研究情報
国際研究PJ・グローバル・カーボン・プロジェクト、世界N2O収支2024年度版公開。最近40年の人為起源N2O排出は40%増加(2024.6)
国際研究プロジェクト「グローバル・カーボン・プロジェクト(GCP)」は、一酸化二窒素(N2O)の主要な発生源と吸収源を詳細に網羅した世界のN2O収支「世界の一酸化二窒素(N2O)収支2024」を公表した。今回の報告では、最近40年間(1980年から2020年)において、世界の人為的N2O排出総量は約40%増加し、最も主要な人為排出源は農業活動であることが示された。近年の大気中N2O濃度は想定を越える速度で上昇しており、本報告を踏まえて排出削減を早急に進めるとともに、世界全体でN2Oの収支を監視するネットワークを構築する必要性がある。
今回の報告は世界各地の55機関より58名の研究者が参加する国際研究チームで更新が行われた。その中には日本の研究機関(国立環境研究所および東京大学、海洋研究開発機構)に属する2名が含まれている。
一酸化二窒素(N2O)は、地球温暖化の原因となる主要な温室効果ガスの1つ。N2Oは、二酸化炭素(CO2)やメタンといった他の温室効果ガスと比べて大気中の濃度は低いが、単位重量あたりで高い温暖化をもたらす能力(地球温暖化係数)を持つ。また、成層圏オゾン層の破壊物質でもある。そのため、N2Oの排出源と大気中での挙動を正しく理解することは、地球温暖化を正しく理解し対策を講じる上で重要な課題ある。これまでの大気中のN2Oは1750年の270ppb (十億分率、1ppb = 0.0000001%)から2022年の336ppbまで増加してきた。食料、飼料、繊維、エネルギーの需要が高まり、廃棄物や産業活動による排出が増えることで、この増加傾向は今後も続くと予想される。このような背景を踏まえ、世界のN2O収支の全体像を明らかにし、また、N2Oの排出および吸収・消滅速度を決定する生物地球化学的プロセスを解明するための研究が進められてきた。
その成果を取りまとめた最初の報告書は2020年に出版され、今回、最新のデータと知見に基づいて内容が更新された。1980年から2020年の期間について、世界全体でのN2O収支の主要部分を網羅するよう、21種類の排出源と2種類の吸収・消滅源を包括的に扱って定量化することに成功した。その全体像を示したのが下図。
詳しくは、→https://www.nies.go.jp/whatsnew/2024/20240612/20240612.html