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藻類バイオマス産業化レポート 大規模培養設備 東南アジア拠点に稼動、開発進む(2019.10.31)

 米国では農業振興などの政策をベースに産業化に向かう藻類バイオマス、そのビジネス化に向けて、国内の自治体、企業、研究機関などを追った。

ちとせグループ  マレーシアで低コストで大規模化可能な3次元型の藻類培養設備稼働&ブルネイで生スピルリナの新工場を建設

(マレーシアの大規模化可能な3次元型の藻類培養設備)

 バイオベンチャー企業群・ちとせグループは、三菱商事とサラワク州生物多様性センター(Sarawak Biodiversity Centre, SBC)が共同でマレーシアサラワク州に設立した熱帯環境下における世界最大級の藻類培養設備(1,000㎡)の設計・監修を行い、2019年8月本格稼動を始めた。
三菱商事とマレーシアサラワク州の州立研究機関であるSBCは、2012年10月より現地の有用な藻類の収集&実用化を目指したプロジェクトを開始、同グループは、プロジェクトにおける三菱商事の技術アドバイザーとして、2013年より現場におけるプロジェクト運営やSBC研究員への技術指導を行ってきた。今回の藻類培養設備は、熱帯環境下での効率的な藻類の培養と大規模化を実現する3次元型の培養設備。熱帯環境下の、1年を通じて気温が安定しており、日射量も豊富であるという利点を存分に活かせる3次元構造でありながら、大規模化が容易な構造になっており、建設コストも大幅に抑えているのが特徴だ。2018年11月に竣工、本設備で培養した藻類をエビ養殖・孵化場へ提供し、飼料や水質調整剤としての活用も開始しており、商業化の目処をたてた。

 また、同グループにある(株)タベルモは2019年10月、ブルネイに現地子会社と、生スピルリナの生産能力拡張のためブルネイに新工場を建設した。同地の一年を通じて日照量が豊富で安定した温暖な気候はスピルリナの栽培に適しており、1haの敷地に、総面積3500㎡の建屋や培養設備などを建設。同社は無味無臭で栄養価の高いスピルリナの特徴を最大限に生かした加熱・乾燥させない生スピルリナを、「タベルモ」の製品名で生産・販売。一般的なスピルリナは、60種類以上の豊富な栄養素を持ち、たんぱく質含有量が乾燥重量ベースで65%と、主なたんぱく質源である大豆や肉よりも高く、健康食品として利用されることが多い。新工場で生産した製品は、2019年末を目処に日本市場での販売開始を予定する。

 

バイオジャパン2019は、横浜パシフィコにおいて、2019年10月9~11日開催された。

アルガルバイオ 7色の次世代クロレラを開発

(7色の次世代クロレラ バイオジャパン2019展示パネルより)

 (株)アルガルバイオ(千葉県柏市)は、7色の次世代クロレラを開発、従来のクロレラの課題を克服して機能性を向上させ、その技術を中小企業基盤整備機構ブースの中に展示した。
β-カロテン、アスタキサンチンなどのカロチノイドは、アンチエイジング等に関する機能性が注目されているが、限られた微生物や植物から生産されており価格も供給量も限定されている。同社は、クロレラを含むトレボウキシア藻綱が、増殖が速く、培養が容易であることに着目し、クロレラなどの藻類を用いて希少脂肪酸やカロチノイドを生産する技術を開発した。また、蓄積する脂肪酸・カロチノイドがクロレラの株ごとに異なり、鮮やかな色を呈するため、天然色素としての利用も期待される。

 「現在、ソーダ味アイスクリームに使われているソーダ色は、かつて化学合成色素では難しかったのですが、国内のD社グループが1970年代にスピルリナの大量培養を成功させ、食品用天然系色素の工業生産を開始し、利用されています。次世代クロレラは栄養補助だけでなく、食の美しさを創造する市場に向けて有望と考えています」(事業開発部)
同社は2018年3月設立の東京大学発のベンチャー企業。東大における20年の研究の成果を基に、微細藻類3000株をターゲットにオイルとカルチノイドや長鎖不飽和脂肪酸といった脂溶性成分を蓄積する種類について研究開発を進める。2019年4月に培養装置を拡大、機能性素材として食品・飲料向けへの提供を目指す。

 

産業総合研究所  ユーグレナが作るパラミロン粒子の化学品材料化

 国立研究開発法人産業総合研究所(AIST)のブース内ではユーグレナ(和名:ミドリムシ)が作るパラミロン粒子の化学材料化の可能性について展示した。パラミロンはユーグレナがその細胞内に蓄積する高分子で、ブドウ糖だけで構成される。セルロースとは、ブドウ糖のつながり方が少し異なり、そのためパラミロンは自己組織化能をもち、三重らせんを作る。容易に抽出され、その純度は非常に高く、鎖長はほぼ一定。セルロースとは一線を画すこれらの特性をベースに様々な化学工業製品展開の可能性を紹介した。

(バイオジャパン2019の展示より)

1)プラスチック (熱可塑性樹脂)
熱可塑性、耐熱性、成形性にも優れ、さまざまな形に加工することが可能
2)化学変性ナノファイバー
カチオン化パラミロンからなるナノファイバー。乾燥した状態で保存することが可能で、水に再分散させることでナノファイバーを形成する
3)超吸水性フィルム
アニオン性官能基と長鎖アルキル基をパラミロンに付加することで、吸水性と透明性とハンドリング性に優れたフィルムの原料。フィルムは水に浸すと原形を保ったまま膨らむ
「藻類バイオマスの事業を立ち上げていくには、出口となる企業の積極的な投資や参画が必要で、そのためには、その企業が関心をもってくれそうな出口の製品のメニューの提示、正確な情報発信も必要だと思っています。米国との比較で考えると、旗振り役の存在も大きいと思いますね」(バイオメディカル研究部門)

国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、2019年度新エネルギー成果報告会をパシフィコ横浜において10月17日~18日に開催、バイオマス分野は17日に行われた。

IHI/神戸大学  高速増殖型ボトリオコッカスを使った純バイオジェット燃料の生産一貫プロセス開発事業

 (株)IHI(東京都江東区)と神戸大学は、NEDOの委託事業である「バイオジェット燃料生産技術開発事業/一貫製造プロセスに関するパイロットスケール試験」において、品種改良した高速増殖型ボトリオコッカス(HGBb)を使った純バイオジェット燃料の生産一貫プロセスの開発の中間発表を行った。同プロジェクトは、サイアムセメントグループ(本社:バンコク)の協力の下、タイ国内でサラブリ県でパイロットスケール試験設備を作り、取り組む。

 同事業は微細藻類の中でも、炭化水素油分を50%以上含有する緑藻類ボトリオコッカスに着目した。多くの藻類が生産する油は脂肪酸だが、同種が生産する油は石油に近く、ガソリンの代替燃料として適している。一般的な種は非常に増殖が遅いが、増殖速度1000倍以上の高速増殖型(HGBb)を用いて、熱帯のタイにおいて、要素技術を活用した開放型培養池を使って培養する。2020年度末までに、純バイオジェット燃料(ASTM D7566規格準拠)を20L/d以上、プロセス全体での安定稼働延べ300d/年以上での製造技術確立を実現することを目標としている。

(パイロットスケール大規模培養施設(タイ サラブリ県))

 1.5haのパイロットスケール設備が完成し、大規模培養を開始、屋外でも大規模に育成可能な培養プロセス、屋外の簡易な培養池で、雨天時や他生物の混合などにも影響されずに培養させる工業的システム、培養水の再生利用や太陽エネルギーを利用する乾燥プロセスを開発、検証中だ。また、燃料改質条件を確定、ASTM認証用サンプルを製作し、認証に向けて調整を進める。(ASTM:世界最大規模の標準化団体ASTM Internationalが策定・発行する規格)また、HGBbの生態系における環境影響に問題ないことなども確認し、今後は、より高効率な工業化のための課題の抽出とその対策を検討し、安定的な長期連続運転や製造コストの低減、温室効果ガス削減技術などの実現可能性の検証も行う予定だ。

 欧米を中心にパームプランテーションの開拓が森林破壊の原因と指摘され、EUは輸送用の燃料に混ぜるパーム油の輸入を2030年までに事実上禁止する方針を決定した。マレーシアやインドネシアは強く反発しているが、日本においてもFIT制度におけるパーム関連などバイオマス燃料の利用に温室効果ガスの排出の視点を盛り込むよう訴える動きもある。熱帯気候環境は藻類培養に適しており、そういった地域での効率的大型設備の稼動は生産性を上げる上でも、今後も加速すると思われる。今後の動きに注目だ。

 

2019-11-02 | Posted in G&Bレポート, ニュース, 藻類バイオマス |