研究情報
オランダ・BIOTTEKプロジェクト、マイクロプラ対策で新しいバイオポリエステル開発目指す(2023.10)
オランダの樹脂メーカーのSenbis Polymer Innovations BVとオランダの大学および研究機関のコンソーシアムによるBIOTTEK プロジェクトは、新しい生分解性ポリエステルの開発に 660 万ユーロの投資を計画している。また、このコンソーシアムは、欧州公正移行基金 (JTF) を通じて 330 万ユーロが助成されることとなった。
このプロジェクトの目的は、アパレル繊維によって引き起こされる膨大なマイクロプラスチック汚染の解決策を見つけること。毎年 5,000 万トンを超える繊維がアパレル用に生産されており、そのうち 60% 以上がポリエステル(PET)となっている。この量のうち推定 50万トンが、繊維の脱落などにより毎年環境中に失われている。生分解性の代替品を使用すると、長期にわたるマイクロプラスチックの蓄積を回避できる。ただし、ポリマーと繊維を設計する際には、多くの技術的および経済的課題を考慮する必要がある。
SenbisのマネージングディレクターのGerard Nijhoving氏は、このプロジェクトの動機について次のように説明している。「われわれは長年にわたり、生分解性ポリマーから繊維やフィラメントを開発してきた。私たちは何が可能であり、何が不可能であるかを知っている。生分解性ポリマーでは、高い機械的特性と熱的特性を達成することがしばしば困難である。工業用糸や織物繊維の場合、多くの場合問題になる。私たちは、この分野のブレークスルーに必要な技術的要件と経済的要件の両方を満たす、繊維用途に使用できる新しいタイプの生分解性ポリエステルが産業界に必要であると考えている」
BIOTTEK プロジェクトでは、特定のバイオポリマーを生分解性にするだけでなく、分子設計と物理的特性を検討して溶融紡糸可能にし、高性能を達成するものについて情報が分析され、研究されている。繊維の溶融紡糸などによる応用試験を通じて評価され新しいバイオポリエステルの開発が進められる。この手法は、繊維に特化した生分解性ポリマーを開発するためのユニークなアプローチである。また、このプロジェクトのもう一つのユニークな要素は、人工知能(AI)を活用して開発をスピードアップし、分子設計に新たな提案を提供できることである。