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nanotech 2020の展示から(1)CNF市場は樹脂などと複合化展開が加速、ANPOLY社は籾殻由来CNF  (2020.2.14)

 第19回国際ナノテクノロジー総合展・技術会議(nanotech 2020)、新機能性材料展2020などが、1月29日~31日、東京ビッグサイトで開催された。次世代のバイオマス素材として期待されるセルロースナノファイバー(CNF)特別展示エリアも設置され、研究開発段階から応用まで国内外の情報の他、関連技術を取り扱う企業の技術情報が集結した。気候変動、地球温暖化対策の加速が叫ばれる中、化石資源削減は大きな流れで、CNFはプラスチックなどとの複合化展開が大きく動き出している。プラスチックにおいては海洋プラごみ問題対策など、重大な課題となっており、環境性能という点でどのように市場を作っていくか注目される。

 

王子ホールディングス(株)(東京都中央区)

 CNFスラリー(アウロ・ヴィスコ)、CNF透明シート(アウロ・ヴェール)などを展示した。同社独自のリン酸エステル化法によって、CNF表面にイオン性官能基であるリン酸基を導入し、CNF同士の静電反発性を高め、ナノ化を行う。高透明度、高粘度、分散性の高いCNF製造を実現している。また、物性を維持しながら、多様な有機溶剤に分散可能なパウダーCNF(疎水性)も開発、インキや塗料などの用途開発を目指す。「アウロ・ヴィスコについては、材料素材商社を通じて化粧品メーカーへの提供を行い、製品開発中です」(イノベーション推進本部 CNF創造センター)

 

ANPOLY社(韓国 浦項市)

 木材パルプから抽出したCNF(POLYCELLU)の他、稲の籾殻(husk)のセルロースから抽出したCNFを展示した。日本では木材パルプ由来のCNFが中心となっているが、農業廃棄物の籾殻にはシリカやリグニンの他、セルロースが約65%含まれており、韓国では年間約100万トン以上発生するという。同社は、革新的なバイオポリマー材料の開発を目指し、POSTECH社(韓国)の研究グループが2017年に設立した技術基盤のベンチャー企業。プラスチックなどのポリマーを代替できるナノバイオソース素材の開発に取り組んでいる。

 

大昭和紙工産業(株)(静岡県富士市)

 カラーティッシュの製造で培った染色技術を生かし開発したカラーCNFを展示した。予め、染色したパルプを原料に多様な色彩のCNFを製造できる。また、同製品を脱水、乾燥させることで、半透明のシート化することもできる。同製品は東邦電機工業(株)が販売予定のオーディのスピーカー部分に音質向上のため採用されている。今後は、色材、成型材料、インテリア材料、ステーショナリー等様々な用途開発を目指す。

 

星光PMC(株)(東京都中央区)

 CNF配合樹脂STARCELシリーズを展示した。同製品は、木材パルプに疎水変性を施して変性セルロースパウダー化、PEやPP等の熱可塑性樹脂と溶融混練することでセルロース繊維をナノレベルまでに解繊すると同時に樹脂中にCNFを均一分散させている。京都大学を中心としたNEDOプロジェクトで開発された製造法(京都プロセス:パルプ直接混練法)。(株)アシックスの高機能ランニングシューズ製品「GEL-KAYANO25」の軽量性と耐久性が求められるミッドソール部材(甲被と靴底の間の中間クッション材)の原材料の一部に採用されている。

 

丸住製紙(株)(愛媛県四国中央市)

 独自技術で開発、昨年12月特許取得した高透明度及び高粘度のスルホン化CNFを展示した。自社化学パルプをシングルナノまで微細化、セルロース分子にスルホ基を導入して、解繊処理を行う。繊維幅が均一、また攪拌など機械的刺激の有無によって、可逆的に粘度が変化する性質(チキソトロピー性)をもつ。「透明性は、業界では数社しか実現できていません。解繊処理によって繊維をバラバラにすることによって透明となるわけですが、各社の基本的な原理は同じですが、その手法が異なります。弊社の手法は、全光線透過率は99.4%というその高さが大きな特徴です」(包装用紙部)

 

モリマシナリー(岡山県美作市)

 熱可塑性樹脂向けマスターバッチ、粉体型、アルコール分散型、リグニンを含有したリグノCNFなどの他、染色CNFと熱可塑性樹脂との複合材料の展示が行われた。染色材料は顔料を使用しており、今後試作、特性調査を進めていく予定。現在、プラスチックの強化材料としては、グラスファイバーや炭素繊維が主に使われているが、CNF分散樹脂の強靭性やリサイクル性については、優位性があるという。「サーマルリサイクルでは元が木なので燃やしても有害ではありませんし、残差も灰となります。マテリアルリサイクルでは、樹脂の粉砕時にガラス繊維やカーボンファイバーは折れたり切れたりして強度が落ちるのに対して、CNFは折れたり切れたりしないため、10回程度リサイクルしても強度が下がりにくいとのデータが出ています」(セルロース開発室)

 

(株)スギノマシン(富山県魚津市)

 樹脂製造の(株)タカギセイコー(富山県高岡市)および富山県立大学(富山県射水市)と共同で開発を進めるセルロースマイクロファイバー(CMF)を展示した。従来の20~30μm程度の繊維径のCNFとは異なり、平均繊維径が数マイクロメートルサイズと太い繊維。表面のみをナノ化したマイクロサイズの繊維径とすることで、従来のCNFよりも樹脂へ添加した時の引張強度や弾性率を高め、線熱膨張率を低減させた。「コスト低減、樹脂への添加のしやすさも狙ったもので、販売時期、価格などは検討中です。また従来はBiNFi-sは水溶状態での販売でしたが、混ぜやすい粉末タイプや天然ゴム複合体なども商品化しました」(新規開発部)

 

中越パルプ工業(株)(富山県高岡市)丸紅(株)(東京都中央区)

 樹脂に分散しやすい粉末状CNF(nanoforest-PDP)を高濃度で分散させたPP複合樹脂ペレットを展示した。同製品は、出光コンポジット(株)と(株)三幸商会との共同開発により約数年前に開発したもの。複合樹脂用途にCNFパウダーや樹脂マスターバッチを提供する。CNFパウダーを配合した複合樹脂は、剛性、強度、表面硬度及び表面改質、収縮・寸法安定性などの特性向上を実現する。「今回の展示では既存製品を展示し、市場への導入対応をメインとしています。メーカー各社、石化資源を削減していかねばならないという圧力が高まっており、どのように対応していくかが鍵です。特に自動車業界へのニーズ対応には注力していく考えです」(丸紅CNF事業推進課)

 

2020-02-15 | Posted in G&Bレポート, ニュース情報/政策関連 |