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イノベーションジャパン注目した展示 大分大学竹由来高性能CNF、生分解の研究活発化(2019.8.31)

イノベーションジャパン2019~大学見本市&ビジネスマッチング(主催:NEDO、JST)は8月29日~8月30日 東京ビッグサイト青海展示棟で開催された。バイオマス、植物資源関係技術を展示したブースを回る中、生分解性に着目した研究の展示が目立った。ポリ乳酸はバイオマスプラスチックと生分解性プラスチックの両方の性質をもつが、これまでは地球温暖化対策として前者の性質を使う製品が多かったが、海洋プラごみ問題が大きな背景となり、後者の性質の利用の研究が活発化しているようだ。バイオマスエネルギーについては、都市型バイオマス発電が注目だ。

大分大学理工学部共創理工学科は、竹由来のナノセルロースファイバー(CNF)「CELEENA」とその独自製造プロセスを展示した。竹から中間産物の竹綿を作り、同CNF製品を製造する。竹綿は不織布化や紡糸処理で生活用品から炭素シートなどの次世代電池の部品などにも使用可能という。同CNF製品は既存製品と比較し、セルロース純度が非常に高く、繊維が長く絡みやすく、結晶度が高い。成型しやすく強いのが特長。分散液、粉体、竹綿のサンプル提供を開始しており、大学発ベンチャーを目指し、準備を進めている。

茨城大学農学部食生命科学科は、緑藻パラクロレラの新種天然株を用いた藻バイオリファイナリーを展示した。同株は、細胞内にオメガ3食用油を、細胞外には新奇な構造・特性を有する有用多糖を同時に高生産する。屋外大規模通年培養が可能であり、バイオックス化学工業(広島市)共同開発を行っている。同株が生産する油はC18不飽和脂肪酸の生産比率が高く、食用油向き。また油や多糖以外にもアミノ酸、ビタミン、ミネラルが豊富で健康食品や飼料、肥料としても利用が可能。バイオックス化学工業により、「熟成黒にんにく」が商品化されている。

日本大学短期大学食物栄養科は、乳製品加工の過程で得られる残渣タンパク質による「生分解する混合タンパク質製シート」を展示した。グリセロール水溶液に性質を異にする加熱凝集タンパク質(乾燥卵白、乳清など)を混合、加熱、冷却などによって、食器やシートの試作品を紹介した。一般にタンパク質シートは酸素透過性が低い。同シートでは柔軟性を持たせるグリセロールなどの可塑剤の量を減らし、熱耐性の牛乳カゼインを混合したのが大きな特徴。学校給食などで食教育にも利用できるよう食器や包装に天然色素で栄養素ごとにカラフルな色をつけることを検討中。

豊橋技術科学大学大学院工学研究科応用科学・生命工学系はバイオマス由来生分解性プラスチック・ポリ乳酸を利用した陸上養殖のための水質浄化技術を展示した。閉鎖循環式陸上養殖においては、水槽内のNH4-N処理の他、NO3-NやNO2-N処理などが必要となる。多孔質ポリ乳酸は、生分解するが、それに時間を要する性質をもつ。これら処理を行う微生物を高密度に生育・保持でき、脱窒菌をペレット細孔内に増殖、高速、高効率な処理の可能性を紹介した。

新潟大学工学部工学科材料科学プログラムはバイオマス由来生分解性プラスチック・ポリ乳酸を使った濾過膜技術を展示した。食品・バイオ関連産業において液体の清澄化に用いる既存の濾材(濾過膜・濾過助剤)は目詰まりすると産業廃棄物となる。ポリ乳酸製の濾過膜は目詰まり後にはコンポスト化装置によって、生分解させることができる。またアルカリによっても分解できるため、金属微粒子の回収などにも応用できる。難濾過性のソフトな微粒子を圧密化させることなく、高速に濾過するデプスフィルターも紹介した。

(画像はフード・グリーン発電システムによる電力を市街地やイベントに直接供給する発電車)

株式会社ティービーエム(埼玉県所沢市)は、都市型バイオマス発電「フード・グリーン発電システム」を展示した。同社は、新エネルギーベンチャー技術革新事業としてNEDOの支援を受け、2015年に事業化した。飲食施設や食品工場などの排水浄化の過程で、排水油脂を分離回収。排水油脂は水分含有率や酸価が高く、不純物も多く、汚泥として産業廃棄物処分されていたもの。独自開発の油泥分離装置により油分、水分、汚泥分に分離、油分を化学合成することなく発電燃料化(SMO:Straight Mixed Oil)を実現した。この技術を用いて埼玉県比企郡花見台にコージェネレーションを活用する燃料製造工場を兼ねたバイオマス発電所を運営、売電を行う。また、このグリーン電力を発電車(写真)によって市街地やイベントに直接供給する。市販の軽油でも発電でき、災害時独立電源としても利用が可能だ。

 

2019-09-02 | Posted in G&Bレポート, ニュース情報/政策関連 |