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食品リサイクル・バイオガス発電 都市部を軸に新たな事業化進み始める  (2020.9.20)

 食品リサイクル・バイオガス発電の事業化が進みだしている。食品リサイクル、特に川下の小売、外食関係は脂分や塩分、包装などの混入物の課題があり、難しい分野であったが、食品リサイクル率向上、再生可能エネルギー創出による脱炭素社会構築に向けた政府方針、また分別技術などの開発により、都市部の食品廃棄物を基盤に動き出している。バイオガス発電はEUでは農業系廃棄物や資源作物を原料にドイツや英国などを中心に、国内も農業系廃棄物、下水汚泥、処理しやすい食品廃棄物を原料に地方都市や農業地区を軸に普及してきたが、都市部での新たな動きが始まっている。

 JFEエンジニアリング(株)(東京都千代田区)の子会社J&T環境(株)(横浜市)、東日本旅客鉄道(株)(東京都渋谷区)、東京ガス(株)(東京都港区)及びJR東日本の関連会社の東北鉄道運輸(株)(仙台市)の4社は共同で、仙台市においてバイオガス化による食品リサイクル・バイオガス発電事業を行うことを目的に、(株)東北バイオフードリサイクル(仙台市)を設立したと2020年7月発表した。


(東北バイオフードリサイクル 発電施設完成予想CG) 

 食品リサイクルをはじめ廃棄物処理のノウハウを持ち、これまでも仙台市内にてプラスチックリサイクル事業等を行ってきたJ&T環境、鉄道事業のほか仙台駅での駅ビル・エキナカ・ホテル等幅広く事業展開するJR東日本グループと、バイオガスに関する知見を有し、ガス・電気の安定供給とエネルギーサービス事業を展開する東京ガスによる東北地方・宮城県仙台市において初めての共同事業だ。
 新設する東北バイオフードリサイクル仙台工場は、一日最大40tの食品廃棄物を微生物により発酵し、発生するメタンガスを燃料にして発電を行う。発電出力は780kW、年間想定発電量は約6,500MWh(一般家庭の約1,500世帯分)を見込む。また、営業開始は2022年春を予定している。施設建設地は東日本大震災で甚大な被害を受けた仙台市蒲生北部地区に位置する。事業を行うにあたっては周辺環境に配慮した運営に努めるとともに、処理過程で生じた消化液の近隣農地等での利活用や再生可能エネルギーの地産地消を目指すなど、地域経済・社会の持続的発展と環境保全の両立への寄与を目指すという。

 

 関西バイオマス展(スマートエネルギーWeek内)は2020年9月9日~11日、大阪インテックスで開催された。基調講演の「我が国の林業とバイオマス発電」と並び、特別講演では、「バイオマス資源の利活用と地産地消ビジネス」と題して、(株)Jバイオフードリサイクル(横浜市)の蔭山社長、ヤンマーエネルギーシステム(株)(大阪市)の山本社長による講演が行われた。中小型バイオマス発電 導入セミナーや展示では、湿式・乾式のメタン発酵技術、プラントなどの技術が多くを占め、バイオガス分野はひとつの潮流となっている。


(Jバイオフードリサイクルのリサイクル発電施設 同社ホームページより) 

 同展で講演されたJバイオフードリサイクル(株)は、JFEエンジニアリンググループとJR東日本グループ等により2016年に食品リサイクル・バイオガス発電事業を行う会社として設立された。2018年8月、食品リサイクルプラントが完成し、発電事業をスタートしている。冒頭の東北バイオフードリサイクルはそれに続く事業でもある。
 JR東日本グループの駅ビルやエキナカ等から発生する食品廃棄物は、東京・神奈川圏内では約50t/日。脂分や塩分、包装等の混入が多く、飼料化や肥料化による再生利用は限られていたという。この課題を解決するため、同社を設立し、食品廃棄物を再生可能エネルギーに変える事業を開始。発酵に適した有機物と容器・包装紙等を分別し、食品廃棄物(日量80t)を微生物により発酵させて、発生するメタンガスを燃料にして発電を行っている。食品リサイクルプラントの発電出力は1,800kWで、年間約11,000MWh発電量を想定、これは一般家庭の約3,000世帯分に当たる。これまで焼却処分が主な手段であった異物の混入率の高い食品廃棄物を、メタン発酵処理することができるようになった。
 発電された電力は、施設で消費する他、FIT(再生可能エネルギー固定価格買取制度)を活用して、JFEエンジニアリング100%出資の電力小売会社、アーバンエナジーに売電されている。また、その電力を食品廃棄物の排出元に電力料金割引として還元するサービスを展開している。


(ヤンマーエネルギーシステム発表資料より)

 ヤンマーエネルギーシステム(株)は、バイオマスをエネルギーに変換する「再エネソリューション」に取り組んでいる。下水汚泥や食品残渣、畜産糞尿等の未利用バイオマスを電力・熱に変換する、地域資源の循環を目指している。バイオガス分野では、コージェネも用いながら、国内の下水処理場を中心に 、2020 年 7 月 時点 で 770 台が稼働中。今後は、食品廃棄物、畜産廃棄物の分野にも注力拡大し、同社が発電所を設計・建設・運用を行うFIT発電事業提案も強化していく方針だ。また、毎年大量発生するもみ殻 の野焼きが禁止となり、もみ殻処理が農家の課題となっている。現在、もみ殻ガス発電の実証を行っており、2020年中の商品化を目指している。

 

(環境省 ホームページより)

 バイオガス発電は大規模なバイオマス発電に隠れて、目立つ発電ではなかったが、固定価格買取制度(FIT)では、引下げの方向に進む買取価格であるが、39円/kWhが維持された。2030年度の長期エネルギー需給見通しで示した「エネルギーミックス(あるべき電源構成)」においても再生可能エネルギー拡大の中、期待されている。
 バイオマス発電は有機性廃棄物を燃料として直接的に利用することで発電を行うが、バイオガス発電は、有機性廃棄物から発生するガスを発電に利用し、残りの消化液を肥料として利用することで、CO2の排出を防ぐことができる。また、バイオガスによる発電に使われる原料は、水分が多く直接、燃やせない残渣、家畜の排せつ物、下水汚泥、食品残渣などだ。これら湿潤系バイオマスは、木質チップなどのようにボイラー燃料としてそのまま燃やせないので、まず発酵槽で嫌気発酵してメタンを主成分としたバイオガスを発生させ、それを燃料にエンジン発電機を稼働させる。メタンガス化の処理方式には処理対象物の固形物濃度によって湿式と乾式に分類できる。
https://www.env.go.jp/recycle/waste/biomass/whatisbiogass.html
http://www.env.go.jp/recycle/waste/biomass/technical.html

 

(農林水産省 ホームページより) 

 食品廃棄物は国内で農林水産省によると年間2,759万t発生(2016年度推計)し、 まだ多くの食品廃棄物が焼却処分されている。 食品廃棄物のリサイクル率を高めることは、 国としても重要な目標だとして、農林水産省・環境省・消費者庁において2000年の食品リサイクル法の制定をはじめとするさまざまな対策・啓蒙活動を行ってはきたが、苦戦を強いられてきた。食品残渣などの食品廃棄物は、水分率と塩分が高いため、燃焼効率が悪く焼却施設の劣化が進みやすく、 特に川下分野では包装などの混入物の処理などの問題もあり遅れていた。食品リサイクル法に基づく「食品循環資源の再生利用等の促進に関する基本方針」で業種別に再生利用等実施率が設定されているが、2019年7月に公表された新たな基本方針では、2024年度までに業種全体で食品製造業は95%、食品卸売業は75%、食品小売業は60%、外食産業は50%を達成するよう新目標が設定された。
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/syokuhin/s_info/saiseiriyo_mokuhyou.html
 2019年10月に施行された食品ロス削減推進法は、農林漁業者・食品関連事業者に規格外や未利用の農林水産物の有効活用を促進や製造時に生じる食品の端材や形崩れ品等について有効活用を促進している。
https://www.maff.go.jp/j/press/shokusan/kankyoi/190924.html

 このような動きの中で、都市部や近郊での事業化が活発化している。

 2020年8月、(株)西東京リサイクルセンター(東京都羽村市)が産業廃棄物処分業許可を取得し、食品廃棄物を使ったバイオガス発電事業を開始した。
 最大日量80tの食品廃棄物を処理でき、出力は1.1MW、年間770万kWh(一般家庭約2,100世帯分相当)の電力を供給することが可能。発電した電力は固定価格買取制度(FIT)によって東京電力に売電し、発電に伴う熱は場内で有効利用する。また、メタン発酵で減容した後の廃棄物(消化液)は、最終処分業者を通じて堆肥として再利用する。発電は2020年末に開始する予定という。
 同発電所は発電事業スタートアップのアーキアエナジー(株)(東京都港区)が企画し、総事業費は約35億円。三井住友ファイナンス&リースや日本アジア投資などの投資会社などが特定目的会社に出資して事業を手掛け、アーキアエナジーの子会社(株)西日本リサイクルセンターが運営する。また、本事業は、補助金等を一切使わず、全額民間資金による完全なプロジェクト・ ファイナンス方式で資金調達をしているのも特徴だ。既に中部地区プラントの資金調達中で2020年 10 月頃に着工し、2022 年稼働予定。


 
(日本アジア投資発表資料より) 

 オリックス資源循環(株)(埼玉県寄居町)は、埼玉県寄居町で一般廃棄物を活用した国内最大規模となる設備容量1.6MWの乾式バイオガス発電施設を建設中だ。2021年秋に竣工、稼働開始を予定。乾式のメタン発酵バイオガス発電施設の建設は、関東圏で初という。
 バイオガス発電施設で普及が進んでいる湿式のメタン発酵技術は、家畜の排せつ物や食品の残りかすなど、水分含有率の高い有機物の処理に適していたのに対し、この施設で採用する乾式のメタン発酵技術では、これまで処理が難しかった水分含有率が低い有機物から高効率にバイオガスを取り出す。紙ごみやプラスチックなどの異物が一緒に排出される川下の食品小売業や外食産業は、分別の難しさから、湿式のメタン発酵施設や肥料化、飼料化施設への処理委託が進んでおらず、乾式バイオガス発電施設の利用により、食品廃棄物と他の廃棄物との分別をせず食品をリサイクルする。

 バイオガス発電の分野ではもみ殻(ヤンマーエネルギーシステム)実証の他、ビール工場排水(アサヒクオリティアンドイノベーションズ)を使った実証事業なども進む。今後の動きに注目だ。

2020-09-20 | Posted in G&Bレポート, ニュース情報/政策関連 |