研究情報
ロート製薬と環境移送技術のイノカ、日やけ止め製剤のサンゴ成育への影響評価法を新確立。(2024.3)
ロート製薬㈱と㈱イノカ(東京都文京区)は、日やけ止め製剤がサンゴの成育に与える影響評価方法について検討を行った。本調査ではイノカ独自の環境移送技術を活用し、ロート製薬の「スキンアクア ネクスタ シールドセラムUVミルク」が、海洋生物の一種であるサンゴ2属3種を活用した結果でも、成育に影響を与える可能性が低いことを確認した。
<背景>
近年、日やけ止め製剤に配合されている特定の成分によるサンゴの死滅や海洋生物への影響が問題視されている。実際、一部の海外地域では有害指定化学物質を使用した日やけ止めの販売や使用、持ち込みが禁止されており、生物多様性保全の意識が高まりつつある。このような状況下、ロート製薬では、環境に配慮した製剤設計で日やけ止めを開発する等の企業努力を続けているものの、実際の化粧品製剤がどの程度サンゴに影響を与え得るのかに関する科学的な評価事例が少ないこと、またグローバルスタンダードとなるような評価系が構築されていないことを課題ととらえ、イノカと取組を進めてきた。
今回実験に使用し、2022年よりロート製薬が発売を開始した「スキンアクアネクスタ」シリーズは、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル(紫外線吸収剤)を配合せず、独自の考え方で環境配慮設計をした日やけ止め製品。そこで今回の研究では、イノカ社独自の環境移送技術?を活用した水槽内で、「スキンアクア ネクスタ シールドセラムUVミルク」がサンゴ成育へ与える影響評価を行った。
<研究方法>
評価対象としたサンゴは2種類のコモンサンゴ属および1種のミドリイシ属を用い、評価項目はCoralHealthChartによる健康状態観測、光合成推定値であるクロロフィル蛍光量の分析とした。また、評価濃度の設定にあたっては、一般的に人が1日で使用する日やけ止めは1.2g、使用した日やけ止めの少なくとも25%が水中での活動中に溶出することが指摘されている。そこで本研究では一度の海水浴で接触する海水の体積の総合が1㎥(1,000L)であると仮定し、その海水に溶出する日やけ止めの最大濃度100μg/Lを上限とし、評価を実施した。
<結果・考察>
結果として、「スキンアクア ネクスタ シールドセラムUVミルク」が、最大濃度である100µg/L以下の海水中濃度でも、コモンサンゴ属およびミドリイシ種の成育に影響しないことが確認された。また健康状態の観察では、飼育14日後でも全てのサンゴ種でサンゴの色やポリプの開口状態に影響がなかった(下写真)。これらは、健康状態 総合スコアとして示している。また光合成推定値であるクロロフィル蛍光量において、100µg/Lの濃度で14日後に影響しないことを確認した。
詳しくは、→https://www.rohto.co.jp/research/researchnews/technologyrelease/2024/0305_01/