G&Bレポート,海洋の持続可能性

京都府亀岡市 プラ製レジ袋提供禁止条例可決   海洋含めた生分解性プラ袋導入検討中   市民・事業者と一体で(2020.5.12)

 3月24日、亀岡市議会定例会令和2年3月議会において「亀岡市プラスチック製レジ袋の提供禁止に関する条例案」が可決された。この条例により、2021年1月1日からプラ製レジ袋の提供が有償無償を問わず禁止される。紙袋や生分解性プラ袋も無償配布は禁止となり、2021年6月1日からは、これらに違反した事業者が市の立ち入り調査や是正勧告に従わない場合、事業者名を公表することとしている。但し、条例の施行にあたっては、事業者や消費者への支援策として複数の事業者で代替袋を共同購入できる仕組みづくりや補助制度の導入を検討していく予定という。2020年7月から国は、法律によりレジ袋有料化を義務付ける方針だが、この条例は一歩踏み込んだ、世界の環境先進レベルと同レベル、国内では例のないプラ製レジ袋配布の禁止規定となった。「かめおかプラスチックごみゼロ宣言」の理念に基づき、2030年までに使い捨てプラごみゼロを実現させるための第一歩とした。
 条例制定までには、多くの説明会や市議会において議論が重ねられた。事業者を中心とした不安、相応の準備が必要であること、時間をかけて周知を図っていくべきなどの意見が多く出された。一方で、多くの市民や事業者から、保津川を守り、世界の海洋プラごみ汚染の解決に向けて必要な条例であるとの声も寄せられたという。

 上図は、同市の今後のスケジュールであるが、共同購入する袋に生分解性プラ袋の導入の検討を盛り込んだ。「プラ袋については、どうしても川などに流れ出てしまうものもあり、生分解性プラスチックを使った袋の導入の検討を行っていきます。プラスチック技術の進歩が速く、土中で分解するものだけでなく、海洋中で分解するものの開発も進められており、性能や国際認証状況等の把握を進めていきます。ヨーロッパなどで運用されているようなコンポスト設備の使用は考えていません。ただし、生分解性プラ袋だから大丈夫ということではなく、8月に施行するポイ捨て等禁止条例と合わせて両輪で取り組んでいく予定です」(環境市民部環境政策課環境保全係)

 

 亀岡市は京都市から西に車で約20分のところに位置する。京都・嵯峨からの観光トロッコ列車や、嵐山へ急流を一気に下る保津川下り、京都の奥座敷としての湯の花温泉で有名なまちだ。              条例制定への道のりのスタートは、2005年頃、保津川下りの船頭さんが保津川渓谷の自然景観に影響を与えるペットボトルやレジ袋、発泡スチロールなど、流域に漂着するプラごみとの戦いに挑んだところから始まった。2007年3月には、保津川遊船企業組合の中にエコ・グリーン対策委員会が誕生し、組織的な清掃活動がスタート。しかしながら、漂着ごみはいくら拾ってもなくならない。大雨などで保津川が増水すると、きれいになった保津川が再びプラごみだらけになった。「自分たちが取り組むこの清掃活動に意味があるのだろうか」と自問する日々が続いたが、そんな中、世界規模の問題となっていた海洋プラごみ汚染問題が浮上。保津川でのプラごみとの戦いは、結果として下流にプラごみを流さない、海洋プラごみ汚染との戦いという国際レベルの環境対策につながった。
 そして同時期、保津川流域の環境保全に取り組む特定非営利活動法人プロジェクト保津川が2007年7月に誕生。このプロジェクト保津川は月1回の保津川クリーン作戦を実施、流域の関係者とのネットワークは大きく広がり、その認知度は淀川流域、さらには国内外のNPOやNGOなどの関係者にまで広がった。

 

 こうした取り組みにNPOや関係団体、行政が賛同、大きな流れとなり、2012年に内陸部の自治体で初開催となる海ごみサミット2012亀岡保津川会議が国・府・NPO・NGOなど国内外の関係者700人以上を一堂に会して開催された。(上図)この会議では、「亀岡保津川宣言」「川のごみや海のごみをともに考える京都流域宣言」を採択、内陸部におけるプラごみ発生抑制の取り組みや社会のルールづくり、そして川の流れのように全国につながる大きな流れを創造していく想いを参加者全員が共有した。                                                                                                                                            2013年には、サミットの両宣言に賛同し、宣言の内容の具現化を目指し、保津川でつながる市民、企業、団体、大学、NPO、行政15団体が参画する「川と海つながり共創(みんなでつくろう)プロジェクト」を設立、「保津川の日(市内最大の清掃イベント)」や「こども海ごみ探偵団(環境学習)」など多くの市民、次代を担う子どもたちとともに現在も発生抑制対策に取り組んでいる。そして、亀岡市は、住環境・自然環境をより向上させ、「世界に誇れる環境先進都市」の実現を目指した取り組みを進め、2018年3月、循環型社会の構築のため「亀岡市ゼロエミッション計画」を策定、こうした流れの中で、亀岡市は同年12月13日、亀岡市議会とともに「かめおかプラスチックごみゼロ宣言」を行った。
 この宣言を受けて、賛同する市内事業所・団体との協定締結が進んだ。イオン、マツモト、アミティ、フレスコ、アル・プラザ、やまむらや、亀岡市商店街連盟、亀岡商業協同組合、京都信用金庫、京都タクシー・新京都タクシー、ユニクロ亀岡店との間でエコバッグ等の持参率向上やプラ製レジ袋の削減を目指す各種協定が結ばれた。また、ソフトバンク、亀岡市教育委員会、亀岡市環境事業公社の間で「亀岡市とソフトバンク株式会社との環境及び教育事業連携に関する協定」も結ばれた。

                     

 2019年7月に開催された、同市のFLY BAG PROJECTでは、環境活動シンボルの巨大なエコバッグがJR亀岡駅前に吊り上げられた。これは、軽くて丈夫な、かつ厳しい安全基準をクリアしたパラグライダーの生地を再利用したもの。同年10月、市内施設でワークショップ「大きなパッチワーク(巨大エコバッグ)から自分だけのバッグをつくろう!」を開催、200人にのぼる参加者たちが思い思いに好きな場所を切り取った後、スタッフの手によって縫製が行われ、世界に一つだけのバッグが完成した。

 プラスチックは今日の社会生活を必要不可欠なものとして支え、深く入り込んでいるが、そのあり方が大きな岐路にたっている。同市の考え方は、使い捨てプラスチックから、リサイクル、アップサイクルやリユース利用の推進へ。当面発生するプラごみは100%回収し地域内で資源循環させる。どうしてもこのループから流れ出たものは最新のプラスチック技術の力を借りながら自然の中に残さないということを市民、事業者全員で実現しようというものだ。また、環境・社会・経済活性化を一体的に進め、持続可能なまちづくりを展開、そして環境先進都市という地域ブランドの向上や次代を生きる世代に美しい自然環境を引き継いでいくという挑戦でもある。

 

 

 2020年2月、東京ビッグサイトではスマートエネルギーWeek内で第2回資源リサイクルEXPOが開催された。「世界を取り巻くプラスチック問題と解決に向けた戦略」と題した特別講演には、コロナウィルス対策の関係で、慎重な来場が促されたが、多くの聴講者を集めていた。
「望ましいプラスチックリサイクルは、石油などの資源の消費と環境負荷を低減できる、しかも実現可能であることが必要条件です。なんでもリサイクルするというのは、適切とはいえず、燃やして熱回収(サーマルリサイクル)も、廃プラスチックを有効利用する手法の一つであるというのが基本です」(産業総合研究所 環境管理研究部門)
 製品の部品など各社が各様のものを作っているとリサイクルしにくいという実態がある。「同じでよいものは、リサイクルしやすくするために仕様を統一するという考え方も必要です。また、近年、地球環境問題の観点で、生分解性プラスチック、バイオマスプラスチックが開発されるようになってきました。このウェイトが高くなってきたときに、性能面の技術開発と合わせて、どのような処理方法の仕組みを構築していくかも今後の課題です」(同研究部門)
 
  隣国中国の北京市では、条例が改正され、5月1日から、市内の飲食店・レストランやホテル等で、使い捨てのナイフ・フォーク類や歯ブラシ等を提供しない規制を実施に移した。ゴミの分別収集を4種類に義務化、スーパーなどがプラ製レジ袋を顧客に無料配布した場合は罰金となった。新型コロナウィルスの健康被害、経済影響対策に注力する各国であるが、EUを始めとして、アジア諸国でも国や自治体によるプラスチック対策が動き出している。亀岡市の動きが、日本における海洋プラごみ問題、プラスチック問題解決の1つのモデルケースとして今後どう展開していくか、政府、自治体、企業にどう影響を及ぼすか注目だ。

2020-05-11 | Posted in G&Bレポート, 海洋の持続可能性 |