研究情報

東大研究G、イネの栄養の吸収・利用効率を改善する遺伝子発見。低肥料栽培への利用可能性(2024.1)

 東京大学の研究グループは、イネ転写因子OsbZIP1遺伝子がイネの栄養利用、吸収効率を制御することを明らかにした。
 本研究では変異体を材料に用いた表現型解析、遺伝子発現解析を行ったことで、OsbZIP1変異体である88nでは肥料三要素である窒素とリン酸の利用、吸収効率が向上し、優れた初期生育を示すことが明らかになった。また88nは穂重が増加したことから、これらの結果はOsbZIP1遺伝子を利用した低肥料耐性品種の作出に貢献すると考えられる。
 ハーバーボッシュ法を用いた窒素肥料の作出には多量の化石燃料が消費される。またリン肥料の原料であるリン鉱石の埋蔵量には限りがあり、どちらもプラネタリーバウンダリーを大きく超えた地球環境問題となっている。加えて、地政学的なリスクから、肥料の原料の輸入が停滞し、肥料価格の高騰が起きている。これらの問題を解決した作物生産を行うためには、肥料要求量が低い品種の作出が望まれる。しかしこれまでに低肥料耐性を示す系統の探索が行われてきたが、その報告は多くなかった。
 上記の背景から、研究チームでは低肥料耐性品種の作出のための育種素材の探索を行った。具体的には低栄養条件で商業品種「ひとめぼれ」の変異体集団から、初期生育が優れた系統として88nを同定し、ポジショナルクローニングによって、その原因遺伝子がOsbZIP1であることを明らかにした。さらに88n変異体の低栄養応答を調べるため、東京大学が保有する誘導結合プラズマ分析装置(ICP-MS;注4)を用いた植物体の元素蓄積や、遺伝子発現解析、88nの穂の評価を行った。

osbzip1変異体では穂のサイズが増大する

詳しくは、→https://www.a.u-tokyo.ac.jp/topics/topics_20240112-1.html

2024-01-16 | Posted in 研究情報 |