G&Bレポート,海洋の持続可能性

国連環境総会 プラごみ削減国際枠組み決議  JAPAN PACK2022 ダイセル/海洋生分解性酢酸セルロース 北村化学産業/発泡エコなトレー (2022.3.10)

 国連環境計画(UNEP)の最高意思決定機関である国連環境総会(UNEA)の第5回会合は、3月2日、ケニアのナイロビで開催され、海洋などのプラスチック汚染を終わらせるために、2024年までに国際的な法的拘束力のある国際的枠組みを構築するという決議を下した。国連環境計画の発表によれば、事務局長であるインガー・アンダーセン氏は、プラスチックの供給源から海洋までのライフサイクル全体に対処するこの協定はパリの気候変動協定以来、最も重要な国際的多国間環境協定であると述べた。

詳しくは、→https://www.unep.org/news-and-stories/story/what-you-need-know-about-plastic-pollution-resolution及びhttps://www.env.go.jp/press/110635.html

 JAPAN PACK2022(日本包装産業展)は、一般社団法人日本包装機械工業会主催、「ともにつくる 未来の包程式」をテーマに、2022年2月15日から18日までの4日間、東京ビッグサイト西・南展示棟で開催された。プラスチック資源循環促進法の施行を間近に控え、その対応に向けた多くの発信がなされる中、海洋プラスチックごみ問題の解決に向け、官民一体でイノベーションを加速するためのプラットフォームCLOMA(クリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンス)展示コーナー、プレゼンテーションも実施された。

(右はCLOMA事務局コーナー)

 CLOMAでは、海洋プラスチックごみの削減に貢献するため 2050年までに容器包装等のプラスチック製品100%のリサイクルを目指すという目標を掲げる。
 その実現のため、プラスチック製品の製造から利用、廃棄に至るバリューチェーンを構成する会員同士が、共通認識の下に、個別企業の枠を超えてネットワークを強化し、具体的な成果につなげていくため、CLOMAビジョンを策定。また、CLOMAビジョンで定めた次の5つのキーアクションについてアクションプランを策定し、具体的な取組、課題対策を進めている。特に、企業がもつ多様な技術や経験を活かし、消費者や自治体、国とともに未来志向のソリューションを生み出し、ジャパンモデルとして世界へ発信することを目指している。

              キーアクション                            アクションプラン
●プラスチック使用量削減  肉薄化、軽量化、製品構造の最適化
●マテリアルリサイクル率の向上  モノマテリアル化、分別回収システムの拡充
●ケミカルリサイクル技術の開発・社会実装  廃プラスチックのモノマー化
●生分解性プラスチックの 開発・利用  生分解性プラスチックの普及~他素材との複合化・複層化・多品種化、特に海洋中で分解性能を発揮するプラスチックについては普及と合わせ、国際標準化、多品種化が課題。更にはスイッチ機能等の商用化も将来課題としている。
●紙・セルロース素材の 開発・利用 紙等の代替、セルロース製マイクロビーズの普及

 これらは、素材・製品の利害損失を踏まえながら、社会情勢の中で、その最適化を考えていくこととしている。プラスチックごみ問題解決の観点では生分解性プラスチックや紙・セルロース素材が有効であるが、地球温暖化対策、脱化石資源依存の観点からはバイオマスプラスチックの利用拡大が有効であり、適材適所で活用し、SDGsの同時達成も目指す考えだ。CLOMAプレゼンテーションでは、CLOMA事務局の他、会員団体、企業の発表が行われた。

 


● (公財)日本環境協会

 エコマーク事務局からは、2022年4月のプラスチック資源循環促進法の施行を直前にひかえ、取り組みに活用可能なエコマーク制度(ISO14024に基づくタイプI環境ラベル制度)の概要と、容器包装分野におけるエコマークの認定基準について解説があった。
 プラスチックにおいては、軽量化等の効率的な資源使用、環境配慮型設計、素材の使用の加速、また、再生プラスチック・植物由来プラスチックの利用拡大を推進する方針。また、海洋に流失してしまったプラスチック廃棄物のリサイクルを促進するため、「海洋プラスチックごみ、漁業系プラスチック廃棄物を再生利用した製品」での認定を開始、製品種類の制約は設けず、認定の対象としていく。生分解性プラスチックについては、環境中で使用され回収が難しく生分解性能が発揮される用途に限定し、認定される。

 

●(株)ダイセル

 「生分解性酢酸セルロースの環境マテリアルとしての取り組み紹介」と題して、セルロースマーケティング部川上氏より発表された。
 酢酸セルロースは、非可食性植物由来の「セルロース」と自然界に存在する「酢酸」を原料として製造される、天然由来かつ生分解性を持った素材だ。原料は針葉樹を主とする木材や綿花としており、業界全体で約80~90万トンの供給能力を有しているという。同社は、1930年代から酢酸セルロース事業に取り組んでおり、長年培ったセルロース化学技術を応用し、より生分解しやすい分子構造を見いだし、従来製品の品質を保ったまま、特に海洋での生分解速度をさらに高めた新製品「CAFBLO」を開発した。TUV AUSTRIAのOK biodegradable MARINEの生分解性評価に合格、2021年8月認証取得した。

上図:酢酸セルロース(開発品、従来品)の海洋生分解性(対セルロース) (performed in accordance with the requirements of the OK biodegradable MARINE certification scheme of TÜV Austria).

 「酢酸セルロースは、メガネフレーム、繊維、液晶保護フィルム、化粧品など人々の生活の中で広く利用されている素材です。可塑剤を加えることで、他のプラスチック同様に熱成型も可能で、その種類によって弊社グループでは、ペレット「セルブレンEC」、真球微粒子「BELLOCEA」等を販売しております。特に「セルブレンEC」については、耐熱性、透明性、また量産に適しているということが特徴です。今後も、当社はパートナー企業や自治体と協力し、海洋プラスチックごみ問題をはじめとする環境問題の解決策に向け、さまざまな製品へ酢酸セルロースおよび「セルブレンEC」の採用、用途開発を進めていきたいと考えております」(川上氏)

(情報提供:ダイセル)

 また、同社の大きな特徴は、バイオマス、セルロース分野の研究を進める大学との積極的な産学連携だ。
 2021年1月、金沢大学と「新産学協働研究所(仮称)」整備等に関する覚書を締結した。これまでにもセルロース分野の共同研究や相互の人材交流などを行ってきたが、バイオマスを活用したオープンイノベーション拠点として、金沢大と同社のみならず、多くの民間企業や大学、研究機関とも連携した産産学学連携を推進するバイオマス研究の世界的な拠点形成を目指す。研究所は2022年秋に竣工予定という。                                                         https://www.u-presscenter.jp/article/post-45074.html
 また、2021年10月、京都大学と、木材や農水産廃棄物などのバイオマスを高機能な材料や化学品に変換し、自然と共生する低炭素社会の実現、新産業創出などに寄与することを目的とした、包括連携協定を締結した。ハブとして機能する産学連携共同研究の拠点「バイオマスプロダクトツリー産学共同研究部門」を宇治キャンパス内に建設中だ。                       https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news/2021-10-11-1

 

●北村化学産業(株)

(展示ブースから 左は日本製紙のバイオマストップフィルムを組み合わせたもの)

「発泡エコなトレーのご紹介」と題してQOL事業部岡本氏から耐熱発泡シートを用いた容器について発表された。(QOL:Quality of life)
 従来、惣菜や弁当で使用されている通常の発泡トレーは、耐熱性はなく、レンジアップ不可、耐油性、バリア性もない。また、コンビニなどで使われているPPバリアトレーは、レンジ加熱後手で触れると熱く、耐寒性もないという課題があった。
 開発された発泡トレーは、これらを克服、PPバリア製容器に比べ、同社比で樹脂使用量が約 40%削減、CO2の約50%削減、更に耐熱性付与で電子レンジ対応、酸素バリア性付与で賞味期限延長、冷凍流通対応でフードロス削減も可能にした、安心で便利な、環境配慮のトレーとなった。

(情報提供:北村化学産業)

 同トレーの誕生は、2018年5月、同社の化学品事業部より、耐熱性能をもった発泡スチレン樹脂・シートがあるという紹介が始まりだ。耐熱だけではなく、耐寒、軽量化なども含め、開発に着手することになったという。
 「バリア展開を検討の中、住友ベークライト様製の発泡スチレンにラミネート可能なバリアフィルムに行き着きました。幾多のテストを経て、2018年10月、鍵となる性能に関して特許出願し、バリアフィルムは住友ベークライト様、弊社は耐熱発泡スチレンシートを加工し、販売するという共同プロジェクトとなりました」(岡本氏)
 2019年4月、日本製紙グループとのCLOMA第1号となるビジネスマッチングが成立、耐熱発泡トレーに日本製紙開発の紙にバリア塗工付与した「シールドプラス」のトップシールも加わった。
 「発泡トレーそのものは、石油資源由来の製品ですが、バイオマストップフィルムとの組み合わせも加わり、コンビニ向け案件への取り組みを進める中で環境対応力、コスト競争力を兼ね備えた容器スペックができあがりました」(岡本氏)
 同容器はまさに、CLOMAのキーアクションが集約された、また各企業の多様な技術、ノウハウを結集した商品といえそうだ。

(画像はバナナペーパーで作成したBOXのサンプル)

 今回の展示では見られなかったが、同事業部はバナナペーパーを利用した製品の企画開発・販売を開始した。ザンビアのオーガニックバナナの茎の繊維に古紙やFSC認証パルプを加えて、日本の越前和紙の工場で生産している。あまり知られていないが、バナナは1本の茎から1度しか実が取れない。しかし茎を切れば1年後にはまた美味しいバナナが収穫できる。その切った茎を再利用した日本初のフェアトレード認証の紙だ。

 プラスチックの生産量は過去数十年で指数関数的に増加しており、現在では年間約4億トンに達し、2040年までに2倍になると見込まれているという。海洋などのプラスチックごみ削減対策が急務となっていたが、これまで国際的な仕組みがなかった。国連環境計画では今後2022年中に政府間委員会を設置し、2024年までに内容を検討する予定。2022年4月から国内で施行されるプラスチック資源循環促進法、CLOMAの活動、また企業等の技術やノウハウなど、日本が国際レベルでどう貢献していくか注目である。
 

 

2022-03-09 | Posted in G&Bレポート, 海洋の持続可能性 |