トピックス,エネルギー編
商船三井と三菱造船、液化CO2・メタノール兼用輸送船の基本設計承認(AiP)世界初の取得。(2025.6)
㈱商船三井と三菱重工グループの三菱造船㈱は、共同で開発している液化CO2・メタノール兼用輸送船についてコンセプトスタディを実施し、このほど一般財団法人日本海事協会部(NK)から基本設計承認(Approval in Principle : AiP)を取得した。同船でのAiP取得は世界初となる。

液化CO2・メタノール兼用輸送船 運航イメージ
CO2を燃料や化学製品に転換する技術は、CO2を分離、回収、利用、貯留するCCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)におけるCO2の利用法として注目されている。その一つに、回収したCO2を原料として合成メタノールを製造するサプライチェーンの実現に向けた検討が進められており、合成メタノールは海運業界の脱炭素化に貢献する船舶燃料の一つとしても期待されている。
今回、AiPを取得した本船は、低圧仕様の液化CO2(LCO2)輸送船をベースにしており、往路で原料のCO2、復路で合成メタノールの輸送を目指すものである。それぞれに専用船を用いた場合、片航路は空荷での運航になるが、兼用化が実現すれば空荷での運航がなくなり、全体の輸送効率が高まることが期待される。商船三井と三菱造船は、今回のコンセプトスタディで得られた知見や技術課題を踏まえて開発を進め、サプライチェーンの関連企業との協働などを経て、本船の製品化を目指す。
商船三井グループは、2024年9月に北米・南米・豪州で合成燃料/合成メタノールの開発・生産・輸送プロジェクトを開発する米国のHIF Global LLCに出資参画するなど、合成燃料/合成メタノールおよびCO2のサプライチェーン構築を推進している。今回の取り組みは、そのようなサプライチェーン全体の経済性を高め、その実現に大きく寄与するものとなる。
三菱重工グループは、エナジートランジションの事業強化に戦略的に取り組んでいる。その一翼を担う三菱造船は、従来からのものづくりを主体とした造船に加え、造船を基盤とした海事エンジニアリング技術で国内外の海事産業の発展に貢献することを目指しており、今回の取り組みもその一環。また、今回の協業は、三菱重工グループが推進するパートナリングの一例でもある。