研究情報
植物由来希少成分の微生物発酵生産に注力、石川県大発ファーメランタ、2億円資金調達。(2023.6)
ファーメランタ㈱(石川県野々市市)は、この度、Beyond Next Ventures㈱、Angel Bridge㈱、Plug and Play Japan㈱を引受先とする第三者割当増資を実施し、総額2億円の資金調達を行ったと発表した。合成生物学により植物由来の希少成分を微生物で発酵生産する実用化研究を加速させる。
人類はこれまで、健康増進や医薬品開発のために、天然化合物を有効活用してきた。特に、植物は生存競争による進化の過程で、多様で複雑な化合物(二次代謝産物)を生産する能力を獲得してきたことが知られている。しかしながら、農業による生産方法は、年単位の不安定な栽培に依存し、僅かな含有成分を抽出しなければならないため、植物由来の希少成分を工業的に生産するためには大きな障壁がある。一方、有用成分を微生物に発酵生産させることができれば、気候や栽培地域に依存せず日単位でスケーラブルな生産及び供給が可能になる。同社は、植物由来の有用成分を発酵生産することで次世代のサプライチェーンを構築することを通じて、人類及び地球の健康増進に貢献することを目指す。
詳しくは、→https://fermelanta.com/jp/posts/P7RsKI6q
NEDOは、ファーメランタ㈱の設立経緯、技術背景などについて、同時に発表した。
NEDOの「植物等の生物を用いた高機能品生産技術開発」の一環として石川県立大学は、神戸大学、産業技術総合研究所、千葉大学、理化学研究所などと共同で、2018年度に植物由来の希少化学物質を微生物発酵によって生産する技術を開発した。石川県立大学の南博道准教授は、この成果を基にファーメランタ㈱を設立し、このたび本技術の事業化に向けた取り組みを本格的に開始した。
本技術は合成生物学を利用しており、植物由来の化学物質を微生物内で、持続可能でスケーラブルかつ安価に生産する微生物生産プロセス技術だ。ファーメランタ㈱の独自技術である、遺伝子の発現バランスの調整による生産性の最適化やタンパク質の過剰発現による毒性に耐性を有する菌株などの技術と組み合わせ、20段階以上の生合成経路を細胞内に構築することで、実用生産の目安である培養液1リットル当たり1グラム以上の発酵生産が可能となる。今後ファーメランタは、基盤技術の強化を図り、その後の試作およびスケールアップフェーズへ展開し、2027年の事業化を目指す。
植物や微生物から抽出される物質中には希少で有用な成分が多く存在しているが、自然界での物質生産は供給が不安定でコストも高いなどの課題がある。特に農業による生産方法は、その植物の栽培に多大な時間がかかるとともに、栽培条件、環境などが限定されることから、工業的な生産には大きな障壁がある。これまでに遺伝子組み換え植物体や培養細胞を用いた大量生産の成功例はあるものの、普遍的な大量生産の方法は確立されていない。また、植物由来の希少成分を微生物で生産するには10~30種類の外来遺伝子を細胞に導入する必要があり、従来の技術では不可能であった。
NEDOは、2016年度から2021年度まで本事業で、植物や微生物の細胞が持つ物質生産能力を人工的に最大限引き出すための技術開発プロジェクトを推進してきた。
詳しくは、→https://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_101655.html