研究情報
国際農研、農研機構、京大等研究G、植物の新たな干ばつストレス応答機構・リン酸欠乏発見(2023.10)
国際農林水産業研究センター、京都大学、名古屋大学、理化学研究所、東京大学、農業・食品産業技術総合研究機構の研究グループは、葉のしおれが見られない程度の極めて初期の干ばつにおいて、植物体内のリン酸量が低下し、リン酸欠乏応答が起こることを世界で初めて発見した。
温度異常、塩害、病虫害などのさまざまな環境要因の中で、干ばつは作物生産に最も深刻なダメージを与える環境ストレスだ。枯れてしまうような目に見える干ばつによる被害だけでなく、葉がしおれない軽度の干ばつであっても、収量が半減するほどの甚大な被害をもたらす。しかし、このような「見えない干ばつ」に対して、実際の畑で植物がどのように応答しているのかについては、畑の環境が複雑に変化するだけでなく、十分な雨が降ると干ばつ試験を行うことができないため、これまで解明されていなかった。
そこで研究グループは、軽度の干ばつを人為的に安定して誘導するため、これまで干ばつ研究では利用例がなかった、水はけを良くすることを目的として畑の土を盛り上げる「畝(うね)」を利用した実験系を開発した。さらに、畑での6年間の実証試験を通して、毎年変わる環境条件下においても、畝により干ばつを安定して誘導することに成功した。この実験系を用いた畑のダイズの網羅的解析から、これまでわかっていたアブシシン酸(ABA)の応答が起こる前の、葉がしおれないレベルの初期の干ばつにおいて、植物のリン酸量が低下し、リン酸欠乏応答が起こることを突き止めた。また、実験室におけるシロイヌナズナを用いた解析から、リン酸欠乏応答に関わる鍵遺伝子が、干ばつ初期の植物の生育に重要な役割を果たしていることを明らかにした。
詳しくは、→https://www.jircas.go.jp/ja/release/2023/press202314