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欧州議会、再生可能エネルギー指令改正案・REDⅢ可決。森林バイオマスは現状比率維持へ (2022.10)
公益財団法人自然エネルギー財団の発表によると、2022年9月14日、フランス・ストラスブールで開催された欧州議会の本会議において、EUの再生可能エネルギー指令(Renewable Energy Directive)の改正案(REDⅢ)が可決された。これにより、2030年までに再生可能エネルギーを45%に増加させることが承認された。しかし、EUの立法プロセスでは、欧州議会だけではなく加盟国の当該分野の閣僚から構成される欧州連合理事会も立法権を持っており、この後、欧州委員会と欧州議会に加えて欧州連合理事会との三者間協議が行われ、2022年内に文案の最終化が行われる見込みだ。
2021年7月に欧州委員会が発表したREDⅢの原案は、バイオエネルギーの持続可能性基準を強化することを提案していた。しかしその後の議論では、バイオエネルギーの中でも、森林から直接取り出されて使われる木質バイオマス(森林バイオマス)の取り扱いに議論が集中し、大きな論争になっていた。
EUにおいて、バイオエネルギーは全自然エネルギー供給量の6割、森林バイオマスも同2割を占める重要なエネルギー源になっている。それに対して、環境NGOなどから「エネルギー利用が森林伐採量を増加させている」「炭素負債が発生しており、石炭より環境に悪い」などの批判が相次ぎ、ついには「森林バイオマスを再生可能エネルギーの対象から外すべきだ」という主張がなされるようになり、その帰結が注目されていた。
結論として、欧州議会は森林バイオマスを自然エネルギーに含め、REDの目標達成に算定できる基本的な枠組みを変えなかった。ただし、エネルギー利用のさらなる増加が森林伐採量の増加につながるリスクを念頭に、森林バイオマスの総エネルギーに占める割合の現状維持を求めることになった。
REDⅢ原案においては、新たな動きがあり、下記が主な要点だ。
1)一次木質バイオマスへの注目とエネルギー利用制限
REDⅢ原案では、森林バイオマス(Forest biomass)という言葉が使われていたが、今回可決された法案には一次木質バイオマス(Primary woody biomass)という用語が登場した。これは、製材工場などで発生するおが屑や端材などを二次木質バイオマス(Secondary woody biomass)と呼ぶことに対比させている。一次木質バイオマスにおいては、カスケード利用の原則を適応するとともに、建築用材や家具材料などのマテリアル用に使われるような丸太部分(Roundwood, stemwood, log)の森林バイオマス利用は制限されることが提案された。
2)森林バイオマス発電に対する補助金のフェードアウト
森林バイオマスを燃料として、熱電併給ではなく発電のみを行うプラントについては、2026年12月末以降は補助金の支給を原則として取りやめるよう加盟国に求めている。ただし適用除外として、2021年時点で提案されていた、(1)公正な移行計画に位置づけられていること、もしくは(2)BECCSであることに加えて、今回の提案により、(3)熱導管などの熱利用インフラがなく熱電併給が不可能な発電所も除外される見込み。
3)森林バイオマスのより有効な利用を図るEU
このような森林バイオマスの取り扱いを巡るEUの議論は重要な示唆を含んでおり、日本でもエネルギー政策だけではなく、森林政策も含めた総合的な検討が必要である。日本は文案の最終化までEUでの議論を引き続き注視する必要がある。
詳しくは、→https://www.renewable-ei.org/activities/column/REupdate/20220928.php