研究情報
NEDO、大成建設、埼玉大等研究G、燃料物質の油を細胞外生産する微細藻類の作製に成功。世界初(2023.4)
NEDOの「カーボンリサイクル実現を加速するバイオ由来製品生産技術の開発」プロジェクトで大成建設(株)、埼玉大学、中部大学、かずさDNA研究所は、外来遺伝子を導入することなく、燃料物質である“油”を細胞外に生産する微細藻類の作製に世界で初めて成功した。微細藻類の一種であるシアノバクテリアSynechococcus elongatus PCC 7942株に対して特定遺伝子の発現を抑制・強化することにより、細胞内の燃料物質である遊離脂肪酸(FFA:Free Fatty Acid)を効率的に細胞外に生産することを実現した。
自然界に生息する微細藻類の中には、油脂などの燃料物質を細胞内に生産・蓄積できる細胞内油脂生産藻類が存在する。この燃料物質は、ジェット燃料やディーゼル燃料の原料として利用できるため、こうした微細藻類を用いたバイオ燃料生産に関する研究が世界的に進められている。従来、藻類バイオ燃料の製造では、培養した微細藻類を回収・乾燥させた後、細胞内に蓄積された燃料物質を有機溶媒などで抽出していた(図1)。しかし、この工程では製造に係る消費エネルギー全体の50%以上を占めており、実用化に向けて消費エネルギーの低減が重要な課題だった。
これらの課題を解決し、省エネルギー化を図る手段として、細胞外に燃料物質を生産させる遺伝子改変手法がある。従来の研究では、大腸菌などの外来遺伝子を導入して生産を試みていたが、遺伝子組み換え生物の工業利用には、環境中への拡散防止に係る規制(カルタヘナ法)にのっとり、必要な設備の導入や厳密な運転管理が必要だ。
今回作製した藻類の特長として、外来遺伝子を含まない非組み換え生物であることに加え、FFA生産能力の強化と生産されたFFAを速やかに細胞外に放出させる機能の向上により、燃料物質であるFFAを容易に回収できることが挙げられる。また、培養した藻類を継続的に燃料生産に活用できるため、工業利用時の製造や運用に係る消費エネルギーとコストの軽減が期待できる。
詳しくは、→https://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_101632.html