研究情報
理研、油脂合成に必要な葉緑体の酵素発見。代謝改変技術で「バイオものづくり」応用に期待(2024.8)
理化学研究所(理研)環境資源科学研究センター 植物脂質研究チーム内研究チームは、植物の種子において油脂の合成に必要な酵素を明らかにした。この酵素は細胞中の葉緑体に存在し、油脂が合成される小胞体に必要な物質を供給している可能性が示された。
本研究成果により、光合成を行う葉緑体から、油脂を蓄積する小胞体への代謝の流れがより深く理解されるとともに、代謝改変技術への応用を経て、環境中のCO2を植物体内で有用な油に変換して活用する「バイオものづくり」に貢献することが期待できる。
油脂合成の原料である脂肪酸は、光合成を行う葉緑体において合成されるが、油脂の合成は小胞体で起こる。しかしながら、葉緑体の脂肪酸がどのように小胞体の油脂合成に供給されるかについては不明な点が多く残されている。
研究チームは2023年、葉緑体と小胞体が近接する場所で働く一対の酵素LPPが種子において葉緑体から小胞体への油脂合成の制御に関わることを明らかにした。LPPはホスファチジン酸(PA)という脂質前駆体を代謝する酵素であるが、葉緑体においてPAを供給する酵素の実態は不明だった。今回、研究チームはモデル植物のシロイヌナズナを用いて、葉において葉緑体膜の合成と光合成機能に必要と考えられていた酵素LPAT1が、種子では小胞体の油脂合成に必要であることを発見した。
この研究成果により、発達中の種子において葉緑体から小胞体への油脂合成に関わる新しい代謝経路の存在が示唆され、今後こうした代謝経路を人為的に改変することで、バイオ燃料などをより効率的に生産する技術の開発に貢献することが期待される。
詳しくは、→https://www.riken.jp/press/2024/20240822_2/index.html