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経産省、CCS 長期ロードマップ検討会の最終とりまとめ。2030年、年間CO2地下貯留最大1200万トンへ(2023.1)
経済産業省は、1月26日、第6回 CCS 長期ロードマップ検討会 (CCS 事業コスト・実施スキーム検討ワーキンググループ・CCS 事業・国内法検討ワ ーキンググループ合同開催)をオンラインで開催し、CCS 長期ロードマップ検討会最終のとりまとめを行った。以下はその概要の一部。
●CCS長期ロードマップの目標は、2050 年時点で年間約 1.2~2.4 億 t の CO2 貯留を可能とすることを目安に、2030 年までの事業開始に向けた事業環境を整備し(コスト低減、国民理解、海外 CCS 推進、法整備)、2030 年以降に本格的に CCS 事業を展開することとされた。
●世界動向としては、昨年から、CCS を取り巻く世界的な情勢は、懐疑論から政策導入へ転換している。米国では超党派でのインフラ投資法に加え、2022 年 8 月には 10 年間で約 50 兆円程度の国による CCS を含む対策(インフレ削減法)を定め、「空前のCCS ブーム」とも言われ、国際世論に大きな影響を与えている。中国では、グローバル CCS インスティチュートによれば、2050 年に年間貯留量 20 億 t を目標とし、国内開発だけでなく他国との関係構築を推進するなど、CCS の推進に転換している。ドイツは CCUS に否定的であったが、昨年末、CCUS を容認する動きに転じ、国内政策の整備に着手した。そのほかの国でも CCS 政策導入に向けた動きが起きており、CO2 貯留地を巡る「大競争時代」が到来している。
●政府の具体的なアクションとしては、
① モデル性のある先進的 CCS 事業の支援
将来の CCS 事業の普及・拡大に向けて横展開可能なビジネスモデルを確立するため、2030 年までの事業開始を目標とし事業者主導による「先進的 CCS事業」を選定し、国により集中的に支援する。具体的には、CO2 の回収源、輸送方法、CO2 貯留地域の組み合わせが異なる 3~5 プロジェクトから支援を開始し、多様な CCS 事業モデルの確立を目指すとともに、2030 年までに年間貯留量 600~1,200 万 t の確保に目途を付けることを目指す。
② CCS 適地の開発促進/地質構造調査
国はこれまで石油・天然ガス開発を目的とした地質構造調査を実施してきたが、2022 年に JOGMEC の CCS 業務が追加されたことを受け、2023 年度からは CCS を目的とした地質構造調査も実施する予定である。今後、CCS 適地調査の計画を検討するとともに、調査データの民間事業者等への貸し出しをJOGMEC が実施する。
CO2 の貯留に適した地層の所在を推定するのに活用可能な地質構造のデータは、これまで主に石油・天然ガス探鉱の促進を目的に取得されてきたものが利用されており、これまでの調査において、11 地点で計 160 億トンの貯留層があると推定した。当面は、これらの貯留層について民間事業者による経済性等の分析・評価が行われ、試掘等の開発行為につながることが期待される。一方で、石油・天然ガス探鉱の促進を目的に取得されてきたデータは沿岸地域のデータが乏しくCO2 排出源との距離が近く輸送コストの低減を期待できる沿岸地域において、CO2 の貯留に適した地層の所在の推定や民間事業者による開発行為をすることは困難な状況となっている。このため、既存データのある地域での CO2 の貯留に適した地層の所在の推定を更に進めつつ、今後は、沿岸地域の地質構造調査についても検討を進める。
③ CCS 事業の持続性に関する検討
当面は、CCS 事業の開始に向けた CAPEX 支援を行うものの、2030 年から開始することになる稼働時支援については、先行する英国等の支援にかかる最新の知見を参考にしつつ、CCS の事業モデルを検討し、継続的に政府支援の在り方を検討し、見直しを実施する。また、コスト低減の状況、事業環境の整備の状況を踏まえつつ、「先進的CCS 事業」後の CCS 事業について CCS の持続性の確保の観点から検討を行う。
詳しくは、→https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/ccs_choki_roadmap/006.html