G&Bレポート

東芝エネルギーシステムズ(株) バイオマス発電所排出のCO2を分離回収する 大規模 BECCS 対応設備稼働  (2021.2.24)

 東芝エネルギーシステムズ(株)は、2020年10月、グループ会社である(株)シグマパワー有明の三川発電所(福岡県大牟田市)において、バイオマス発電所から排出されるCO2を分離回収する大規模な実証設備の運転を開始した。三川発電所はPKS(ヤシ殻)を主燃料としたバイオマス発電を行っており、今回稼働した設備は、世界初の大規模BECCS対応設備となる。

CO2分離回収実証装置

(東芝エネルギーシステムズ(株)提供)

 今回稼働した設備は、同発電所隣接地に2018年2月より機器の納入、据付を開始し、試運転を行ってきた。本設備は、三川発電所から1日に排出されるCO2の50%にあたる500トン以上のCO2を分離回収することが可能だ。火力発電所から排出されるCO2の50%以上を回収することができる設備としては日本初という。同社は、環境負荷が少ない高効率発電設備の提供やサービスを進めるとともに、今回の実証運転を通じ、CO2分離回収の技術、性能、コスト、環境影響、発電所との統合運用性等の評価を行っていく考えだ。

(環境省 CCUSの早期社会実装会議資料より)

 同社のこの実証事業は、2016年度から環境省が推進する「環境配慮型CCS実証事業」の中で行われている。この実証事業は、火力発電所でのCO2分離・回収技術の実証を行い、その結果を踏まえて、また、環境影響評価手法を取りまとめつつ、日本に適した円滑なCCS導入手法を取りまとめることで、地球温暖化対策の強化を目指すものとしてスタートした。同社を代表事業者とする、18法人によって進められており、同社は分離・回収分野の検証を担う。
 「本事業においては、分離・回収技術の実証となるため、地下地層への貯留は実施しておりませんが、将来的にはCO2圧縮液化設備などを増設することによって、回収したCO2を適切な地点まで船舶等で輸送し、貯留の実証に供することができる設備として計画しています」(同社 パワーシステム事業部)
 
 脱炭素社会の実現に向け、国内外で、再生可能エネルギーの導入が進んでいるが、天候や昼夜など自然条件により出力が大きく変動するものもあり、供給が不安定になりやすい。当面は安定的に継続して発電可能な火力発電が、ベースロードと調整電源としての両方の役割を担う電源となる一方、発電所から排出されるCO2を大幅に削減可能なCCUS技術の実現が求められている。国際エネルギー機関(IEA)は、”CCUS in Clean Energy Transitions” の中で、既存の発電所や産業プラントに導入されなかった場合、2050年に約80億トンのCO2を排出する可能性があるとしている。
https://www.iea.org/reports/ccus-in-clean-energy-transitions

(環境省 CCUSの早期社会実装会議資料より)

 さて、ここで用語について整理すると、CCUSとは火力発電所等から排ガス中のCO2(Carbon dioxide)を分離・回収(Capture)し、有効利用(Utilization)、または地下へ貯留(Storage)する技術である。CCS(Carbon dioxide Capture and Storage)とはその中の地下へ貯留する技術、CCU(Carbon dioxide Capture and Utilization)とは有効利用する技術だ。
 BECCS(Bio-Energy with Carbon Capture and Storage)とは、CO2の回収・貯留と組み合わせたバイオマスエネルギーを生産・利用する技術。過去に排出され大気中に蓄積したCO2を除去するネガティブエミッションを実現する技術であり、パリ協定の目標達成のためのオプションとなっている。CCS付きバイオマス発電とも呼ばれ、国内外では今後注目を増していく技術と考えられているが、食料生産との土地競合、森林地から資源作物栽培への転換による生態系の劣化等に注意を払いながら進める必要があるという認識もある。
 経済産業省は、CO2を炭素資源と捉えて再利用する「カーボンリサイクル」というコンセプトを推進しており、2019年6月にはCCU技術の各分野で研究開発が必要な技術的な課題を整理した「カーボンリサイクル技術ロードマップ」が公表された。
 環境省は、2018年度より「CO2の資源化を通じた炭素循環社会モデル構築促進事業」を開始し、CO2資源化を実現するための課題を整理し、CCU普及を目指す事業を進めている。

シグマパワーホールディングス会社概要

 同社は、これまで培ってきた豊富なプラントエンジニアリング力を活用し、高効率な再生可能エネルギーによる発電所の建設、運営を行っている。発電所エリアを活用し、CCS、高効率蒸気タービン、IoT遠隔監視システム等の実証試験を行い、環境技術開発も推進している。シグマパワーホールディングスは、同社の発電事業を担っており、電源別の傘下会社にてオペレーションとメンテナンスを実施している。(株)シグマパワー有明の三川発電所は、バイオマス分野を担う。

(株)シグマパワー有明 三川発電所

(東芝エネルギーシステムズ(株)提供)

 同発電所は、2005年に東芝グループの発電事業の拠点として石炭による発電事業を開始した。2008年からは木質バイオマスと石炭の混焼による発電を進め、世界的な脱石炭火力、再生可能エネルギーへのシフトを受け、2017年、同社グループ初のバイオマス主体の発電所へのリニューアルを実施。主燃料としてバイオマス燃料のPKSを輸入採用し、従来と比較してCO2排出量を年間約30万トン削減。PKS最大3万トン貯蔵できる専用置場も発電所構内に設置した。発電出力は5万kWで、一般家庭約8万戸分に相当する電力を供給している。また隣接地に4.4万kWのバイオマス発電所も建設中で、2021年秋稼働予定だ。
 CO2分離回収システムについても、2009年9月に三川発電所内に1日あたりのCO2回収量が10トン規模のパイロットプラントを建設して以来、改良、実証を積み重ねてきた。実際の発電所におけるシステム性能の実証とともに、その運用性、保守性についても検証を進めてきた。

CO2分離回収の原理

(東芝エネルギーシステムズ(株)提供)

 今回の大規模CO2分離回収システムについては、化学吸収法による燃焼後回収方式を採用している。同方式では、アミン水溶液という物質の低温の状態ではCO2を吸収し、高温になるとCO2を放出するという性質が利用されている。「この技術は、既に確立した技術であり、新設の発電所に限らず、既設改造・産業用等にも応用でき、適用範囲(市場)が幅広いことが特徴です。更には、部分回収が可能という特徴もあります。一方、CO2の分離回収エネルギーが比較的大きいことから、CO2分離回収設備が大型化し、コストがかかるという点がありますが、これは今後の課題です」(同社 パワーシステム事業部)

環境省Webサイト「ミライアイズ」
http://www.env.go.jp/earth/mirai_eyes/

 三川発電所やこのCO2分離回収システムについては、2019年度制作の環境省のミライアイズ「イノベーションで未来を切り拓く~CCUS~」(佐賀県佐賀市、東芝グループ)でも紹介された。

 同社と合わせて紹介された佐賀市清掃工場のCO2分離回収プラント構築も同社が手掛けており、純度の高いCO2を回収、その高純度CO2はパイプラインで運ばれ、藻類培養事業やバジル生産、きゅうり生産を行う施設園芸農業で利用されている。
 「三川発電所と佐賀市のプラントはCO2分離回収技術の基本原理は同じです。佐賀市のケースではCO2分離回収設備で回収した後のCO2は圧縮機で昇圧し、不純物を除去する設備を設けることで食品グレードに適したCO2純度が得られる仕組みになっています。一方、煙道排ガスはCO2分離回収設備に供給される前に脱塩設備で処理されることで塩化水素濃度を低減しております。この操作によりCO2分離回収設備でのCO2分離回収をより効果的に実現できるようになりました。塩化水素が多く含まれるのは清掃工場排ガスに特有であり、三川発電所の環境省環境配慮型CCS実証事業においては脱塩設備を設置しておらず、代わりにSOxを除去するための脱硫設備を設けています」(同社 パワーシステム事業部)

 BECCSは貯留をベースとした事業モデルであるが、高純度CO2は植物や藻類にとっては、光合成促進のための資源であり、また化成品の原料にもなりうる。利用をベースとしたCCU事業モデルもどう展開していくか注目だ。

 

 

2021-02-19 | Posted in G&Bレポート |