トピックス,マテリアル他編

東芝G、COを生成するCO2電解装置の年間150トン規模実証運転完了。水素不要で低温反応で生成(2025.6)

 東芝エネルギーシステムズ㈱(東芝ESS)および㈱東芝は、工場などから排出される二酸化炭素(CO2)を電気分解して一酸化炭素(CO)に変換し、合成燃料や化学品など価値ある資源に再生するP2C(Power to Chemicals)の中核となるCO2電解技術について、社会実装規模と想定する年間150トンのCOを生成できるCO2電解装置「C2One」のプロトタイプ機を開発した。本プロトタイプ機を用いた実証運転を昨年11月から東芝ESSの浜川崎工場(神奈川県川崎市)で行ってきたが、このたび社会実装に向けて必要となるデータを得て、完了した。

 脱炭素社会の実現に向けては、工場などの産業部門におけるCO2排出量の削減が不可欠である。特にCO2排出量が多い産業における削減は喫緊の課題となっており、それに対応できる技術として、再生可能エネルギーを用いてCO2を資源化するP2Cへの期待が高まっている。P2Cプロセスのうち、CO2の分離回収技術、COと水素を反応させるFT合成技術はすでに実用化されている。しかし、CO2資源化サイクルの完成に必要なCO2をCOに還元する技術はまだ開発中であり、各国で実用化に向けた取り組みが進められている。

 東芝は、人工光合成技術を用いて、常温常圧に近い条件では水に溶けにくいCO2を気体状態のままCOへ直接電解できる三相界面制御触媒技術を開発し、2019年には世界最高レベルの変換速度でCO2からCOを生成することに成功した。一般的なCO2還元技術では、還元材料に大量の水素が必要となることに加え、CO生成に850℃程度の高温条件が必要となるため取り扱いが難しく、また生成コストが高くなる。対して東芝のCO2電解技術では100℃未満・低圧(0.2MPa)という低温・低圧条件での反応が可能であり、また還元材料として水素も不要となることから、取り扱いが容易で、より安全かつ低コストなCO生成が期待できる。

 さらにCO2電解装置の中核部品であるセルスタックは、東芝ESSがこれまで製造してきた純水素燃料電池システム向けのスタックと構造が似ており、既存の製造技術と製造ラインの一部を活用することができる。東芝独自のCO2電解技術をもとに、東芝ESSがこれまで培ってきたセルスタック製造技術を生かし、今般、社会実装規模のCO2電解装置を開発して実証運転を行った。

 開発した「C2One」のプロトタイプ機は年間約250トンのCO2を処理でき、年間150トンのCOを生成可能な設計とした。これは持続可能な航空燃料(SAF)で換算すると1BPD注3程度が製造できるCO量となる。本プロトタイプ機を用いてCO2電解装置としての安全な動作に加え、想定通りのCOの生成ができるか、需要に応じた負荷が変動する運転に対応できるか、などの点を実証運転にて確認した。これらの実証を通じ、CO2電解装置の社会実装に向けた多くの知見を得て、評価を完了した。

 東芝グループは、今般の実証の結果を踏まえ、同規模の「C2One」の早期の社会実装を目指すとともに、さらなる大規模化を目指した開発も進め、P2Cの早期実用化を進める考えだ。

詳しくは、→https://www.global.toshiba/jp/news/energy/2025/06/news-20250624-01.html

2025-06-26 | Posted in トピックス, マテリアル他編 |