トピックス

バイオマス産業社会ネットワーク研究会、バイオマス白書2023を発行。昨年のバイオマス動向・課題解説(2023.4)

 NPO法人バイオマス産業社会ネットワークは、2022年のバイオマス利用の動向についてまとめた、「バイオマス白書2023」を発行した。トピックスとして、2022年のバイオマス発電の動向、バイオマスの産業用熱利用の推進を取りあげた他、国際的動向、国内の動向について解説している。

バイオマス白書2023の”はじめに”から引用

 2022年のトピックスの一つは、バイオマスの燃焼によるCO2排出をどう見るかについての議論であろう。欧州議会において再生可能エネルギー指令の改正案(REDIII)が可決された。ヨーロッパでは再生可能エネルギー目標達成に向け、導入しやすいバイオマスが増加し、森林への圧力を高めていた。欧州委員会のシンクタンク、JRCのレポートは1.2億トンの木材が出所不明、と指摘しており、違法伐採木材などの事例が環境団体から告発されていた。

 森林を伐採してバイオマスエネルギー利用することの是非は、森林のタイプや利用方法によっても大きく異なると考えられるが、2050年カーボンゼロにおいては、森林蓄積の増加が必須であることを考えれば、充分な検証が必要である。少なくとも、現状のカナダのように老齢林を伐採して木質ペレットとし、発電燃料として使うことには、大きな疑問がある。

 一方、カスケード利用された木質系廃棄物等が焼却処分されるのなら、化石燃料代替としてエネルギー利用を行う合理性はある。ただ、そうしたバイオマス量はそれほど多くはなく、過大な期待は禁物であろう。経済産業省は燃料種ごとのバイオマス発電燃料の温室効果ガス規定値を提示したが、輸入木質ペレットによる発電は、化石燃料による発電の30%以上を排出する。これは国際エネルギー機関(IEA)が提唱するパリ協定の目標達成のために必要とする電力一単位あたりの排出量(SDシナリオ)の2倍以上である。つまり輸入木質バイオマス発電では、パリ協定の目標を達成できないのである。

 今回、FIT燃料として認められた新規燃料も、発生した地域で使う方が輸送にかかるエネルギーとコストが節約される。持続可能なバイオマス資源には限りがあり、産業用熱やSAF(持続可能な航空燃料)等、他では代替が困難な用途にシフトすべきだと考えられる。欧州ではバイオマスの脱発電の動きが顕著になっており、日本でも検討すべきであろう。

詳しくは→http://www.npobin.net/hakusho/2023/

2023-04-14 | Posted in トピックス |