トピックス,エネルギー編
住友林業とレンゴー、木質由来バイオエタノール生産に向け、基本合意。SAFに建築廃材活用(2025.4)
住友林業㈱とレンゴー㈱は、木質由来のバイオエタノールの生産に関して基本合意書を締結した。住友林業の住宅建設現場で出る木くずなどの建築廃材を使って持続可能な航空燃料SAFの原料になるバイオエタノールを生産する。石油代替原料として需要が高まる木質バイオエタノールの量産技術の早期確立を目指す。
■協業内容
今後両社は協議を進め、2025年12月を目途に共同出資会社を設立する予定。2027年までに年間2万kLの商用生産を目指す。製造したバイオエタノールは燃料事業者へ販売し、SAFに転換され航空燃料として使用される。
バイオエタノールの製造にはレンゴーの子会社でバイオマス化学品の研究・開発をする㈱Biomaterial in Tokyo(福岡県大野城市)の技術を用いる。製造拠点はレンゴーの子会社で包装用紙の製造や廃棄物のリサイクルをする大興製紙㈱(静岡県富士市)の本社工場。住友林業は静岡県周辺の自社住宅建設現場の建築廃材を集め、CORSIA認証適格原料として供給する。また、当社は製造過程で出るリグニン成分を使って住宅用塗料等の材料の生産を検討し、木質資源を余すことなく利用するビジネスモデルを構築する考えだ。
■背景
地球温暖化対策としてCO2排出量の削減は世界が抱える喫緊の課題である。国際航空分野では国際民間航空機関(ICAO)や国際航空業界団体(IATA)が2050年までにCO2排出量を実質ゼロにする目標を採択した。SAFは従来の石油由来ジェット燃料に比べ航空機のCO2排出量を約7~8割抑制でき、最もCO2排出削減効果が高い手段として需要が拡大している。一方で2050年にカーボンニュートラルを達成するには4.5億kLのSAFが必要と推計されているのに対し、2022年時点の供給量は約30万kL(必要量の0.07%)に留まっている。日本政府も2030年から国内航空会社の使用燃料の1割をSAFに置き換える目標を掲げ、経済産業省は同年のSAFの国内需要量を172万kLと試算している。国内外でSAFの導入・普及が予想され供給量が不足する中、国産SAFの開発・製造が急務である。
足元では廃食油やトウモロコシ、サトウキビを原料にSAFを製造する技術が確立しているものの、世界的な需要増大により原料の供給不足や食糧との競合が課題である。食糧と競合しない木材でバイオエタノールを商用生産できれば、カーボンニュートラルな木材の活用が進みCO2排出量を削減できるだけでなく原料の多様化につながる。
住友林業は木材成分のバイオマス化学品や燃料としての可能性に着目し、2024年1月に新事業開発部バイオリファイナリー推進室を発足した。バイオリファイナリー事業の立ち上げに向けて技術開発やビジネスモデルの検証をしている。今回のバイオエタノールの製造プロジェクトでは量産技術を早期に確立し、化石燃料からバイオ燃料への転換を促してCO2排出量の削減と社会の脱炭素化に貢献する。
住友林業グループは森林経営から木材建材の製造・流通、戸建住宅・中大規模木造建築の請負や不動産開発、木質バイオマス発電まで「木」を軸とした事業をグローバルに展開している。2030年までの長期ビジョン「Mission TREEING 2030」では住友林業のバリューチェーン「ウッドサイクル」を回すことで、森林のCO2吸収量を増やし、木造建築の普及で炭素を長期にわたり固定し、自社のみならず社会全体の脱炭素に貢献することを目指している。バイオリファイナリー事業を通じて木質バイオマス資源の可能性を最大限に引き出し、CO2排出量を削減し炭素固定量を増やし「ウッドサイクル」を加速・推進する。
詳しくは、→https://sfc.jp/information/news/2025/2025-04-23.html