G&Bレポート

J&T環境 注力する食品リサイクル・バイオガス発電事業、協業と地域社会との連携戦略 (2021.5.12)

 2021年3月、仙台と東京でJ&T環境(株)のバイオガス発電事業の発表、展示が行われた。3月6~7日、仙台国際センターで開催された仙台防災未来フォーラム2021、そして、3月17日~19日に東京ビッグサイトで開催された2021NEW環境展だ。

(仙台防災未来フォーラム2021フォーラムセッション(右) 画像提供:運営事務局)

 仙台防災未来フォーラム2021は、東日本大震災から10年の経過を踏まえ、開催された。その中では、「仙台市のエネルギー自律型のまちづくり」と題するセミナーが、仙台市まちづくり政策局防災環境都市・震災復興室エネルギー政策グループにより行われた。同市のエネルギー政策は、東日本大震災において電力供給の途絶など大規模・集中型のエネルギーシステムの脆弱性が露呈されたことを出発点としており、分散型、再生可能エネルギー、次世代エネルギーを軸とする。
 その中の具体的な取り組みのひとつとして、仙台市蒲生北部地区で2022年春稼働する(株)東北バイオフードリサイクルの食品廃棄物によるバイオガス発電事業の概要と構想が発表された。同社は、J&T環境(株)(横浜市)、東日本旅客鉄道(株)(東京都渋谷区)、東京ガス(株)(東京都港区)及びJR東日本の関連会社の東北鉄道運輸(株)(仙台市)の4社によって、仙台市においてバイオガス化による食品リサイクル・バイオガス発電事業を行うことを目的に2020年7月設立された。

 J&T環境は、これまでも仙台市内にてプラスチックリサイクル事業等を行ってきた。食品リサイクルの分野において、鉄道事業のほか仙台駅での駅ビル・エキナカ・ホテル等幅広く事業展開するJR東日本グループと、バイオガスに関する知見を有し、ガス・電気の安定供給とエネルギーサービス事業を展開する東京ガスとの協業事業モデルである。
 東北バイオフードリサイクルは、J&T環境が2016年に横浜でスタートした(株)Jバイオフードリサイクルがモデルとなっているが、新たに東京ガスも加わったことも大きな特徴だ。東京ガスグループでは、食品残渣や下水汚泥等のバイオマスをガス化して、顧客企業のサイト内で燃料として発電に利用するオンサイトサービス提供の実績をもつ。東北バイオフードリサイクルへの事業参画を通して、地域循環型の本モデルを首都圏エリア等にも広げていくという考えが一致した。

 

(仙台防災未来フォーラム2021 発表資料より)

 食品バイオガス発電事業によるサプライチェーンでは、熱なども含めた再生可能エネルギーの供給、低炭素・資源循環型農業の推進などを軸としており、上図のような仕組みだ。
 「新仙台工場では、受入れ方法を機械方式からピット式とし、幅広い性状の廃棄物に対応できるようにしております。また、ガスエンジンについては脱炭素という流れの中、国内最高水準の環境配慮型のエンジンを採用しております」(J&T環境 プラント建設部 石井担当部長)
 また、施設建設地の仙台市蒲生地区は、東日本大震災で甚大な被害を受けた場所でもある。事業を行うにあたっては、燃やすごみの削減など仙台市環境施策への貢献、環境教育などの環境対応のみならず、復興への貢献を掲げている。「メタン発酵処理後に発生する残渣(消化液、汚泥)を原料とした有機肥料の製造や利活用により被災で影響を受けた農地の地力向上も可能です。また、避難所等の防災体制の充実・強化に向けて、周辺住民等の避難所として活用していただくことを想定し、情報収集用テレビ、非常用発電機、災害用補助備蓄品等を配備することを考えています」(石井氏)

 

(2021NEW環境展で展示された資料より)

 2021NEW環境展のJ&T環境ブースでは食品リサイクル事業が、リサイクルプラスチックパレット事業とともに展示された。
 JFEグループでは、2003年稼働した千葉バイオガスセンターで食品残渣等をバイオガス化、燃料ガスとして供給することから始まっているが、食品廃棄物を使った食品リサイクル、特に川下の小売、外食関係のリサイクルは、かつては非常に難しい分野であった。「従来食品リサイクルを担ってきた肥料化・飼料化では食品に混入した異物(割り箸、串、プラ容器)の除去に課題があり、リサイクルが進みませんでした。バイオガス発電方式では、機械的な異物除去は必要ですがバイオガス回収には異物混入の影響が少なくこれまで困難だった外食・小売りからの食品廃棄物のリサイクルが進み始めました」(石井氏)

 同社は、2016年の横浜市におけるJバイオフードリサイクルの発足とともに食品廃棄物によるバイオガス発電については積極的な展開を進めており、同社の食品廃棄物によるバイオガス発電事業の拠点は、2021年5月時点では、次のような展開となっている。今後も可能性のあるエリアへの進出を積極的に進めていく考えだ。 

●千葉地区   千葉バイオガスセンター      2003年稼働   
    規模:60t/日
    食品残渣等をメタン発酵させて得たバイオガスを燃料ガス化
●横浜地区    Jバイオフードリサイクル       2016年 JR東日本グループとの協業で稼働
    規模:80t/日   1800kw
    食品廃棄物からメタン発酵によってバイオガスを発生させ、発電した電力をJFEグループのアーバンエナジー(株)に供給
●北海道地区   札幌バイオフードリサイクル     2019年 三造有機リサイクルより株式譲渡
    規模:68t/日   250kw
    札幌市内より排出の厨芥類(厨房から出るごみ、主に生ごみ)メタン発酵させて、発電・売電事業を行い、分離した固形物は家畜の飼料などを製造・販売
   
●中京地区    バイオス小牧

2021年1月 (株)バイオス小牧、小牧バイオガス発電所の完全子会社化(アーキアエナジー(株)より)) 2022年度下期の営業運転開始を目指す

   
    規模:120t/日(予定)   1,300kw(予定) 
●仙台地区    東北バイオフードリサイクル     2022年春 稼働予定
    JR東日本グループ、東京ガスとの協業
    規模:40t/日(予定)   780kw(予定)

(2021NEW環境展で展示された資料より)

 同社は、「創電割」というサービスを展開している。上図のようにお客様の事業所等から、排出される廃棄物を収集し、自社工場で焼却・発電を行い、発電電力は、施設で消費する他、FIT制度を活用して、JFEエンジニアリングの子会社「新電力」事業会社アーバンエナジー(株)に売電、その電力を食品廃棄物の排出元に電力料金割引し還元するサービスである。地域連携の考え方のもと、電力料金の削減に加え、企業のCSR活動にも活用できるというものだ。食品廃棄物については、パシフィコ横浜が管理する施設などで運用されているが、2021年3月には、食品廃棄物ではないが、国内のプロ野球場では初となる横浜スタジアムでも排出された廃棄物を循環活用する取り組みが始まっている。

 また、2021年1月、環境省を主軸に「バイオプラスチック導入ロードマップ」が策定された。その中、生分解性プラ導入促進にあたり、生ごみ収集袋の堆肥化、バイオガス化分野を重点分野とすると発表された。「メタン発酵残渣の農地還元の観点からは容器プラスチックの除去が課題となりますが、生分解性プラスチックがメタン発酵段階、または堆肥化の段階で生分解できていること、安全性に問題ないことが確認されれば、ご利用者様(農家さん)にご理解いただけ、導入が推進されるのではないかと考えています」(石井氏)

  

 少々紹介が遅れてしまったが、J&T環境は2019年4月、JFE環境(株)と東京臨海リサイクルパワー(株)が統合し、首都圏最大の廃棄物処理・リサイクル企業として誕生した。前身のJFE環境はJFEグループの中で多彩なリサイクル事業を幅広く展開、東京臨海リサイクルパワーは東京電力グループの中で廃棄物発電や医療廃棄物処理事業で大きなシェアをもち、ともに東京湾沿岸に立地する主要拠点を中心に事業を展開してきた。技術と経験を結集した大きなシナジー効果の発揮を目指し、2017年から協業の道を模索、資源循環型社会づくりに貢献するJFEグループの総合環境ソリューションのエキスパートとして、株主JFEエンジニアリングとJERAのもと始動した。

 同社は、東京・川崎・横浜及び千葉の4拠点一体運営により、能力が強化された焼却処理・発電によるサーマルリサイクル、ペットボトル、容器包装を始めとするさまざまなプラスチックリサイクル、食品リサイクル・バイオガス発電などの他、化学廃液・汚泥、蛍光灯、乾電池・バッテリー、機密媒体、家電など多彩なメニューをもつ。そして、既存事業の成長に留まらず、世界的に問題視されている海洋プラスチックごみ処理などの解決にも積極的に挑戦する方針を掲げている。

  JFEエンジニアリンググループ内では、脱炭素に向けて新たなバイオマス発電事業も動き出している。復興事業の一環として、エア・ウォーター&エネルギア・パワー小名浜(株)(福島県いわき市)より受注した75,000kW(発電端出力)の高効率発電プラントを竣工し、2021年4月、同社に引き渡した。また、近畿大学(大阪府東大阪市)と南洋理工大学(シンガポール国)と連携し、シンガポールで次世代バイオ・リサイクル燃料バイオコークスを利用する実証事業に2021年5月より着手する。同グループの今後のバイオガス発電、バイオマス発電事業に注目である。

2021-05-09 | Posted in G&Bレポート |