研究情報

東北大・神戸大等の研究G、阿寒湖のマリモ、生物量が過去120年で大きく減少。環境DNAとミジンコ遺骸で判明(2024.4)

 「阿寒湖のマリモ」(学名: Aegagropila brownii)は、球状集合体を形成する緑藻で、20世紀前半にその生物量が減少したとされてきましたが、生育状況の変遷を示す定量的なデータはなかった。

 東北大学、釧路国際ウェットランドセンター、神戸大学、愛媛大学の共同研究チームは、底堆積物に残存するマリモのDNA(環境DNA)を用い、過去200年前から現在に至るマリモの生物量の変遷を明らかにした。ミジンコの遺骸とDNAを利用して時間経過によるDNAの分解速度を補正する手法を開発して分析したところ、1900年初頭のマリモの生物量は現在の10~100倍も多く、その後の数十年間でマリモの生物量は大きく減少し、阿寒湖周辺の森林伐採による土砂の流入や水力発電の影響による水位変動が、マリモの生育環境に大きな影響を与えたことがわった。 また、1950年以降は観光化による阿寒湖の富栄養化が生育状況の回復を妨げていた可能性も示された。本研究成果は、観光資源としても重要なマリモの保全策立案のみならず、遺骸や化石を残さない生物の過去の生息・生育密度を復元する新たな手法として、生態系の保全や生物多様性の目標設定および再生に活用されることが期待されるす。本研究成果は2025年3月31日に国際誌Environmental DNAで公開された。

A: およそ100年前の阿寒湖(釧路叢書 ; 第37巻より)、B:阿寒湖のマリモ、C:マリモの藻類細胞(m)と共在している藍細菌(c)、D: ハリナガミジンコ(Daphnia dentifera)の尾爪

詳しくは、→https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2025/04/press20250408-04-marimo.html

2025-04-12 | Posted in 研究情報 |