研究情報

ダイセルと金沢大、新CO2還元手法に成功。可視光照射でダイヤモンド表面から電子放出利用(2023.12)

 金沢大学と㈱ダイセルの共同研究グループは,爆轟(ばくごう)法で合成したナノダイヤモンドを基軸とした独自のダイヤモンド固体触媒を開発し、可視光を当てることで放出される電子によりCO2を一酸化炭素へ還元する事に成功したと発表した。太陽光に6%程度しか含まれない紫外光をダイヤモンドに当てることで、周囲のCO2が還元されることは既に知られていたが、太陽光に最も多く(約50%)含まれる可視光を用いて同現象が確認できたのは、世界で初めて。
 ダイヤモンドは電気を通さない絶縁体として有名だが、ホウ素を高濃度に含むことで導電性物質となる。これを利用し、化学的に安定な材料として電気化学分野での応用研究が盛んに行われてきた。特に、微量の化学物質を検知できる高感度センサーや効率的にオゾン水を生成できる電極として大きな注目を浴びており、既に複数の企業によって社会実装が進められている。一方、ダイヤモンドをCO2の電解還元に用いる場合は過電圧が大きく、実用的な分解電圧で還元するには助触媒金属との複合や深紫外光などの高エネルギー光の照射が必要不可欠だった。今回、ダイセルの爆轟合成技術と、金沢大学の化学気相成長(CVD)技術を組み合わせた、独自のダイヤモンド結晶化技術により、太陽光に最も豊富に含まれる可視光を吸収して電子を放出する特殊な結晶構造を持ったダイヤモンド触媒を開発し、放出された電子によってCO2を一酸化炭素へと還元する事に成功した。
 当技術(太陽光超還元)は、触媒寿命の長さや所要電力の少なさという観点で、カーボンネガティブ社会の実現を大幅に近づける革新的カーボンリサイクル技術として期待できる。ダイセルでは、工場から排出されるCO2を各種化工品原料となる一酸化炭素へと還元するサステナブル技術として、自社の化学プラントにて実証実験を行う考えだ。

本技術の概念図

詳しくは、→https://www.daicel.com/news/2023/20231211_915.html

 

2023-12-14 | Posted in 研究情報 |