G&Bレポート
nanotech 2019注目したCNF展示 丸住製紙の透明性、北越パルプオールセルロース等(2019.2.11)
nano tech 2019が、1月30日~2月1日 東京ビッグサイトで開催された。次世代のバイオマス素材として期待されるセルロースナノファイバー(CNF)に関連する出展者に密着した。
スギノマシンは、独自のウォータージェット技術で「セルロース・キチン・キトサン」を加工した、「超・極細繊維」バイオマスナノファイバー「BiNFi-s」を展示。低線熱膨張性、高弾性、透明性、生体適合性、抗菌性、生理機能改善効果、高強度、高アスペクト比、高比表面積、高粘性、高保形性、高親水性などの特長を持つ。営業部によると同製品は網目状の構造が、有効成分が水に流れ落ちにくい保有状態をつくるため、化粧品との相性がよいという。当面、最終製品価格が高いものがターゲットのようだ。また、同社は微粒化装置など製造機械も展示。材料資源が豊富な製紙会社を軸としたい考えだが、その戦略にどのように組み込むかが課題のようだ。
丸住製紙は独自の技術で、自社化学パルプをシングルナノまで微細化したセルロースナノファイバーを展示した。同社の製品は、解繊後の繊維幅が均一、また攪拌など機械的刺激によって、可逆的に粘度が変化する性質をもつ。業界では数社しか実現できていないという透明性、全光線透過率は99.4%というその高さが大きな特徴で、この分野を開拓したい考えだ。後述のモリマシナリーとの共同で事業展開を進めており、ブースを隣接させ、訪れた来場者には協業関係をアピールしていた。
モリマシナリーは、岡山県産ヒノキから製造したリグニンを含むリグノセルロースナノファイバーとパルプから製造したセルロースナノファイバーを展示した。木材,竹,穀物茎などは、植物体の強固材となっているリグニンを多く含んでいる。このリグニンは耐熱性や難燃性をもつことがわかっていたが、物性の安定性確保が難しかった。改質方法の開発が進んできており、建材や機器への利⽤を目指す。営業部によると普及にあたっては価格と物性が最大のハードルとのこと。丸住製紙との協業を進めながらどのように技術開発、用途開拓を行うかかが課題だ。
北越コーポレーションはセルロースだけで構築されたオールセルロースCNF強化材料を展示した。この強化材料は、原紙を薬品処理することによりCNFゲル(中間体)を生成。この処理によりセルロース繊維間のCNFネットワークが接着剤の役割を果たし、材料を強化している。曲げても割れることなく、その形状を保持でき、パンチング加工も可能だ。使用薬品の殆どは洗浄されており、バイオマス由来製品として活用が可能だ。古い歴史と実績をもつ天然セルロース由来のバルカナイズド・ファイバーは、優れた強度、耐久性、温かみのある質感により、広範囲に利用されているが、CNF強化材料研究を通してバルカナイズド・ファイバーを進化させた。
中越パルプ工業のnanoforest(ナノフォレスト)は、水の力を利用してパルプから取り出され、表面改質効果、乳化作用効果を発揮する両親媒性(親水性、疎水性)の特性を持つCNF。ブースでは同素材を用いたダーカ製卓球のラケット 「アルバ23」を展示した。ラケットの合板に特殊な技法を用いて、弾き出す力を生み出した。含侵法で木に反発力を持たせる新しい加工方法を用いており、(特許申請中)、木を硬くすることなく弾き出す力をつくり出す。また、竹から作ったCNFを利用した琴柱を使った琴を初展示。樹木から作るものと比べてプラスチックなどの樹脂との馴染み易く、竹素材そのものが硬いため樹脂と混ぜた時の強度を大きく高められるという。