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バイオ戦略2019 加速する米欧中のバイオエコノミー バイオプラなど9領域絞る(2019.7.26)     

バイオ戦略2019が6月、内閣府より発表された。 2008年以来のバイオ分野の国家戦略は、全体目標として「2030年に世界最先端のバイオエコノミー社会を実現」を掲げた。バイオエコノミーとは、持続可能な経済成⻑と社会課題解決の両立が求められる中、バイオテクノロジーや再生可能な生物資源等を利活用し、持続的、再生可能な循環型の経済社会を拡大させる概念であり、世界の大きな潮流となっている。

まず、過去のバイオ戦略を総括し、シーズ発思考への偏重、総花的、産官学の連携的コミットの欠如、不十分なデータマネジメントなどの反省点をあげている。米国、欧州、中国等主要国においては、バイオエコノミーの拡大による新たな市場の形成を国家戦略に位置付け、全産業をバイオ化、これまでのバイオテクノロジーをいかに活用するかというシーズ発の発想から大きく転換。また個別の分散型研究スタイルから膨大なデータを共有できる拠点化、ネットワーク化スタイルなどに移行、その結果、日本は大きな遅れ、特に産業化に遅れを取っている。

日本の国際競争力のある分野(化学、発酵、製造、育種、ロボット、再生医療・免疫等ライフサイエンス、計測・センシング、画像分析など)を分析、日本の強みと世界の潮流を踏まえつつ、市場の成長性を十分に考慮して、勝機の見込める分野、産業化を支援する9市場領域を設定した。その領域ごとに、2019年度中にロードマップを策定し、推進に関わる者の合意が得られた事項から順次、対応を開始、当分の間、毎年更新を行うこととしている。
「今回の戦略は、大きくはシーズ志向型から、課題達成型としています。9領域には世界的問題、海洋プラごみ問題などに対応するバイオプラスチック分野などを選定、エネルギー分野、バイオ燃料などについては、原材料が国内のみでは確保できない現状があり、9領域からは除かれています」(内閣府)

                                                                                                    (内閣府バイオ戦略2019資料から)

地球環境分野に関係が深い市場領域について補足すると

1)高機能バイオ素材(軽量性、耐久性、安全性)
持続可能な(経済合理性・環境適性を両立)炭素循環社会の実現に向け、セルロースナノファイバーやリグニン等の軽量強靭なバイオ素材に対するニーズの大幅な拡大が予想される。(特に健康医療分野、モビリティ分野)日本には、素材技術及びその利用領域(車など)に強みあり、産業化に不可欠な生産培養技術を強化することで素材開発を促進、世界市場を開拓する。

2)バイオプラスチック(汎用プラスチック代替)
温室効果ガス削減に対応した化石資源に依存しないプラスチックの製造が実用化していないこと、廃プラスチック有効利用率の低さ、海洋プラスチックごみ等による環境汚染が世界的課題となっている。日本は、プラスチックの適正処理・3R等のノウハウが豊富であるとともに、豊富な遺伝資源と競争力のある素材物性情報はバイオプラスチックの開発において有望な資源。バイオマスプラスチック、生分解性プラスチックの開発を促進するとともに、静脈システム管理と一体となった導入システム構築により世界市場を開拓する。

4)有機廃棄物・有機排水処理
アジア・アフリカの人口増加や急激な経済成長に伴い、世界の廃棄物の急激な増加、環境問題の深刻化に対応する環境浄化関連市場の大幅な拡大が予想される。日本は、経済成長に伴う環境問題を克服した経験があり、廃棄物・排水処理は世界最高レベル。廃棄物処理・リサイクル・排水処理の経験・ノウハウを活かして、堆肥化や、化学品化等高付加価値を有する物質・素材等への転換を図るバイオを活用した資源循環システムの構築等により、市場を獲得・拡大する。

7)バイオ生産システム(バイオファウンドリ)<工業・食料生産関連(生物機能を利用した生産)>
工業、食料・生産等に必要な生物機能を利用した生産技術が米国を中心に発展している。特に藻類や微生物による廃棄物・排水の処理により、飼料、堆肥、栄養素、化粧品といった製品に転換する産業が成長している。一方、産業化に向けた藻類や微生物の効率的・安定的な培養といった段階の開発は、熟しておらず、ここをいかに制することができるかが、バイオ市場における勝敗を占う重要な試金石となっている。日本の微生物資源、地域の生物資源、発酵技術は有望な資源。カイゼンや品質管理などのものづくりへの真摯さも強みである。合成生物学や未利用微生物の実用化も含めた微生物等の育種から生産に必要な大量培養に至るまでのプロセスの高度化と徹底したデジタル化・AI化・機械化を図り、本市場領域の国際競争力を飛躍的に向上させ、市場を獲得する。

9)木材活用型建築・スマート林業
建築物の木造化、木質化は、温室効果ガス削減効果が極めて高いことから、その可能性が着目されている。2018年改訂の欧州のバイオエコノミー戦略においては、1tのコンクリートを1tの木材に置き換えると2tの温室効果ガス削減効果があると指摘。その結果、欧州、北米を中心に木造高層ビルの建設に官民を挙げて挑戦。鉄、コンクリート代替としての木材需要の増加が予想される。我が国の木材自給率はここ15年間でほぼ倍増。木材輸出も増加し、戦後開始した植林による人工林は、2020年には約7割が主伐期を迎えると見込まれるなど、林業・木材加工も成長産業化の兆しがあるとともに、スマート林業に将来性あり。日本の伝統ある木造建築技術、世界から評価される美しい設計、正確な施工管理、耐震技術を強みとして、木材活用型建築を国内において普及させ、さらに、木造住宅の輸出による海外市場を獲得。将来的には木材活用型大型建築に拡大する。

農業先進大国、バイオ燃料大国、多くのバイオベンチャーが生まれ、育ってきた米国。その米国を猛追し世界のハイテク主導権獲得に挑む中国。生分解性プラスチックを社会システムに取り入れ、コンポスト社会を作り上げ、使い捨てプラスチック等問題の解決でも世界をリードする環境先進国家共同体EU。その米欧中に日本が勝機を見出すとすれば、品質の高いものづくりをベースとした分野なのだろう。今後の展開に注目である。

2019-07-25 | Posted in G&Bレポート, ニュース |