研究情報

イノカと東京海上G、藻場の再生と拡大へ共同研究開始。石垣市野底エリアで(2023.10)

 環境移送技術の㈱イノカ、東京海上アセットマネジメント㈱(TMAM)、東京海上ディーアール㈱(TdR)は、生物多様性の保全やCO2の吸収で脱炭素を推進する藻場の再生にむけた共同研究を開始すると発表した。

 第一弾として、沖縄県石垣市野底(のそこ)エリアにおいて、従来から自然保全活動を推進しているエコツアーふくみみならびに石垣市立野底小学校と協力し、石垣市野底エリアにおけるウミショウブの藻場の再生と研究を進めていく。

 具体的には、絶滅危惧種である海草ウミショウブをイノカのラボで飼育し、最適な生育環境や環境変化に強いウミショウブの研究などを行う。その後、実際の海へと移植し藻場を再生させ、生物多様性の回復と脱炭素の実現を目指す。同時にブルーカーボンや生物多様性クレジットの取得も目指した取組みを行う。

 海洋国家である日本において藻場を育む海藻・海草は、GHG吸収による脱炭素を進めるだけでなく、日本の伝統的な食文化や健康産業において重要な役割を果たし、更に沿岸漁業の対象となる魚種の40パーセント近い種類が藻場・干潟に依存して生存しているなど生物多様性の観点でもとても重要な存在である。しかし、近年藻場は深刻な危機に直面している。特に、環境変化や人間による環境汚染等によって、海藻が激減する「磯焼け」と呼ばれる現象が深刻な問題となっている。磯焼けが進むことで、私たちが食用としているノリや昆布などが収穫できなくなり、沿岸部の生物多様性が失われ、さらにGHGの吸収源が著しく減少する問題が発生している。

ウミガメの食害によってウミショウブが減少している

●今回の共同研究の内容
 石垣市野底崎の南側、多良間の浜から吹通川の河口周辺は日本における海草ウミショウブの生息地の北限地としてウミショウブの群落が広がり、夏の開花時期には白い雄花が海面を埋め尽くす美しい光景が見られる貴重なエリアだった。しかし、近年では南西諸島を含む熱帯・亜熱帯の海に生息する絶滅危惧種のアオウミガメが増加し、希少な海草の食害を引き起こすなど新たな問題が発生しており、ウミショウブの群生地が消滅の危機に瀕している。

 そこで、テクノロジーを利活用したサステナビリティに資する新たな取組みとして、3社は、長年石垣市で環境保全や環境教育を推進しているエコツアーふくみみならびに野底小学校と協力し、藻場の再生による脱炭素の推進および生物多様性の保全、再生を目的にした共同研究を開始した。

 3社はまずイノカの環境移送技術を用いて、ウミショウブを陸上で育成することで、ウミショウブの生態や最適な藻場再生のための研究を行う。その後実際の海への移植、モニタリングを実施し、その成果を陸上での育成にフィードバックすることで、より効果的な藻場再生の研究を行う。
 イノカは今回の研究を通じて、海藻・海草の陸上研究から実際のフィールドへの適用ノウハウを獲得でき、今後全国各地の海における海藻・海草を活用した生物多様性保全や再生へと応用することが可能になる。
 また、TMAMとイノカは藻場の生物多様性保全や二酸化炭素の吸収量の計測などを実施し、現地のモニタリングをベースにブルーカーボンや近年注目を集める生物多様性クレジットの生成を目指す。

 TdRは地元協力者と連携し、今回の活動エリアを環境省が推進する自然共生サイトへ登録することを目指す。これにより環境省を通じて国際データベースに登録され、COP15のグローバルターゲット(昆明・モントリオール2030年目標)に貢献することになる。また、これら実際のサイトにおける生物多様性保全活動で得られた成果や知見を、自社の気候変動・自然資本領域におけるコンサルティング事業に応用していく。

●本プロジェクトの枠組み                                                                

 イノカでは、これまで産業インパクトが少なく注目を集めていなかった地域固有の海藻・海草の飼育実験系を開発し、子ども達や企業・研究者が地域特有の海藻・海草をどのように保全・活用するか研究するためのプラットフォームをご提供する。実際に、海藻・海草研究プラットフォームを活用しながら、地域の生物多様性保全に活用したい企業や自治体を募集する。

①イノカでの海藻・海草を育てるためのデータ収集・飼育系の検討 / 検証
②地域の子ども達に飼育系を配布し、飼育のデータを取る
③地域の海に育てた海藻・海草を戻すだけではなく、新しい活用方法を検討する

詳しくは、→https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000043.000047217.html

2023-10-24 | Posted in 研究情報 |