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自然エネルギー財団・バイオエネルギーシンポジウム報告~今後の日本に重要な3ポイント(2024.2)
2024年1月18日、自然エネルギー財団は「ネットゼロに向けたバイオエネルギー:世界的議論を踏まえた日本における今後の展開」と題するシンポジウムを開催した。国際的に活躍する4人の海外スピーカーに加え、5人の日本人専門家を交えたパネルディスカッションを行い、内容の濃い3時間だった。動画・資料は公開中。
多岐に渡ったシンポジウムのトピックを再構成し、今後の日本での展開を考える上で重要な3つのポイントとして紹介した。(以下一部抜粋)
<ポイント1:バイオエネルギー持続性の基礎>
本シンポジウムでは、バイオエネルギーは気候変動対策として有効に利用できるが、そのためにはシステム全体での適切な評価と持続可能な管理が必須であることが、重要な論点として改めて提示された。ただし、逆の場合もありえることにも向き合わなければならない。
<ポイント2:バイオマス資源を利用可能にするためのイノベーション>
■技術イノベーション
ラコス氏が紹介したオーストリアでの木質バイオマス熱利用は、1980年代からのクリーンな燃焼技術の改良・発達によって可能になった。このように、着実に学習を積み重ねることが、技術の洗練やコスト低下を可能にする。これは、太陽光や風力、蓄電池など他の再エネ技術にも共通することである。
■制度的イノベーション
市場メカニズムが適切に機能するような、制度的なイノベーションも必要だ。費用をかけて処分している残渣・廃棄物系バイオマスから使っていくことがバイオエネルギー利用の基本であるが、これは「ネガティブ・プライス(負の価格)」のバイオマスと捉えることで、バイオマス利用の優先順位を明確化できる。
■ビジネスモデルのイノベーション
日本でも、バイオマスタウンやバイオマス産業都市(農林水産省)やバイオコミィニティ(内閣府)など、地域資源と産業を結びつける取り組みが行われている。その上で、地域のエネルギー需要との組み合わせを考え、消費者の意識を変えていくためには、中間支援組織に加えて、新たなビジネスモデル(ESCO)なども重要なイノベーションである。
■土地利用イノベーション
そして、太陽光・風力発電も含めた分散型の自然エネルギーの大量導入を考える上で、限りある土地をどのように有効に使うかという、いわば土地利用のイノベーションがカギを握る。オーストリアにおける木質バイオマス利用の基盤となっている持続可能な森林経営は、林道ネットワークの整備により森林へのアクセスが可能になったことで実現している。
<ポイント3:国際連携・日本の参加>
パネルディスカッションでは、日本の国際議論への積極的参加が必要であるという話が多くあった。たとえば、日本の森林管理の状況を考えた場合、間伐材由来のエタノールをSAFの原材料として使用することが、ICAO・CORSIAなどの国際的枠組みで認められるように積極的に議論に参加していく必要がある。
一方で、オストハイマー氏からは、Biofuture Platformにおける具体的な活動テーマとして、 各国でバラバラになっているLCA手法の調和や供給ポテンシャルデータの整備が挙げられた。こういった具体的な活動に常に参加していくことが必要であろう。IEA Bioenergyについては、NEDOがいくつかのタスクに参加しているが、Biofuture PlatformやGlobal Biofuel Allianceなどへの政府の参加も必要である。加えて、民間企業単位でも世界バイオエネルギー協会(WBA)、Biofuture Campaignなどの国際ネットワークに参加することもできる。
また、IRENAのゴー氏による東南アジアにとって貿易と投資が重要であるという指摘も重要である。合わせて、東南アジアへの理解と長期的なコミットメントが必要というメッセージもしっかりと受け止める必要があるだろう。東南アジア諸国はバイオエネルギー利用などの自然エネルギー活用に関心を持っているが、日本政府が持ち込む技術は、水素・アンモニアやCCSなど、自身が広めたい技術になっていないだろうか。そういう意味では、これらの技術だけではなく、バイオマスもバランスよく推進べきというオストハイマー氏からの指摘も傾聴に値する。
詳しくは、→https://www.renewable-ei.org/activities/column/REupdate/20240219.php