ニュース情報/政策関連

環境保護団体・T&E、科学者らはCOP30を前に”無制限な農作物由来バイオ燃料生産の危険”に関する書簡を世界の指導者らに送付したと公表(2025.11)

 2025年11月5日、ベルギー・ブリュッセルに本部をおく環境保護団体T&E(Transport&Environment)は、の世界中の科学界の100人以上のメンバーが、無制限のバイオ燃料生産の危険性について世界に警告を発していると発表した。

 来週、ブラジルのベレンで開幕するCOP30気候変動交渉に先立ち、「憂慮する科学者同盟」の代表を含む世界の科学界100名以上が、世界の指導者に対しバイオ燃料の危険な拡大を制限するよう求める書簡に署名した。

 この書簡は、ブラジルが、気候危機に対する国際社会の対応の主要な要素として、バイオ燃料消費の倍増を含む、いわゆる「持続可能な燃料」の使用を4倍にするという指導者たちの誓約に対する高レベルの支持を求めている中で出されたものである。

 しかし、多くの政府が主張するように、バイオ燃料は気候に優しい解決策とは程遠く、現在、バイオ燃料は、代替対象となる化石燃料よりも世界平均で16%多くの排出量を排出していることが明らかになっている。2030年までに、バイオ燃料は、代替対象となる化石燃料よりも年間70 MtCO2e多く排出すると予測されており、これは3,000万台のディーゼル車を新たに導入するのと同等の排出量である。

 この書簡はまた、バイオ燃料の拡大は世界で最も生物多様性に富む地域の一部に壊滅的な環境影響を及ぼし、希少な水資源を消費し、農業用水の流出につながると警告している。さらに、科学者たちは、バイオ燃料の使用量の増加は食料価格の上昇、食料価格の変動の激化、そして人間の消費カロリーの減少によって、世界的な飢餓を悪化させると警告している。

 バイオ燃料の無制限な使用を抑制することは前例がないわけではない。2020年、EUは従来型(第一世代)の作物由来バイオ燃料の輸送エネルギーにおける割合を7%に制限することに合意した。

 ブラジルやインドネシアなどのバイオ燃料生産国では、地元のNGOが、栽培上限の設定、トレーサビリティの向上、コミュニティベースのガバナンスと分散型エネルギーへの投資など、悪影響を管理するための総合的なアプローチを求めている。

 ブラジルのバイオ燃料推進は、バイオ燃料が世界的な商品として危険な復活を遂げていることを反映しており、大規模な森林破壊、生物多様性の喪失、人権侵害を引き起こした2000年代半ばの「バイオ燃料ゴールドラッシュ」の過ちを繰り返す恐れがある。

 「作物を燃やして燃料にするのは賢明ではないという証拠は明らかである。気候、生態系、そして食料安全保障への影響を無視することはできない。政府は、多くの場合、利益よりも害をもたらす解決策を推進するのではなく、真に持続可能な代替手段に目を向けるべきである」と、 T&Eのバイオ燃料キャンペーン担当者、Cian Delaney氏は述べている。

詳しくは、→https://www.transportenvironment.org/articles/scientist_letter_biofuels

2025-11-09 | Posted in ニュース情報/政策関連 |