研究情報

環境移送技術のイノカとDIC、サンゴ白化防止へ、微細藻類スピルリナ由来天然色素の有用性研究を開始(2022.7)

 ㈱イノカ(東京都港区)、DIC㈱(東京都中央区)、㈱リバネス(東京都新宿区)は、DICが保有する微細藻類スピルリナ由来の天然青色色素「フィコシアニン」が海洋生態系に与える影響について共同研究を開始すると7月5日、発表した。本共同研究では、リバネスの研究サポートのもとイノカのコアテクノロジーである海中のモデル生態系を閉鎖空間(=水槽)に再現する「環境移送技術」を用いて水槽内に人工的にサンゴを生育させ、抗酸化作用が認められるフィコシアニン添加条件下における白化現象の抑制効果等について検証する。

 サンゴ礁(サンゴが形成する地形)が海洋に占める面積は全体のわずか0.2%だが、サンゴ礁海域には海洋生物種のうち約25%(約10万種)が棲息しており、海の生物多様性を支えている。人間の社会生活を支える上で必要な護岸効果や漁場の提供、建築や生活道具の材料といった重要な役割を果たし、さらに近年では医薬品への活用も期待され、その経済価値は年間で推定3750億ドル(日本円で約43兆円)以上にものぼると言われている。

 しかし、近年の気候変動に伴う海水温の上昇により、20年後にはサンゴ礁の70~90%が消滅する可能性が高いと予測されている。高温の熱ストレスや光ストレスは、サンゴに共生している褐虫藻の光合成系を阻害し、活性酸素種を過剰に発生させ、その結果、サンゴ体内から褐虫藻が喪失してサンゴ自体の骨格が白く見える「白化現象」を引き起こす。白化が進行するとサンゴは死滅し、サンゴに支えられている海の豊かな生態系も崩壊の一途を辿る。

 近年のサンゴ研究によると、褐虫藻の熱ストレスや光ストレス耐性を向上させる共生バクテリアが単離され、この共生バクテリアが、天然色素の一種であり強力な抗酸化作用をもつ物質を生合成していることが報告された。本共同研究のシーズとなる、スピルリナから抽出した光合成青色色素「フィコシアニン」にも既に抗酸化作用が認められており、また添加した水産飼料を用いて、飼育魚の成長率や体色(皮膚の総色素量)等の変化を調査する報告もみられている。

詳しくは、→https://www.dic-global.com/ja/news/2022/ir/20220705114754.html                         参考情報→https://www.dic-global.com/ja/news/2020/products/20200720110650.html

2022-07-09 | Posted in 研究情報 |