G&Bレポート

近畿大学と住友商事マシネックス、植物廃棄物利用のバイオコークスで、鉄鋼業界CO2排出量削減へ。エコプロ2022注目した展示から (2023.2.4)

 2022年12月7日~9日、東京ビッグサイトでは、SDGs Week EXPOとしてエコプロ2022が、サステナブル経営推進機構、日本経済新聞社主催のもと、社会インフラテック、カーボンニュートラルテック、自然災害対策展、ウェザーテックとともに開催された。また、企画展示として海洋プラスチックごみ対策パビリオン、ナノセルロース展なども実施された。

(展示ブースより)

 昨年と大きく変容したことの1つとして、例年、大学コーナーの1ブースとして出展していた近畿大学(大阪府東大阪市)は、2022年は住友商事インフラ事業部門のグループ会社の住友商事マシネックス㈱(東京都千代田区)との共同ブースを構成し、バイオリサイクル燃料であるバイオコークスの大規模なアピールを行った。近畿大学というと近大マグロが有名であるが、大学としても次なる近大発の独自技術として後押しする方針だ。
 両者は、鉄鋼業界、とりわけ電炉・鋳鉄業界において、石炭コークスのバイオコークス代替によるCO2排出量削減に取り組みを開始した。大学が研究・開発した技術を、商社のネットワークを生かして社会 実装することで、ゼロ・エミッションやSDGsの目標達成と社会貢献を目指す。また、実現にむけて産学連携によるコンソーシアムを立ち上げており、㈱ナニワ炉機研究所(大阪府東大阪市)、ヤマトスチール㈱(兵庫県姫路市)、㈱栗本鐵工所(大阪市西区)が参画している。

(バイオコークス(左)と燃焼の様子(右):プレスリリースより)

 まず、バイオコークスとはなにか。従来は廃棄物として処理される茶かす、枯れ葉、もみ殻などのバイオマスを原料として製造する固形燃料だ。利用原料は大きく6カテゴリー、木本系(間伐材、流木、枯れ枝など)、草本系(河川敷草、イタドリなど)、農業系(調整野菜、そば殻など)、食品系(加工残渣、パン耳など)、厨茶系(珈琲滓、茶滓など)、都市型(廃棄衣料、古紙など)に分類される。光合成を行う植物資源等を100%原料にしているため、CO2排出量ゼロのカーボンニュートラルな固体エネルギーとして期待される。
 バイオコークスは、圧縮強度が高く1000℃以上の高温での長時間燃焼が可能だ。製鉄に不可欠な石炭コークスの代替燃料として使用可能で、製造時に廃棄物を出さないゼロ・エミッション燃料でもある。植物由来の廃棄物をリサイクルできるため、ゴミ問題にも貢献できる。バイオマス原料1kgからバイオコークス1kgを作ることができ、重量収率100%であり、製造過程で煙も蒸気も出さない。 
 2005年に、現在、近畿大学大学院総合理工学研究科教授であり、近畿大学バイオコークス研究所所長を務める井田民男氏らが研究を始め、2010年に特許を取得、世界25か国に広がり、2012年に近畿大学に専門のバイオコークス研究所が誕生した。

(展示ブースより)

 鉄鋼業界は、日本の産業部門から排出されるCO2の35%以上を占めており、溶解炉である電気炉、鋳造炉のキュポラともに、CO2排出量削減に向けた抜本的な対策は見えていないのが現状だ。水素製鉄というキーワードも新聞などでは見かけるが、2050年までに巨額の投資が必要と言われており、経済産業省もロードマップを描けてはいない。近畿大学と住友商事マシネックスが立ち上げたコンソーシアムでは、電気炉やキュポラで使用されている石炭コークスを、バイオコークスに代替することにより、電炉・鋳鉄業界におけるCO2の排出量削減を目指している。
 関係機関・企業等によると、電炉・鋳鉄分野での主要燃料である石炭コークスには、基本的には次のような2つの役割が必要とされている。代替するには、これらの条件をクリアしなければならない。
1)鉄を溶解するための約1500℃の溶解熱量
2)1500℃付近での加炭性能
 これまでにも、バイオコークスをキュポラの燃料として使用した実績はあったが、コンソーシアムによる実証実験によって、電気炉においても十分に石炭コークスの代替となることが確認された。バイオコークスは、多様なバイオマス資源を原料としており、さまざまな成分が混在しているが、電気炉やキュポラでは非常に高温で燃焼するため原料の違いによる影響を受けないという。また、高い圧縮強度を持つため、高温環境下での緩慢燃焼が可能であり、電気炉やキュポラでの使用に問題ないことを検証済、今後連続した商業生産での実証を進めていく。

(展示ブースより)

 近畿大学と住友商事マシネックスを軸とするコンソーシアムは、下記のような役割分担のもと、まずは鉄鋼業界での社会実装を目指すが、その後は、バイオコークスの活用によって、農山村と都市、農林業と工業といった、バイオ資源と産業界の地域循環共生圏を創造し、循環型社会の確立を目指していく考えだ。
 ●近畿大学: バイオコークス製品技術の研究・開発
 ●住友商事マシネックス: 社会実装に向けた開発支援、流通
 ●ナニワ炉機研究所: バイオコークスの製造設備技術
 ●ヤマトスチール: 電気炉におけるバイオコークス活用時のCO2削減効果の実証
 ●栗本鐵工所: キュポラにおけるバイオコークス活用時のCO2削減効果の実証

 次に、どのようにしてバイオコークスが創出されてきたのか、今後の課題を含めて、近畿大学の井田先生と住友商事マシネックス事業担当者に情報提供をいただきました。ご協力の御礼申し上げます。
 
 バイオコークスの研究を始めたきっかけは、2002年に地球温暖化防止の取り組みとして農林水産省が中心となって推進した「バイオマス・ニッポン総合戦略」が閣議決定されたことに遡るという。当時、バイオ燃料の研究者は日本にほとんどいなかったが、「バイオマス・ニッポン総合戦略」によって多くの研究者がバイオ燃料の研究開発に着手した。しかし、その研究対象は当時世界的なブームであった液体燃料のバイオエタノールと、有機性廃棄物などを発酵させて作るバイオガスが多く、固形燃料の研究は誰も手を出さなかったという。「その理由は、石炭コークスを作るための石炭は自然界で石化するのに1,000~3,000万年かかる。当時の常識ではバイオコークスをつくるなど、地球のシステムを飛び越えられるわけがないと、研究者たちが初めから諦めていました。私が近畿大学に着任当時、まわりの研究者は既にバイオエタノールやバイオガスの研究に走り出していて、未開拓のバイオコークスの研究を始めたわけです」(井田先生)
 バイオコークス製造工程において、原料の中にあるセルロース、ヘミセルロース、リグニンという重合度の比較的高い高分子と低炭素分子を有機的に結び付けることが必要で、この3つの成分が均等にあるものがバイオコークスとしての性能を高めるという。リグニン、セルロース、ヘミセルロースを加熱することで架橋をつくる。ポリマー同士を連結し、物理的・化学的性質を変化させ、高分子の縮合度を上げることにより強度と密度を上げる。「炎の上ではなく灰の中に埋めて、周囲温度200℃以上をキープして焼くのがポイントです。薪などに比べると密度が高くて含水率が低いため、高い熱量で長時間安定燃焼します。身近な例をあげると、焼き芋やピザを焼くのには最適です」(井田先生)

(展示ブースより)

 世界で実用化するためには、改良課題が残っており、各機関の協力が不可欠だが、かなりクリアされてきた。今後の最大の課題は原料調達であり、今回の住友商事マシネックスとの協力体制構築の最大の柱だ。
 石炭コークスを今後、バイオコークスに切り替えることを想定すると、いくつかの壁があり、それを乗り越えていかねばならない。特に鍵となるのは、世界的に問題になっている食品ロス、そこに汚泥資源を加えれば、かなりの原料が得られるとの予測だ。
 「こういった中で、住友商事マシネックスだけでなく、親会社の住友商事の取引ネットワークも駆使しながら、原料調達の交渉を開始しており、原料調達先とバイオコークス需要家が共存共栄できる協力体制を整えている状況です。鉄鋼業界の脱炭素に向け、バイオコークスの生産体制の構築を進めていきたいと考えております」(住友商事マシネックス 鉄鋼非鉄プラント・ソリューション本部プラント・ソリューション部)

 バイオコークスは、脱化石資源、特に石炭コークスの代替燃料として開発、実用化を進めてきたが、2011年の3・11東日本大震災後、その指針に新たに長期保存性、安定性等のキーワードを加える必要が出てきたという。バイオコークスは、その高密度な特性から「がれき」や「放射性汚染物質」の容積を減少させる技術に応用でき、100 年単位での長期保存が期待できるという。今後の両者、コンソーシアムの動きに注目したい。

2023-01-27 | Posted in G&Bレポート |