向にあるほか、系統混雑が原因で再エネ連系が困難な状況でもある。このため、国内には現在の発電電力量の最大2倍のポテンシャルが存在するとの試算もある中で、このエネルギー資源を十分に活用しきれていない実態がある。                       

 アジャイルエナジーXは、この状況を打開し再エネ導入量を拡大させるために、電力需給の変化に呼応し電力需要を柔軟に創出することで、再エネの出力制御や系統制約を緩和する革新的なアプローチを全国に提供する、「ソリューション・インテグレーター」である。代表取締役の立岩氏は、「この共同プロジェクトでは、その過程で生じる熱やCO2も余さずに活用し、食料生産や資源創出など、異分野の技術を掛け合わせることで、エネルギーの可能性を多層的に引き出す「究極の循環経済」の構築を目指しています」と語る。

今回のプロジェクト展示では、下記の10テーマのパートナー企業等による展示が行われた。
① 小型風力発電機(㈱チャレナジー)
② 小型バイオガス発電システム(環境微生物研究所㈱)
③ ぺロブスカイト太陽電池(Active Surface Inc.)
④ ワイヤレス給電(㈱ベルデザイン)
⑤ 空冷マイニング装置
⑥ 液浸マイニング装置(篠原電機㈱)
⑦ 熱電発電モジュール(フレキーナ)(㈱Eサーモジェンテック)
⑧ DAC(Direct Air Capture)(SyncMOF㈱)
⑨ アクアポニックス
⑩ 溶融塩電解(アイ’エムセップ㈱/京都大学)
この中から、注目した展示を紹介する。

■環境微生物研究所/植物性残渣発電装置
 環境微生物研究所㈱は、牛の胃のルーメン液を用いて雑草や野菜くず等の植物性残渣を効率的に処理し、メタンガスや電気を創出するメタン発酵システムの開発・販売を行う。2022年8月創業の石川県立大学発のスタートアップだ。植物性残渣の処理費を削減するとともに、発生するバイオガスの活用により循環型社会の実現に貢献する。雑草などがあれば災害時にも自立的に稼働できるため、災害時の熱源・電源としても活用可能である。J-POWERは、第三者割当増資を引き受け、2025年8月出資した。

JAPAN IMPACT ECONOMY EXPOでの展示から

■篠原電機/液浸装置、ビットマイニング装置
 先進的な「二相式液浸冷却システム」を採用した装置は篠原電機(大阪市北区)製造による。マイニング装置をファンではなく、絶縁冷媒で直接冷却する。空冷式と比べ、静音性に優れ、排熱を効率よく回収し、他の技術につなげることに適した装置である。従来のデータセンターでは、空冷方式が一般的であったが、当方式は空気の流れを考慮したラック配置は不要で、スペース効率を高め、電力消費量の大幅な低減を可能にする。

画像提供:アジャイルエナジーX

■アイ’エムセップ㈱・京都大学/溶融塩電気化学プロセスによる炭素資源
 アイ’エムセップ㈱(京都府京田辺市)は高温の溶融塩でのCO2を電気分解し、「炭素資源」へ変換するMSEP(Molten Salt Electrochemical Process:溶融塩電気化学プロセス)をコア技術に展開する。2006年創業の京都大学発の研究開発型ベンチャー企業。単なるCO2削減に留まらず、高付加価値な炭素資源(グラファイトやダイヤモンドなど)を生成する究極のカーボンリサイクル技術。従来困難だった金属精製や新素材(炭素膜)の生成も視野に入れる。

溶融塩電気化学プロセスの原理:アイ’エムセップのサイトより

 

 スタートアップは、新たな社会課題を解決する主体として、経済成長を果たすうえで鍵を握る存在になっていると言われる。各社、またプロジェクトの今後の展開に注目したい。

 

2026-01-15 | Posted in G&Bレポート |