研究情報

東大、海洋機構、産総研、JBPA等6者研究G、生分解性プラは深海でも分解を実証。(2024.1)

 東京大学、海洋研究開発機構(JAMSTEC)、群馬大学、製品評価技術基盤機構(NITE)、産業技術総合研究所(AIST)、日本バイオプラスチック協会(JBPA)は、様々な生分解性プラスチック(PLA・ポリ乳酸を除く)が、神奈川県の三崎沖(水深757 m)、静岡県の初島沖(水深855 m)、伊豆小笠原島弧海底火山付近の明神海丘(水深1,292m)、黒潮続流域の深海平原(水深5,503 m)、日本最東端の南鳥島沖(水深5,552 m)の全ての深海で、微生物により分解されることを世界で初めて明らかにした。
 生分解性プラスチック表面には無数の微生物がびっしりと付着し、時間と共にサンプル表面に粗い凸凹ができて、生分解が進行する様子が観察された。深海における生分解速度は、水深が深くなるにつれて遅くなるものの、全ての深海底で生分解されることも確認された。水深約1,000 mの深海底では、本研究で用いた生分解性プラスチックで作製したレジ袋は、3週間から2ヶ月間で生分解されることも計算により推定された。 今回、菌叢解析(16S rRNA遺伝子アンプリコンシーケンシング)およびメタゲノム解析により、深海から生分解性プラスチックを分解できる新たな分解微生物を多数発見することにも成功した。さらに、発見した分解微生物は、世界中のさまざまな海底堆積物にも生息していることが明らかになり、分解が実証された生分解性プラスチックは、世界中のいずれの深海でも分解されると考えられる。 本研究成果により、将来の海洋プラスチック汚染の抑制に貢献する優れた素材として、生分解性プラスチックの研究開発の進展が期待される。

 現在、世界中で年間約4億トンのプラスチックが生産され、毎年約800万トンのプラスチックごみが海洋に流出していると報告されている。私たちが普段使っているポリエチレンやポリプロピレンに代表される汎用プラスチックは、山、川、湖、海のいずれの環境においても分解しないプラスチックであり、現在、あらゆる環境下で微生物の働きによりCO2と水にまで完全に分解される「生分解性プラスチック」の開発が望まれている。
 これまでポリ乳酸や微生物産生ポリエステルなどを始めとする多くの生分解性プラスチックが開発され、コンポストでの生分解性および土壌、河川、湖、浅海域などにおける環境生分解性の評価が行われてきた。しかしながら、海洋プラスチックごみが最終的に行き着く深海環境において、生分解性プラスチックが本当に生分解されるのか、生分解性プラスチックを分解できる微生物が深海に存在しているのかについては、これまで誰も証明していなかった。
 本研究では、有人潜水調査船「しんかい6500」とフリーフォール型深海探査機「江戸っ子1号」を用いて、生分解性プラスチックと汎用プラスチックを深海に3ヶ月から14ヶ月間設置し、それらサンプルの重量や形状の変化、表面に付着した微生物の解析を行った。生分解性プラスチックとしては、微生物産生ポリエステル(PHA)やポリ乳酸を始めとする生分解性ポリエステルとセルロースアセテートを始めとする多糖類エステル誘導体を検討した。また同時に、浮遊プラスチックごみが多い東京湾に面した海洋研究開発機構の岸壁(神奈川県横須賀市、水深約5 m)にも同様のサンプルを設置し、生分解速度の比較も行った。 深海に設置したサンプルを3ヶ月から14ヶ月後に引き上げ、フィルムや射出成形体の重量と厚みの変化、表面に付着した分解微生物の解析を行った。その結果、汎用プラスチックとポリ乳酸は全く分解されないのに対し、ポリ乳酸を除く他の生分解性ポリエステルと多糖類エステル誘導体はいずれの深海底でも分解されることがわかった。

深海における生分解性プラスチックの分解微生物による生分解

詳しくは、→https://www.a.u-tokyo.ac.jp/topics/topics_20240126-1.html

2024-01-29 | Posted in 研究情報 |