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藻類バイオマス産業化レポート  バイオプラスチック、化成品市場に挑む企業 ABO BLOGから (2020.6.30)

 米国のABO (Algae Biomass Organization)は、3月29日に、バイオプラスチック市場での藻類の利用が増加、注目を集めていると発表、事業展開や研究を進める国内外企業などが紹介された。
 バイオマスの利用可能性は多岐に及ぶが、「バイオマスの5F」という考え方がある。重量単価が高い順にFood(食料)、Fiber(繊維)、Feed(飼料)、Fertilizer(肥料)、Fuel(燃料)の5つの用途、重量単価(kgあたりの売価)の高いものから低いものへ順次事業を展開していくことで、バイオマスの生産コスト低減とバイオマスの利用可能性の拡大を推進する事業戦略の考え方だ。バイオプラスチック(バイオマス、生分解性)は、2番目のFiber分野、化成品などの分野にあたる。

 プラスチックは、その高い機能性が社会生活を支えてきたが、今日大きな岐路に立っている。使用後の廃棄処理においては、プラスチック資源循環の推進・深化は主軸であるが、グローバル視点で十分に機能しているとは言い難く、化石資源の燃焼による地球温暖化問題、海洋プラごみ、マイクロプラスチック問題など、複雑化している。バイオプラスチック、バイオマスマテリアルは、解決の1つの方法だが、原料の主体であるサトウキビやトウモロコシは、食料との競合、耕作地の課題もあり、次世代型の研究、事業化への動きが始まっている。光合成生産効率の高い微細藻類、海藻類の事例では、食の機能を複合した商品も登場してきており、欧米など海外の動きを追った。 

 

Algix
 2010年、Mike Van Drunen氏とRyan Hunt氏によって米国ミシシッピ州メリディアンで創業された。Ryan Hunt氏は、2007年、藻類のバイオ燃料に関する研究を大学院で行っていたが、米国において淡水域で起こっていた藻類による環境汚染問題解決に向けた研究へ方向転換した。更なる研究の結果、回収した藻類バイオマスはタンパク質を多く含み、熱、圧力、時間をかけると、可塑化することにたどり着く。射出成形プロセスの開発を行い、藻類を環境浄化のために使用、そして収穫、乾燥、粉砕された藻類をベースにしたバイオマテリアルを提供する企業のスタートとなった。


 The National Institute of Environmental Health Sciences (NIEHS)によると、HABs(Harmful Algal Blooms)、有害藻類ブルームという現象(上図はNIEHSホームページより)は、農業や工業排水にリンや窒素など栄養素が豊富なことや地球温暖化などにより温かくなった水温から起こるといわれている。淡水池、河川、湖などの水生環境で、微細藻類が高密度に発生し水面付近が緑、青緑、赤、または茶色に変色し、生態系から酸素を取り込み、一部の藻類は有害な物質を放出するときもあり、人、動物、魚などの生物や生態系、漁業、観光にも影響を及ぼしている。日本では「水の華」とも呼ばれることがある。米国では、各州の管理当局の監視や勧告により、健康被害を防いでいるが、全土において大きな環境問題となっている。
https://www.niehs.nih.gov/health/topics/agents/algal-blooms/index.cfm
 2014年、ミシシッピ州メリディアンにさまざまな種類の藻類を評価して、さまざまな材料特性を持つ新しいバイオプラスチック材料を製造する施設拠点を確保。フラワーポット、パッケージング、3Dプリンターフィラメントなどの用途試行などを経て、靴の分野と相性がマッチ、2015年に靴分野に本格参入する。同社と米国カルフォルニア州の環境配慮の材料開発企業のEffekt 社は、藻類を混合したEVA(エチレン酢酸ビニル)ペレットは、他の化合物と組み合わせ最終的にEVA 100%と同質の柔らかいフォームが形成されるコア技術を開発。世界初の藻類由来の軟質フォーム“BLOOM”の製造を発表、フォームを商品化するための合弁事業Bloom Holdings社の設立を発表した。

 

Vivobarefoot社ホームページより

 2016年、靴、スポーツ用品、アクセサリーなどの中敷きや靴底用などの高反発アプリケーション向け藻類混合EVAを靴業界向けに発売した。同年、環境エンジニアリング企業大手のAECOM社と藻類の収穫技術を利用してHABs環境浄化の実証事業がスタート。2017年、Vivobarefoot社は、淡水の浄化とCO2の排出も削減した藻類混合EVAベースの水陸両用耐水性アドベンチャーシューズを発売、以降主要靴ブランド企業などに供給している。

 

Checkerspot
 2016年に、Charles Dimmler氏とScott Franklin氏によって米国カルフォルニア州バークレーで設立された。天然では低濃度でしか存在せず、化学合成など他の方法では量産化が難しい物質を微細藻類などのバイオテクノロジーで量産する技術、トリグリセリドから作られたポリウレタンやコーティングなどをコア技術とする。DIC(株)(東京都板橋区)は2018年4月に出資、6月に先端機能材料に関する共同開発契約を結び、さまざまな協業を進める。同社は設立したアウトドアブランドWNDR Alpine で2019年10月より藻類由来ポリオールを使用したスキー板の販売を開始した。同社は製品の持続可能性をもった開発を行っており、スキー板を廃棄しやすいように分解できる樹脂システムを開発中だ。

 

WNDR Alpine社ホームページより

   同社については、ABOのサイトだけでなく、2020年4月、DIC(株)のコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)事業の紹介の中でも取り上げられた。DICとのパートナーシップは、接着剤やコーティング剤、印刷インキ、潤滑油分野における新製品や改良品および製造プロセスを重点に推進中という。
https://www.dic-global.com/en/news/2020/csr/20200427140711.html

 

Algenesys   
 米国カリフォルニア大学サンディエゴ校の、Stephen Mayfield氏、Micheal Burkart氏、Robert Pomeroy氏によってカルフォルニア州サンディエゴで、2016年に設立された。同社が特許取得したSoleicテクノロジーは、プラスチック問題に対処するために開発された微細藻類を原料とする生分解性バイオ素材。同社の創業メンバーがすべてサーファーであったこともあり、硬質フォームのサーフボードを作ることからスタート。カリフォルニア州オーシャンサイドにあるArctic Foamと共同で、製品化を進めており、現在、高性能で完全に生分解可能なサーフボードに向けて開発中。靴用のSoleic軟質フォームの配合と製品開発をサンダルメーカーのREEFと展開中だ。

 

Loliware
 Chelsea Briganti氏とLeigh Ann Tucker氏によって、2015年、米国ニューヨーク市で共同創設された。コンブなどの海藻ベースのバイオマテリアル企業は、使い捨てのプラスチックストローに対する2018年の使用禁止の波の中で浮上した。海藻のアルギン酸塩と紅藻の寒天によって作られた風味のあるストローは、紙のストローとは異なり、プラスチックに近い感触をもつ。土と海洋の両方で生分解可能であるだけでなく、食用にもなれるハイパーコンポスト可能なストローを生産し、普及させている。持続可能な方法による収穫、また海藻はセルロース、天然高分子、タンパク質を含んでいるため、カップなどの食器、フィルム、パルプなどの製造にも取り組んでいる。同社はファッション性のあるブランドを構築していることも大きな特徴で、地球環境問題に関心をもち、GMO製品を避けたい消費者、特に女性を意識してアピールしている。


Loliware社ホームページより

 コンブなどの海藻はCO2を効率的に捕獲し、高速で再生可能なライフサイクルを持つ。米国では日本と異なり、海藻の食用習慣がない。淡水灌漑や肥料も必要としない、大規模な水中森林、外洋海藻農場で生産されたバイオマスが再生可能エネルギーやプラスチック代替材料の供給源としての役割、ブルーカーボン経済という考え方も期待されている。同社は2018年、非営利団体のSustainable Ocean Alliance(SOA)が前年にスタートしたOcean Solutions Acceleratorで最初に投資を受けた企業の1社にもなった。

 

NOTPLA
 Rodrigo Garcia Gonzalez氏とPierre Paslier氏は、2013年にImpingial College LondonおよびRoyal College of Artでイノベーションデザインエンジニアリングを学びながらSkipping Rocks Labを英国、ロンドンで共同設立。持続可能な包装ソリューション企業はペットボトルの代替品として、2014年に新コンセプトのパッケージ“Ooho”プロトタイプを制作した。
 “Ooho”は、食用および生分解性で、飲料やソース用のゼラチン状の球形化されたカプセルパッケージ。海藻抽出のアルギン酸塩と植物を組み合わせた素材である“Notpla”から作られており、プラスチック容器の代替になる。4~6週間で生分解し、そのまま食べることができる。堆肥化が可能で、マイクロプラスチックにもならない。
 ”Ooho”をイベント、テイクアウトショップでのテストの結果、スケールを大きくした製造技術に取り組み始め、2017年、最初の製造機械を作り上げた。2019年4月に行われたロンドンマラソンでは、スポーツドリンクを入れた3万個を超える“Ooho”の配布が実施された。スポーツドリンクを摂取した後、ランナーがカプセルパッケージを食べたくない場合は、廃棄することもできる。新感覚の果物の皮のようなイメージだろうか。ランニングイベント、レース、フェスティバルなど、短時間で多くの人がパッケージを消費する場でのプラ製のコップやボトルの代替が期待される。


“Ooho”  NOTPLA社ホームページより 

 ビジネスモデルの考え方は、ボトル入り飲料を長距離輸送することなく、1袋あたり20~150 ml程度の”Ooho”をイベント現地で製造するという発想だ。開発中の製造機械をリースし、材料のカートリッジなどをイベント主催者に販売して、必要に応じて飲料やソースを含む新鮮な”Ooho”を生産および販売できるようにするというものだ。
 Skipping Rocks Labによって開発された素材“Notpla”は”Ooho”だけにとどまらず、使い捨てプラスチックの代替、ヒートシール可能なフィルム、ソース、調味料などを入れるサシェ、農産物を入れるネット、食品容器、コーティングなどの開発に取り組んでおり、2019年に社名を、NOTPLAとした。     

 世界三大広告祭のひとつ「The One Show」は、毎年5月にニューヨークで授賞式が行われているが、今年は新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、6月にオンラインで開催された。 各部門ごとに、賞が設けられているが、全部門を対象にした「グリーン賞」という特別賞を同社が受賞した。これは、年間でもっとも環境に配慮した広告に与えられる。 ロンドン発の新旋風を巻き起こすか注目される。https://www.oneclub.org/awards/theoneshow/-archive/awards/2020/all/14/select

 

Evo&Co.
 インドネシアのジャカルタ市で2016年、David Christian氏によってEvoware社は共同創設された。現在、Evo&Co.社が中核会社となり、関連製品やサービスを提供するEvoware社、Evoworld社、Rethink の複数のブランドをまとめる。
 インドネシアは中国に次ぐ、海洋プラスチックごみ世界第2位の排出国で、市場に出回る魚の約25%がマイクロプラスチックで汚染されているという。Evoware社は、インドネシアで豊富にとれる、また十分な利用もされていなかった海藻を原料に、プラスチック廃棄物の問題を解決するために使い捨てプラ製品に代わり、海藻を使用する生分解性の代替製品カップや包装材を生み出した。零細な漁民の生計を高めながら、製造に際しては、児童労働にならないように、ホームレス経験者やそれまでゴミを拾い集めていた非熟練の労働者も採用しているという。Evoworld社は、生分解性、堆肥化、食用など、使い捨てプラ製品に代わる幅広い選択肢、「食べられるカップ」などを提供し、持続可能な生活についての意識を高めることに注力する。Rethinkは、Evo&Co.社が実施するキャンペーンで、Campaign.comと共同で行っており、個人、コミュニティ、政府、ブランド、企業の共同運動の一環として、消費の観点から自分の習慣を評価し、より持続可能な生活をする提案している。

Ello Jello(食べられるカップ)  Evo&Co.社ホームページより

  ABOは8月から開催するAlgae Biomass Summit 2020ではこれまで以上にポリマー、プラスチック分野のテーマが含まれており、サミットの重要な要素になるとしている。最新技術の開発に取り組み、ネットワークを構築し、これらをビジネスにつなげたい考えだ。

2020-07-01 | Posted in G&Bレポート, ニュース |