G&Bレポート

都心で推進する環境学習プログラム、 植物テーマに多様なコラボ展開する西武造園の取り組み(2023.7.23)

 7月1日、小雨がぱらつく中であったが、東京豊島区・東池袋のエリアではSunshine City PLAYPARKが開催された。都心ならでは、高速道路の高架下という日差しや小雨を防げるという立地を活用したイベントで、遊び場やアートや環境問題のワークショップ、遊び・学ぶことができる様々なコンテンツを展開し、子どもたちが全力で遊べる場所を提供しようというものだ。今回は、豊島区のNPO法人、博物館や区内に事業所をもつ企業による、「冒険遊び場」、「ダンボールアートワークショップ」、「SDGsワークショップ」「自分だけのオリエント・バッグ、オリジナル手ぬぐいをつくってみよう!」「絵本の読み聞かせ会」「豊島区×サンシャインシティ フードドライブ」などが実施された。

 この取り組みは、池袋東口エリアを中心に、リビングのように居心地の良いまちなかを目指すプロジェクト「IKEBUKURO LIVING LOOP(イケブクロリビングループ)」のサブ会場として、東池袋エリアの活性化と回遊性向上も目指し、サンシャインシティの主催で開催している。今年は、5月6日(土)、7月1日(土)にすでに開催し、以後9月2日(土)、11月3日(金・祝)~5日(日)に開催の予定だ。
(IKEBUKURO LIVING LOOP Webサイト→https://ikebukuropark.com/livingloop/

 参加企業の中で、SDGsワークショップ、環境学習プログラムを運営する西武造園㈱(東京都豊島区)の方々に、お話を伺うことができた。また、画像など情報提供のご協力をいただいた。                                                                        「私どもは、豊島区および公益財団法人としま未来文化財団が取り組む『豊島区国際アート・カルチャー特命大使/SDGs特命大使』の活動主旨に賛同し、参画をいたしまして、定期的に環境教育イベントを実施するなどの取り組みを行っております。同じく特命大使の賛同企業のサンシャインシティさまと連携し、子どもたちに身の回りの自然環境やSDGsを考える機会を提供し、豊島区が目指すSDGs未来都市の実現に寄与することを目的に、今回の一連のイベントで環境教育プログラムを実施しています」(西武造園営業部プロモーション課)
 SDGsワークショップでは、西武造園が管理する公園の木の実や枝・間伐材などを再利用した体験ワークショップを、季節にあわせたテーマや内容など毎回社内で考案して実施している。今回7月1日開催のワークショップテーマは、草木は友だち!「植物うちわを作ろう」。植物をじっくり観察し、植物の絵を描いたり、香りやスタンプでデコレーションをして、自分のイラスト入りのオリジナル「うちわ」を作るというものだ。テレビドラマの主人公のモデルにもなった植物学者・牧野富太郎博士は、たくさんの植物を観察して、描いてきた。博士にまつわるパネルや図鑑なども交えて、植物観察のポイントも伝える。

ワークショップ風景

 植物学者・牧野富太郎博士は、高知の豊かな自然に育まれ、幼少から植物に興味を持ち、独学で植物の知識を身につけ、2度目の上京のとき、東京大学理学部植物学教室への出入りを許され、植物分類学の研究に打ち込むようになる。自ら創刊に携わった「植物学雑誌」に、日本人として国内で初めて新種に学名をつけた。94年の生涯において収集した標本は約40万枚といわれ、蔵書は約4万5千冊を数える。新種や新品種など約1500種類以上の植物を命名し、日本植物分類学の基礎を築いた一人として知られている。全国からの要望に応じて各地を巡り、植物を知ることの大切さを一般に広く伝え、植物知識の普及にも尽力した。
(高知県立牧野植物園WEBサイトより引用→https://www.makino.or.jp/dr_makino/
 
 西武造園は、公益社団法人日本植物園協会の会員であり、今回の牧野博士の展示データなどは同協会や高知県立牧野植物園の協力によって実現している。
「私どもが管理・運営する植物園でも、シニア層の方を中心にドラマを見たお客さまのご来場は増えている印象です。動物や魚と違って植物は少し地味なので子どもの関心を引きにくいですが、弊社で管理・運営している植物園や公園では、こうした子どもたちや親子連れに、もっと気軽に来園してもらい、少しでも身の回りの自然や植物に興味をもってもらえるよう、気軽に参加できたり、五感を使ったりするイベントを定期的に開催するなど工夫しております」(西武造園営業部プロモーション課)

 紹介が遅れてしまったが、西武造園は、西武グループにおける「造園・緑地事業専門会社」として全国に事業展開する。設計・施工・維持管理・運営までワンストップなサービスを提供し、人とみどりのより豊かなまちづくりを目指している。また、同社は、造園・緑地事業での豊富な実績に基づくノウハウと知見を活かし、社会のニーズやトレンドにあわせたイベント・プログラムを企画立案し、全国各所で展開している。その柱のひとつが、環境学習プログラムの取り組みだ。そしてその主軸となっているが、富良野自然塾東京校としての取り組みだ。

 富良野自然塾東京校とは、北海道富良野市で「北の国から」で知られる作家・倉本 聰が塾長を務める「富良野自然塾」のコンセプトに沿った内容で、国営昭和記念公園(東京都立川市)内に設置されたコースを使って体験できる環境学習プログラムだ。
 西武造園に所属する専属インストラクターが、過去に起きた地球の壮大な物語と生物の進化についてドラマチックに解説することで、地球の環境問題について楽しく学ぶことができるプログラムとなっている。インストラクターによる「分かりやすく、心に届く表現」の案内とともに、五感を使って楽しく体験することができ、各体験を通じて、空気・水をつくりだしている木や森の大切さや、地球が素晴らしい「奇跡の星」であることを学ぶ。

富良野自然塾東京校の風景

 富良野自然塾は、東京校だけでなく、京都府宮津市、愛媛県今治市、福岡県北九州市、福島県裏磐梯など全国8ヵ所でも展開されている。(2023年7月現在)その根本の理念は、ホームページの倉本總氏のメッセージに示されている。

 「僕達人間の存在にとっての必需品とは何なのでしょうか。食もそうですし、衣も住もそうでしょう。しかしそれ以前にもっと最重要なもの。それは、空気と水、です。しかしこの二つの重要性を、それがあまりにも身近で当り前すぎる為、僕らは普段忘れてしまっています。ではその空気と水を供給してくれているものは何か。森です。それも森の葉っぱです。しかし人類は古今東西、森を見るとき、木材になる幹ばかり見て葉を見ることを忘れていました。平成17年、富良野プリンスホテルゴルフコースが閉鎖されると聞き、そこを昔の森に還してはどうかと提案し快諾を得ることが出来ました。今僕達は、この土地をお借りしてそこを元の森に還す事業、同時にそのフィールドを利用しての環境教育事業に取り組み始めました。森に還すとは、単に植樹をすることではありません。近隣の森から、種や実生や若苗を採取し、移植可能な時期まで育てて初めて地面に植えつけるという忍耐と歳月の遠大な作業です。多分このコースが森に還った姿を、僕らは生きて見ることが出来ないでしょう。だからこそこの事業を未来につなげていかなければなりません。これは、利を得る為の事業ではありません。僕らは木材の為に森をつくるのではなく、これまで不当に無視されて来た葉っぱをつくる為に森をつくろうとしています。何故なら葉っぱこそ空気の清浄と水の貯蔵を司る最も重要な機関だからです」
 (富良野自然塾Webサイトより引用→https://furano-shizenjuku.com/

 「私どもは、この主旨に賛同し、私どもが運営維持管理業務にたずさわる国営昭和記念公園に東京校を2014年に開校しました。富良野で研修を受けた当社所属のインストラクターが場所や対象者、目的などご要望にあわせてプログラムを組み立てる出張講座も行っております。また、このほかにも公園等での養蜂を通じた環境教育プログラム『はち育』など、植物や自然環境をテーマにしたさまざまなプログラムをご提案することが可能です」(西武造園営業部プロモーション課)
 
 同社は、西武グループの一員として、2020年8月末まで西武グループが運営していたレジャー施設「としまえん」の跡地を整備する事業にもたずさわっている。「2023年5月に公園の一部が開園した都立練馬城址公園の造園施工にも当社がかかわっております。公園としての機能はもちろんですが、大地震などが発生した場合に備えて、緊急時にはシェルターになる四阿や、かまどにもなるベンチなど、公園内にはさまざまな防災設備が整備されています。また、豊島園駅の駅前広場など周辺エリア一帯の緑豊かな空間の創出にもたずさわっています」(西武造園営業部プロモーション課)


都立練馬城址公園                  浄水場発生土資源化技術

 同社の事業展開は、公園、商業施設、防災など幅広いジャンルに関わるが、その中で、事業活動に伴う環境負荷の低減や、地球環境の課題解決など、SDGsへの取り組みを推進している。近年では、農業と太陽光発電を組み合わせたソーラーシェアリングや、浄水場発生土を植栽基盤材などに再利用する事業も手掛けている。今後の展開に注目だ。

 

2023-07-23 | Posted in G&Bレポート |