G&Bレポート
環境省が進める「バイオプラスチック導入ロードマップ検討会」静脈システム管理と一体で 座長に東北大・吉岡教授(2020.11.22)
プラスチック製レジ袋の有料化義務化が、環境省、経済産業省主導のもと2020年7月から始まった。その中で、バイオマスプラスチック配合率が25%以上、海洋分解性で相応の機能が得られたものについては、有料化の対象から除外され、義務化施行に向けた広報、キャンペーンなどの中でクローズアップされ、バイオプラスチックという語に対する一般市民の認知度は高まっている。
また、今さらというかもしれないが、バイオプラスチックとは、バイオマスプラスチックと生分解性プラスチックを総称したものだ。似て非なるものだが、両方の性質をもつものもある。メディアにおいても用語が混同していることがよくあり、この関係を整理したものが、下記の環境省の資料だ。国際レベルで定義されている。詳細は、日本バイオプラスチック協会ホームページ参照。 →http://www.jbpaweb.net/
(環境省「バイオプラスチック導入ロードマップ検討会」資料より)
2019年5月に策定された「プラスチック資源循環戦略」では、プラスチックの資源循環を総合的に推進するため、基本原則として、「3R+Renewable」を掲げ、重点戦略の1つとして、用途や素材等にきめ細かく対応した「バイオプラスチック導入ロードマップ」を策定し、静脈システム管理と一体となって導入を進めていくとされた。2030年までに、バイオマスプラスチックを約 200万トン導入するよう目指すことが掲げられている。
http://www.env.go.jp/recycle/mat052215_1.pdf
こういった背景の中、2020年5月、環境省において、「バイオプラスチック導入ロードマップ検討会」が設置され、導入に向けた議論が始まった。環境省は導入の方向性整理論点として、
●環境・エシカル的側面
●生分解性プラスチックの分解機能の評価を通じた適切な発揮場面
●リサイクル調和性
等を念頭に、導入に向けた施策、国民各界各層の理解と連携協働の進め方を盛り込む考えだ。「ロードマップは、今年度中に取りまとめたいと考えています」(環境省 環境再生・資源循環局 リサイクル推進室)
同検討会の座長は、東北大学大学院環境科学研究科の吉岡教授が務める。同教授は、2020年9月、環境省と環境再生保全機構が公募を発表した2021年度の戦略型研究課題のひとつの「プラスチックの持続可能な資源循環と海洋流出制御に向けたシステム構築に関する総合的研究」(S‐19)のプロジェクトリーダーも務めている。
(環境再生保全機構ホームページより)
上記は、研究の目指すプラスチック資源循環の研究の姿であるが、個別目標として下記を掲げている。この研究は2021年度から5年間かけて実施する予定だ。
●「+Renewable」を実現するバイオプラスチックの導入推進へ向けた学術基盤の確立
●プラスチック循環システム構築のための新しい循環技術の開発・政策提示
●プラスチックの3R プラスと排出抑制に係る社会システム政策パッケージの提示
●プラスチックの海洋流出の実態把握と制御
●海洋プラスチックごみによる追加的な汚染をゼロにまで削減する(大阪ブルー・オーシャ ン・ビジョン)ための社会システム構築への貢献
https://www.erca.go.jp/suishinhi/koubo/r03_koubo_2.html
http://www.che.tohoku.ac.jp/~env/
この研究の考え方については、10月27日開催された第10回バイオマス製品普及推進功績賞表彰式の記念講演会においても発表された。→https://www.jora.jp/jsbi/jsbi_award/
2020年11月17日、第3回検討会がオンラインで実施された。ロードマップ案が提案され、導入に向けた国が支援する施策や課題などが示され、議論された。
1)利用促進面では、「バイオプラスチック導入事例集」や「バイオプラスチック導入目標集」の作成、またクリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンス(CLOMA)やプラスチック・スマートのプラットフォームを活用した企業間のビジネスマッチングの促進の他、グリーン購入法等に基づく国・地方自治体による率先的な公共調達、バイオプラスチックの利用が促進される公正・公平なリサイクルの仕組みを検討する。
2)消費者への訴求・普及啓発面では、企業等が導入するバイオプラスチックが、消費者等に対して環境負荷低減効果や持続可能性について表示等で訴求できるよう、認証の合理化や新たな認証の仕組みの構築について関係者と連携し検討する。認証においては、原料生産から製造における持続可能性について、バイオマス燃料の持続可能性に関する検討状況も参考にしつつ、確認方法を検討する。
3)研究開発・生産体制の整備面では、バイオプラスチックの高機能化、低コスト化、原料の多様化、リサイクル技術の高度化、海洋環境含む自然環境等での生分解機能の向上等に係る研究・開発・実証事業を強力に支援する。とりわけ、国内バイオマス利用、国内でのバイオプラスチック製造を重点的に支援する。
4)製品領域毎の個別施策として、次の製品には、バイオプラスチック導入に向けた支援等を実施する。
●プラスチック製買物袋
●可燃ごみ用収集袋、堆肥化・バイオガス化等に用いる生ごみ用収集袋
●肥料に用いる被覆材、漁具等水産用生産資材
http://www.env.go.jp/recycle/post_58.html
検討会では、地球環境対策で先行するEUの情勢についても注視する。2018年1月に発表されたEUプラスチック戦略では、バイオマスプラスチック(EUではバイオベースプラスチックと呼ばれる)、バイオマスを含むプラスチック生産の代替原料については、BDFにおけるパーム油の持続可能性議論の影響もあり、ライフサイクル評価の必要性が記されている。また、EUでは生分解性プラスチックが普及しており、コンポストも普及している。分解が起きる条件やリサイクル材の質や自然環境に与える影響を懸念しているが、その一方で、消費者に製品の正確な情報を提供するということに重点を当てており、コンポスト可能性および生分解性プラスチック定義に関する製品ラベリングの共通ルールおよびライフサイクル評価の促進をあげている。バイオマスプラスチックについては、環境負荷を低減するという観点で、リサイクル率が高い製品や使用期間が長い耐久消費財への導入促進にも触れている。EU は2018年5 月に使い捨てプラスチックの規制案を発表、この際にストロー禁止が大きく取りあげられ、世界的なプラスチック使用削減に関する機運が高まった。
ロードマップ案の研究開発・生産体制の部分と関連するが、環境省は2021年度予算にバイオプラスチック関連では次の実証事業の申請を行った。(以下、環境省ホームページより)
1)脱炭素社会構築のための資源循環高度化設備導入促進事業
国内のバイオプラスチックの大部分は海外からの輸入で賄われているという状況がある。国内におけるプラスチック循環利用の高度化・従来の化石資源由来プラスチックを代替する再生可能資源由来素材(バイオマス・生分解プラスチック、セルロース等)の製造に係る省CO2型設備の導入を支援する。
2)脱炭素社会を支えるプラスチック等資源循環システム構築実証事業
バイオマス・生分解性プラスチック、紙、CNF等のプラスチック代替素材の省CO2型生産インフラ整備・技術実証を強力に支援し、製品プラスチック・容器包装や、海洋流出が懸念されるマイクロビーズ等の再生可能資源等への転換・社会実装化を推進する。
一連のプラスチックにおける戦略型研究、実証事業なども絡めながら、バイオプラスチック導入ロードマップをどのようにまとめていくか、そして日本の2050年CO2排出実質ゼロに向けた動きと合わせながら、プラスチック資源循環戦略をどう実現していくか、今後の動きに注目だ。