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IMO・第83回海洋環境保護委員会開催結果/国交省発表~国際海運におけるゼロエミッション燃料船の導入促進に向けた条約改正案に合意
令和7年4月7日~11日に、国際海事機関(IMO:International Maritime Organization)第83回海洋環境保護委員会が開催された。その開催結果について国土交通省より報告発表された。
「2050年頃までに国際海運からの温室効果ガス(GHG)の排出ゼロ」という国際目標の実現に向けて、日本が欧州と共同提案した、1.船舶の使用燃料を段階的にGHG排出量の少ない代替燃料に転換する制度、2.ゼロエミッション燃料船の導入に経済的インセンティブを与える制度を含む条約改正案を基に交渉が進められ、今次会合で基本合意された。この新たな国際的な枠組みが発効すれば、代替燃料の供給に向けた取り組みの加速、日本が開発を進めているゼロエミッション燃料船等の技術の優位性が発揮され、海事産業の国際競争力強化が期待される。その他、海洋汚染防止等のための船舶の環境対策が議論された。
今次会合の主な審議結果は以下のとおり
1.国際海運からのGHG削減のための新たな対策
2023年7月、IMOは、「2023 IMO GHG削減戦略」を採択し、国際海運からのGHG削減目標として「2050年頃までにGHG排出ゼロ」等を掲げ、その実現のための新たな国際制度の導入に向けた交渉が行われてきた。今次会合では、燃料規制制度とゼロエミッション船等に対する経済的インセンティブ制度を含む海洋汚染防止(MARPOL)条約改正案が基本合意(承認)された。条約改正案は、本年10月予定の会合で採択の審議が行われ、早ければ2027年3月に発効する。
(1)使用燃料のGHG強度を規制する制度
●船舶の使用燃料のGHG強度(エネルギー当たりのGHG排出量)を規制し、その規制値を2050年に向けて段階的に強化していく制度が合意された。 ●日本が欧州とともに共同提案したものであり、この制度によって使用燃料が重油からGHG排出量の少ない代替燃料へと転換が進み、国際海運からのGHG排出量の確実な削減が期待される。
(2)ゼロエミッション燃料船の導入促進制度
●使用した燃料のGHG強度が基準値を満たさなかった船舶から支払われる負担金により、IMOに国際基金を設置し、同基金からゼロエミッション燃料船等のGHG強度の低い燃料を使用する船舶に報奨金を支給し、早期の燃料転換にインセンティブを与える制度が合意された。
●燃料のコスト優位性がある規制値ぎりぎりの船舶に対して、報奨金によりゼロエミッション燃料船がコスト競争力を確保できるようにするため、我が国が従来から導入を主導してきたものであり、この制度によって代替燃料の供給に向けた世界的な取り組みの加速、ゼロエミッション燃料船の建造、運航の早期拡大が期待される。
2.その他
●GHG排出削減の観点から、バイオ燃料混合比が高い船舶用燃料のニーズが向上していることを受け、従来の重油燃料の補給(バンカリング)船で輸送・補給可能なバイオ燃料の混合比を高めるための対策をとりまとめたガイダンスが策定された。
●船体に付着した有害水生生物の越境移動の防止の観点から、船体の水中洗浄の方法や水中洗浄装置の性能基準等を定めた「船体の水中洗浄に関するガイダンス」が策定された。
●新たな議題として以下の事項が合意され、今後検討が行われることになった。
・船舶再資源化香港条約(シップ・リサイクル条約)の実施に係る経験蓄積期間の設置及び当該期間に得られた知見、課題等を踏まえた改善策の検討
・船体に付着した生物の越境移動を防止する船体付着生物管理に係る法的枠組みの検討
・アンモニアや水素を燃料とするエンジンのNOx試験手法の検討(NOxテクニカルコードの改正)
・アンモニア燃料船から発生するアンモニア排水の管理に関するガイドラインの検討
詳しくは、→https://www.mlit.go.jp/report/press/kaiji07_hh_000367.html →https://www.imo.org/en/MediaCentre/PressBriefings/pages/IMO-approves-netzero-regulations.aspx