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食料・農業・農村基本計画 市場逆風や環境問題へ対応  米国の2018農業法 藻類バイオマスの農業認定 (2020.4.22)

 政府は3月31日、中長期的に取り組む農政の方針を定めた、新たな「食料・農業・農村基本計画」を閣議決定した。基本計画は食料・農業・農村基本法に基づき、向こう10年の農業政策の指針で、情勢変化を踏まえ、5年ごとに見直しを行っており、2015年3月以来5年ぶりの見直しとなった。人口減少による国内市場の縮小、耕作放棄地の増大、農業就業者数の大幅な減少といった逆風が続くが、国内の食料消費が国産でどの程度賄えているかを示す食料自給率は、熱量で換算するカロリーベースで2030年度に45%とする目標を設定し、金額で換算する生産額ベースの食料自給率の目標は2030年度に75%とした。2019年に9121億円だった農林水産物・食品の輸出額を2030年までに5兆円に引き上げる目標も記した。


世界先進国の食料自給率(農林水産省資料より)https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/011.html

 今回の計画では、規模の小さい経営や家族経営も支援する方針を打ち出した。また、地球環境分野、特に食品ロス問題対策、SDGs(持続可能な開発目標)に貢献する施策の推進、気候変動への対応や関連する大規模自然災害への対応、プラスチック問題への対応、現在、世界最大の難敵である新型コロナウィルス感染症をはじめとする新たな感染症への対応も盛り込んだのも特徴だ。特に地球環境問題関連分野、SDGs、食品ロス、気候変動や地球温暖化対策、プラスチック問題などの対策は、下記のような内容だ。

●食品ロス問題への対応
 事業系食品ロスを2030年度までに2000年度 比で半減させる目標の達成に向け、「食品ロス削減推進法」に基づき、事業者、消費者、国、地方公共団体における食品ロス削減の取組を加速化する。食品製造業、食品卸売業、食品小売業が一体となった納品期限の緩和、賞味期限の年月表示化・延長、受発注時の需要予測精度の向上やリードタイムの調整、欠品に対する取扱い等業界の商慣習の見直しを推進し、フードチェーン全体で食品ロスを削減する。また、食べきれずに残した料理の持ち帰りの取組など、食品関連事業者と連携した消費者への働きかけを推進する。
 さらに、新技術を活用した需要予測やフードシェアリング等の効果的な取組を推進する。また、未利用食品の利用を一層進めるため、食品関連事業者等とフードバンク活動団体とのマッチングを推進する。それでも廃棄される食品については、食品関連事業者、再生利用事業者と農業者との連携により、資源として再生利用する取組を推進する。

●プラスチックごみ問題への対応
 食品産業分野においては、新たな汚染を生み出さない世界の実現を目指し、プラスチックごみ対策を強力に推進する。具体的には、使用済みペットボトルの100%有効利用に向けた、消費者が利用しやすい業界横断的な回収体制の構築等、食品分野における容器包装プラスチックの更なる資源循環を推進する。過剰なプラスチック製容器包装の使用の抑制を図るため、食品分野におけるプラスチック製買物袋の有料化義務化の円滑な導入等を進める。
 農業分野においては、廃プラスチックの回収・適正処 理の徹底や循環利用の促進、排出抑制のための中長期展張フィルムや生分解性マルチの利用拡大、被覆肥料の被膜殻の河川等への流出防止等の取組を推進する。

●気候変動に対する緩和・適応策の推進~地域経済循環の拡大
 農林水産分野の温室効果ガスの排出削減対策や農地による吸収源対策等を推進しつつ、温室効果ガス排出削減目標の確実な達成に向け取組の強化を図るため、「農林水産省地球温暖化対策計画」(2017年3月決定)を改定するとともに、再生可能エネルギーのフル活用と生産プロセスの脱炭素化、農畜産業からの排出削減対策の推進と消費者の理解増進、炭素隔離・貯留の推進とバイオマス資源の活用、海外の農林水産業の温室効果ガス排出削減を推進する。さらに、家畜排せつ物等のバイオマス資源を有効利用したバイオガス化の取組や省エネルギー性能の高い施設園芸設備・機器の導入等により、気候変動の緩和策を推進するとともに、再生可能エネルギーの主力電源化に寄与する。こうした取組により、農村において使用する電力の100%再生可能エネルギー化に向けて、体制を構築する。
 再生可能エネルギーについては、地域経済循環の拡大の観点から、災害時のエネルギーの安定供給に向けて、大規模電力に依存しない分散型エネルギーシステムとして、地域内活用を推進する。家畜排せつ物、食品廃棄物、稲わら・もみ殻等のバイオマスについて、発電に加え、エネルギー効率の高い熱利用や、発酵過程で発生する消化液等の利用を促進するほか、新たなバイオマス製品の製造・販売の事業化に向けた技術開発や普及等を推進する。

 


 

 米国において、今回の日本の食料・農業・農村基本計画と対比するものを上げるとすれば、計画と法律の違いはあるが、2018年12月に成立した農業法であろう。(Agriculture Improvement Act of 2018)米国では概ね5年ごとに農業法と呼ばれる法律を制定し、主要な農業政策を定め、また革新的な施策も送り出してきた。農業先進大国の米国と食料自給率の低い日本は台所事情が違うため単純な比較はできないが、2018年の農業法はいくつかの新しい視点を含んでいる。
 2018年農業法の主要な課題は、長引く農産物の安値に対応した農業所得安定化政策の改定である。綿花と酪農のセーフティーネット再構築、不足払い・収入ナラシ制度の柔軟性拡大等である。財政制約の下で当面の支出を抑制しながら農産物の値下がりや高値の再来に備えた。農作物保険や農産物プログラムなどは、継続されたが、一部は大幅に変更された。

 新たな改正点として注目されたのが、藻類が農業分野に加えられたことである。藻類は海藻なども含め多系統に分類されるが、その中の微細藻類は、通常は水中に存在する顕微鏡サイズ(直径10ミクロン程度)で、有用物質生産、利用が注目を集めている。日本国内で知られている種類はクロレラ、ユーグレナ(和名:ミドリムシ)、スピルリナなどだが、農作物の一つであると認定をうけ、優先作物として米国農務省の支援に組み入れられた。上記は、2019年秋、筑波大学で開催されたカルフォルニア大学Stephen Mayfield教授の講演からであるが、その改正の概要を米国農務省や藻類バイオマス協会(Algae Biomass Organization)の発表内容からまとめると次のような内容だ。具体的には、藻類分野において、
●農作物保険(Crop Insurance)の適用、不作時に補償される
●藻類農業研究プログラム(Algae Agriculture Research Program)の設立
●バイオマス作物支援プログラム(Biomass Crop Assistance Program)の適用
 新しい資源作物の開発、生産、販売のために農家に財政的支援を提供するプログラム
●バイオベース市場プログラム(Biobased Markets Program(BioPreferred))の見直し
 生物学的に捕獲、回収された炭素から作られた製品の認証基準を確立することを示した。このバイオベース市場プログラムは、BioPreferredプログラムとも言われ、この柱は、
1)政府機関およびその請負業者のバイオベース製品購入義務制度
2)バイオベース製品普及のためのラベル認証制度
 農産物の新市場の開拓や、バイオベース製品の開発、購入、使用の増加により、化石資源への依存を下げ、再生可能な農業資源の使用の増加、環境や健康への貢献を目指している。バイオベース製品とは、植物やその他の再生可能な農業、海洋、林業の材料に由来し、従来の石油由来製品に代替するものと規定。潤滑剤、洗浄剤、インク、肥料、バイオプラスチックなど、2020年4月時点で139のカテゴリーがある。食品、動物の飼料、燃料は含まれない。日本では一般社団法人日本有機資源協会の運営するバイオマスマーク事業が最も近い。

 バイオベースか化石資源由来かについては、C14の含有量分析に基づいており、化石由来の材料にはC14が残っていないため判別が可能だ。化石燃料燃焼システム由来のCO2を藻類培養などに利用、製品化するケースもあり、明確にしていくものとみられる。 


https://www.biopreferred.gov/BioPreferred/
●バイオリファイナリー支援プログラムの適用(Biorefinery Assistance Program)
 再生可能化学物質及びバイオベース製品の製造のための藻類およびその他のバイオリファイナリーのプロジェクトについて、バイオ燃料の生産に限らず、適用対象として含める。
●炭素捕獲と利用(Carbon Capture and Use)
CCU(Carbon Capture and Use)の研究、教育、活動を拡大するための規定が追加された。
 
 「日本のバイオマスは、林地残材、家畜排泄物、稲わら等、有効に使われていなかったものを利用するところが出発点になっています。藻類や将来性ある資源作物などの分野は、耕作放棄地利用などの点でウォッチしていますが、米国とは農業事情も異なり、優先的に取り組むところまでは至っていません。国内外の情報収集は、引き続き進めていきます」(農林水産省食料産業局バイオマス循環資源課)
 新型コロナウィルスの健康被害、経済影響等の打開に全力を上げる両国であるが、米国では農業分野の新しい枠組みを作り、藻類の事業化の流れが先行すると思われる。そういった事例を受けて今後、日本においてどういった国の戦略・計画に具体的に組み入れていくか注目だ。