G&Bレポート,藻類バイオマス

ユーグリードのユーグレナ由来PNFによる先端材料事業等 エコプロ2022/サステナブルマテリアル展2022 注目した展示から(2023.1.6)

 2022年12月7日~9日、東京ビッグサイトでは、SDGs Week EXPOとしてエコプロ2022が開催され、企画展示として海洋プラスチックごみ対策パビリオン、ナノセルロース展なども実施された。また、同期間、幕張メッセでは、プラスチックジャパンやフィルムテックジャパンなどで構成された高機能素材Weekが開催された。その中では、カーボンニュートラル、サーキュラーエコノミー、海洋プラスチック問題対策としてのバイオマス、生分解性樹脂、リサイクル材料や製品などを集結したサステナブルマテリアル展が開催された。そういった中で、微細藻類分野の新たな動きを追った。

●㈱KDDI総合研究所と信州大学                                   

 ㈱KDDI総合研究所(埼玉県ふじみ野市)と、信州大学農学部の伊原准教授は、生育環境を最適化する藻類培養装置を開発し、藻類の一種であるイシクラゲ(学名:Nostoc commune)の培養に成功した。さらに、2022年にはいり、実証実験を行い、今回培養したイシクラゲが、環境を最適化しない状態で培養したイシクラゲに比べ、CO2吸収・固定能力が2倍以上となることを確認、その結果等をエコプロ2022において展示した。

 イシクラゲは、ネンジュモ属に属する陸生藍藻の1種で、多数の細胞が寒天質基質に包まれた群体を形成し、芝生や土壌、コンクリート上に生育している。世界にも広く分布しており、日本では大変身近な存在で、食用とされることもあるという。「本実証では、閉鎖系培養環境において培養期間、光、水量、水温などが同一にもかかわらず、特定の条件を変更することで、CO2吸収・固定能力を2倍以上に高められることを発見しました。未解明の部分が多いイシクラゲでしたが、今回の連携によってその糸口を見出したと言えます。またこの種にはCO2を固定するだけでなく、空気中の窒素ガスを吸収し、窒素化合物を生成するユニークな特徴もあります」(伊原准教授)

(エコプロ2022の展示ブースより)

 KDDIグループ全体で2050年度までにカーボンニュートラルを達成することを目指し、ICTの活用によって社会の環境負荷低減に貢献することを宣言している。「KDDI総合研究所では、これらを実現する ICT技術の確立に向けて、ブルーカーボンの算定や藻類の培養をはじめとする研究開発により、カーボンニュートラルの実現への取り組みを推進しております。そういった中、イシクラゲに着目していた伊原准教授とのご縁があり、共同研究を開始することとなりました。今後も共同研究を通じて、イシクラゲのさらなるCO2吸収・固定能力の向上や、さまざまな規模での培養の検討など環境負荷低減を進めたいと考えております」(KDDI総合研究所フロンティア研究室 杉山室長) 

  イシクラゲが固定する窒素は肥料の主要物質だが、政府は昨年施行された経済安全保障法において肥料を半導体等とともに特定重要物質に指定した。今後の研究開発に注目したい。

●パナック㈱

(エコプロ2022の展示ブースより)

 同社(東京都港区)は機能性プラスチックフィルム分野をコア事業とするが、新規事業として微細藻類などのバイオサイエンス事業に取り組んでいる。エコプロ2022では、微細藻類を用いた医薬部外品・化粧品原料とそれを活用した商品開発やOEM提案、また機能性素材や化粧品分野の共同開発商品等を展示した。
 アルゼンチン北部(パタゴニア)の酸性塩湖Laguna verdeで生息が確認された微細藻類「パラクロレラ」は、pHなどの環境ストレスに応答して細胞の外側にバリアのように、多糖体ゼリーを産生する。酸性塩湖という厳しい環境で生き抜くために獲得したその多糖産生能力は、他の多糖体ゼリー産生種と比べて高い。高分子構造の中に水分を保持し、厳しい外部環境から細胞を守っており、保湿力も高める効果がある。同社の商品の「プレクラン」は、パラクロレラのParachlorella kessleri-PNC1株が作り出す、多糖類ゼリー状物質を効率的に抽出・精製することに成功した。生体におけるこのプレクランの無害性、機能性について膨大な試験データを重ね、細胞分裂を促進する効果があり、発毛・育毛効果が期待される。このパラクロレラの細胞に含まれる健康成分を余すところ無く抽出したものが「パラクロレラエキス」だ。
 ケトセロスカルシトランスエキスは、珪藻類に属する「ケトセロスカルシトランス」の抽出液であり、コンブなどの海藻類にも含有されるアンチエイジング効果が期待できる機能性物質フコキサンチンを含有する。大量培養技術を確立し、商品化した。

 

●㈱ユーグリード

(サステナブルマテリアル展の展示ブースより)

 同社は紙の街と言われる愛媛県四国中央市のスタートアップ企業だ。サステナブルマテリアル展において、同社開発の培養方法により独自作出のユーグレナ(和名:ミドリムシ)から抽出したパラミロン粒子およびパラミロンナノファイバー(PNF:Paramylon Nano Fiber)を資本提携した西華産業㈱(東京都千代田区)ブース内、また、愛媛県ブース内に展示した。パラミロンやPNFは生物が体内で精製する物質であり、不純物や毒素を含まず、繊維長のばらつきも少なく、機能材料や構造材料への適用の可能性を秘めている。安定してパラミロンを生産することに成功し、ユーグレナ、パラミロン、PNF各種状態のものを提供し、市場創出に挑む。
 まず、ユーグレナというと、同社名の東京都港区に本社を置く会社を思い浮かべるが、宮崎大学農学部林教授作出による独自株と独自培養技術により、展開している。「資本の参加や関連についてよく聞かれるのですが、協力関係はありません」(同社事業担当)
 同社は、2020年1月、四国中央市で紙加工業を行っているスバル㈱内のユーグレナ事業部として事業開始した。培養設備導入、技術を構築し2021年5月、製造工場竣工。2021年12月ユーグリード設立とともに、スバルから事業移管し、事業を開始した。独自のユーグレナをはじめとした微細藻類の培養に基づく研究開発から製造販売までを行い、持続可能なバイオ産業の創出を目指している。ターゲットとする領域は繊維分野、栄養素分野、エネルギー分野を掲げる。
 中でも同社の最大の有力分野は、先端材料事業だ。繊維の直径が小さく一定の長さで揃うPNFを利用し、多機能かつ環境負荷の低い機能性素材の開発を進めている。その強みは均一性とコストだ。似た物性をもっているCNF(Cellulose Nano Fiber)は木材を解繊して細かくしていくブレイクダウン方式だが、PNFはビルドアップ方式であり、繊維のばらつきが少ないという。木材由来の場合、リグニンの扱いも難しいとされるが、単一素材のため材料設計が管理しやすい。そういったことから、従来のCNFに比べて、大幅なコストダウンが見込めるという。

(画像提供:ユーグリード)

■パラミロン:直径約3μmの円盤状の β-1,3‐グルカンのナノファイバーが毛糸玉のように巻かれた結晶体
■PNF:β-1,3-グルカンの螺旋状の繊維が複合化したナノファイバーで直径、長さが均一(直径20~30nm)

 ユーグレナという微生物について、簡単に確認しておくと、和名はミドリムシ、太古から存在しており我々の身の回りに存在する植物性かつ動物性な微細藻類に分類される原生動物だ。植物のように光合成によって成長し、動物のように細胞を変形させて動くユニークな生物だ。硬い細胞壁をもたず、柔らかい細胞膜に覆われているため、 内容物(特にパラミロン)の取り出しが容易だ。機械的なエネルギーや高価な薬品などが不要となり、環境に優しい生産工程が実現できる。ユーグレナには生きるために必要なビタミンやミネラルに加え、繊維質、不飽和脂肪酸、アミノ酸など様々な栄養素が含まれている。栄養価の高さから宇宙食の原料として研究されたこともある。
 ユーグレナの培養方法は大きく分けて3種類ある。元来、微細藻類には、大きく光合成型と従属栄養型の2種類があることが知られているが、ユーグレナには光合成方式1種類(栄養素やパラミロンを生産)、従属栄養方式2種類(パラミロン、油脂を生産)あり、同社のパラミロンは、大量生産を目的とし、後者のタンク内暗環境で糖を添加する培養方式を採用している。

 原稿作成にあたり、最後に宇高社長より下記のコメントを寄せていただいた。
「製紙業界におりました関係でCNFには関心はありましたが、投資コスト、設備、人員などの関係で躊躇しておりました。また、大手企業が研究開発を長年進めていましたが、ブレイクスルーが起こっておらず、その中で出会ったのがユーグレナのパラミロンナノファイバーでした。現在100社を超える企業からアプローチがあり、プロジェクトを進めております。各社、様々の課題を抱えており、PNFでその解決の支援ができればと考えております」(宇高社長)

 パラミロンについては、機能性物質として、あるいはバイオプラスチックの原料用途として、多くの企業や研究機関でビジネス化研究が進んでいる。先端材料としての今後の事業展開に注目である。

 

2023-01-05 | Posted in G&Bレポート, 藻類バイオマス |