G&Bレポート

バイオマスレジン南魚沼の国産資源米等を利用した複合材料「ライスレジン」  郵便局物販サービスが販売へ  (2020.4.2)

 資源リサイクルEXPOは、スマートエネルギーWeek内で2月26日~28日 東京ビッグサイトで開催された。新型コロナウィルス(COVID-19)の対策として、会期中、手指消毒液を全入口ゲートに設置、全入口ゲートでサーモグラフィーによる体温測定を実施、マスク着用の義務化、発熱や体調不良など風邪のような症状のある方は、来場を控えるよう促された。

 

 そういった状況下、例年の集客には及んでいなかったが、赤が一際目立つ異色のブースが来場客を集めていた。(株)郵便局物販サービス(東京都江東区)と(株)バイオマスレジン南魚沼(新潟県南魚沼市)の共同ブースだ。両社は業務提携関係を構築していくことで合意、2月25日、郵便局物販サービスの販売予定のライスレジンは日本有機資源協会(JORA)認定のバイオマスマークを取得、ライスレジン(バイオマス率70%及び51%  PP配合)、ライスレジン(バイオマス率40%  PE配合)、バイオマス率10%のライスフィルム10を使用した指定ごみ袋などを展示した。同製品は非食用の国産資源米等に汎用樹脂PP、PEを配合した澱粉を主体とする熱可塑性バイオマス素材で、オレフィン系樹脂との相溶性がよく、加工適性に優れ、幅広い用途で成形可能。バイオマス特有の優しい風合いが特徴だ。ポリ乳酸(PLA)等と違い、生産時において発酵処理がなく、コンパウンド(混錬)技術を用いて複合化しているため、価格帯は石油系プラスチックとほぼ同等で実現している。
「集客目標の2倍のお客様にブースに来ていただくことができました。現在、詳細を詰めており、サンプル出荷は詳細が決定次第行っていく予定です」(バイオマスレジン南魚沼 神谷社長)

https://www.meti.go.jp/press/2019/12/20191227003/20191227003.html

 来場者の関心を高めているのは、2019年12月、経済産業省と環境省が発表した、2020年7月から始まる全小売店を対象にしたレジ袋有料化義務付け制度の中、バイオマス素材の配合率が25%を超える袋などは対象外となることだ。
 そういった発表を受け小売各社が動き出しており、ファミリーマートは2月19日、7月から全レジ袋をバイオマス素材30%配合したものに切り替えた上で、有料にすると明らかにした。マイバッグの持参を促すにも限界があり、コンビニ大手各社が対応を検討しており、他社も同様の対応を進めるとみられる。

 郵便局物販サービスは、企業理念に地域社会への貢献を掲げており、全国の郵便局の窓口やカタログなどで地域産品、指定ごみ袋などの物品の販売を行っており、ライスレジンを全国規模で販売する。また、同サービスは新潟県南魚沼市と南魚沼郡湯沢町と包括的連携協定を結び関係自治体内13の郵便局を通じてバイオマスレジン南魚沼のライスフィルム10を使用した指定ごみ袋の全ての種類(家庭用と事業用)を2019年11月より販売している。非食用米を配合のバイオマス素材を含む指定ごみ袋を、郵便局が販売するのは全国で初めて。同市は、お米の産地でもあることから、お米由来(非食用米)の指定ごみ袋とした、販売価格に変更はないと発表している。

 日本郵便は、6月1日、環境負荷の少ない持続可能な社会づくりに貢献するため、7月から郵便局のレジ袋を有料化すると発表した。食用ではない「資源米」などを使ったバイオマスを30%配合したレジ袋を3種類用意し、特大10円、大5円、小3円で販売する。

https://www.post.japanpost.jp/notification/pressrelease/2020/00_honsha/0601_01_01.pdf

 また、6月23日、ライスレジンの販売代理店契約の調印式が、南魚沼市内で行れた。

http://www.biomass-resin.com/news-list/

 バイオマスレジン南魚沼は産業廃棄物ともなる非食米、砕米だけでなく、木粉、竹、竹炭などの植物原料や食品加工メーカーから排出される各種フードロス品に、安全性の高いプラスチックのポリオレフィンを加え、独自の特殊技術にて複合材化している。ライスレジンはピープル(株)の「純国産 お米のおもちゃ」シリーズに採用され、何でも口に入れてなめる赤ちゃんに安心というブランドを形成し、今年で10周年を迎える。また、山陽物産が生産、販売するホテル用歯ブラシセットなどにも採用されている。

(バイオマスレジン南魚沼ホームページより)

 2019年10月、環境省の令和元年度脱炭素社会を支えるプラスチック等資源循環システム構築実証事業の公募に同社の「資源米を原料に含むバイオマスプラスチック樹脂の量産化及びその他未利用バイオマスの樹脂化のための技術実証事業」が採択された。
https://www.env.go.jp/press/107210.html
 また、2019年に発生した台風や大雨では、多数の農業被害が発生したが、同社は台風被害のために浸水し、食用に適さなくなったお米を、被災地まで行き無償回収。農業者の処分負担軽減へ寄与し、工業製品の原料としたことは、農林水産省食料産業局のFACEBOOKに掲載された。 
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/facebook_blog/2019_november.html#191118_1              

 同社の追い風となったものは、2018年産米から始まった新たな米政策の中で登場した「新市場開拓用米」の考え方だ。行政による米の生産数量目標の配分提示がなくなり、農業者(産地)は主体的に需要に応じた生産・販売を行うこととなった。国は引き続き、水田フル活用に向けた支援や米の需要拡大支援を情報提供や交付金などによって行うが、農業者(産地)は地域の特色のある魅力的な産品の産地を創造するための「地域農業の設計図」を作り、3年から5年間の水田活用の取組方針を示すことが必要となった。その対象は主食米の他、飼料用米、米粉用米、そば、なたね、新市場開拓用米、畑地化があげられているが、その中の新市場開拓用米とは、輸出用、バイオエタノール用、石けん用、化粧品用、糊原料用、化成品用等の新たな事業領域開拓を目指す米だ。
https://www.maff.go.jp/j/syouan/keikaku/soukatu/kome_seisaku_kaikaku.html
 2019年10月に施行された食品ロス削減推進法も、農林漁業者・食品関連事業者に規格外や未利用の農林水産物の有効活用を促進や製造時に生じる食品の端材や形崩れ品等について有効活用を促進している。
https://www.maff.go.jp/j/press/shokusan/kankyoi/190924.html
「バイオ燃料のブーム時に食料との競合による食料価格の高騰が起こり、もちろん食料の安定供給については注意深く見ていかねばなりません。しかし、農業振興、農家支援などの背景の中で、非食用米を有効に利用するライスレジンを、さらに日本一の米どころの南魚沼ブランドで展開することを、産地が後押ししているということを訴えていきたいですね」(神谷社長)。
 
 3月10日、(株)バイオマスレジンホールディングス(東京都千代田区)が設立された。バイオマスレジン南魚沼の前身は、2007年に設立の(株)バイオマステクノロジー。2017年のバイオマスレジン南魚沼設立、生産スタートとともに同社に事業主体を移管し、バイオマステクノロジーは現在、京都に本社を置く研究会社とした中での、目的別関連会社をまとめる持ち株会社の設立だ。「事業成長に必要な資金調達を目的にホールディングス化、目的別の会社の設立に着手してきました。さらに国内各地からアジア圏までのビジネス展開を見据え中期事業計画を作成・実行できる体制を整えていきたいと考えています。耕作放棄地における無人農業による資源米生産なども構想しています」(神谷社長)

 社名  所在地  設立  業務
(株)バイオマスレジンホールディングス 東京都千代田区 2020年3月 持ち株会社
(株)バイオマスレジン南魚沼 新潟県南魚沼市 2017年10月 バイオマス素材・製品の製造、販売、研究開発等
(株)バイオマスエンジニアリング 新潟県南魚沼市 2019年10月 製造装置の設計・開発・販売・メンテナンス等
(株)バイオマスフィルム 東京都渋谷区 2019年11月 インフレーション成形等
(株)バイオマスマーケティング 新潟県南魚沼市 2020年1月 地域展開等の企画・立案及び商品企画販売等
(株)バイオマステクノロジー 京都市下京区 2007年5月 バイオマス素材・製品の研究開発等

 大手企業が農業再生を図りながら続々と参入する農業生産物市場。3月31日には、新たな食料・農業・農村基本計画が閣議決定され、食品ロス等をはじめとする環境問題への対応 、 地域経済循環の拡大としてバイオマス・再生可能エネルギーの導入やSDGs の達成に向けた取組の推進などが盛り込まれた。              https://www.maff.go.jp/j/keikaku/k_aratana/index.html

日本の農業の課題を解決しながら進化、農業振興、環境対応を推進する担い手として、両グループの今後の動きに注目だ。

2020-04-02 | Posted in G&Bレポート |