トピックス,エネルギー編
伊藤忠、新造アンモニアバンカリング船発注。洋上での舶用アンモニア燃料の供給体制確立へ(2025.7)
伊藤忠商事㈱は、この度、同社100%子会社で、在シンガポール特定目的会社のClean Ammonia Bunkering Shipping Pte. Ltd.(CABS社)を通じて、佐々木造船㈱、泉鋼業㈱との間で、5,000 m3型アンモニアバンカリング船建造に関する建造契約、及び本船に搭載するアンモニアタンクプラント製造に関する請負契約を、それぞれ締結したと発表した。同時にCABS社は㈱広島銀行との間で本船建造資金に関する融資契約を締結した。
国際海事機関(IMO)は「2050年頃までに国際海運からの温室効果ガス(GHG)の排出をネットゼロにする」という国際目標の実現に向け、各国と様々な協議を重ねている。今年4月には、中期施策として、舶用燃料を段階的にGHG排出量の少ない代替燃料に転換する制度や、ゼロ・エミッション燃料船導入に対して経済的インセンティブを与える制度を含む条約改正案が、国際間で承認された。この枠組みが発効すると、GHG排出量の少ない代替燃料供給に向けた取組みや、ゼロ・エミッション燃料船の導入が加速する。
また、代替燃料の中でも、アンモニアはゼロ・エミッション燃料として期待されており、アンモニア燃料船は、船会社、造船所や荷主等、現在多くの海事関係者が検討し、開発を進めている。その中で舶用アンモニア燃料の供給を行うアンモニアバンカリング事業は、海事産業と燃料産業の接点であり、特にバンカリング船は燃料供給のラストワンマイルを担う重要な設備として世界でも注目されている。
本契約は、経済産業省の令和5年度補正「グローバルサウス未来志向型共創等事業(大型実証 ASEAN加盟国)(第2回公募)」に採択された「シンガポール国/舶用燃料アンモニア供給実証事業」に基づいたものである。今後、世界初となる新造アンモニアバンカリング船を建造し(シンガポール船籍、2027年9月完工予定)、シンガポールでのアンモニアバンカリング実証に向け、シンガポール海事港湾庁(MPA)等、海事関係者や燃料生産者との具体的な協議を、日本国政府の支援を得ながら進めていくことになる。
<今後について>
同社は、「統合型プロジェクト」推進のための重要なステップとなる本船建造や実証を通じて、洋上での安全な舶用アンモニア燃料の供給オペレーションを確立する。その上で、アンモニア燃料船とクリーンアンモニア生産における先行者を本船で繋ぎ、舶用アンモニア燃料の初期需要を確保することで、シンガポールでのアンモニアバンカリングの事業化を実現し、将来的にはスペイン(ジブラルタル海峡)、エジプト(スエズ運河)、日本等、世界の主要な海上交通要所への拡大を目指す。
また、本船建造実績や実証での知見を活かし、需要が増しているアンモニアバンカリング船、アンモニアタンク製造における日本造船産業の競争力強化に貢献していく考えだ。
詳しくは、→https://www.itochu.co.jp/ja/news/press/2025/250714.html