研究情報

住友商事、マレーシア・昆虫由来代替タンパク質製造のNutrition Technologiesと戦略的提携(2023.4)

 住友商事㈱は、マレーシアで昆虫由来代替タンパク質等を製造するスタートアップ企業、Nutrition Technologies(ニュートリション・テクノロジーズ:NT)と戦略ビジネスパートナーシップを締結したと発表した。今後、日本における独占販売代理店として同社製品の市場開拓および高付加価値製品の開発を加速させる考えだ。

 世界的な人口増加と食の西洋化、近年の異常気象などに伴い、世界的な「プロテインクライシス」(タンパク源の需給ギャップが崩れてしまうこと)が懸念されている。こうした中で注目されているのが、昆虫由来代替タンパク源だ。既存の動物性タンパク源と比較して必要となる土地、水資源の量が顕著に少なく、また排出する温室効果ガスもほとんどない。同市場は、2020年時点の175億円から2030年には3,500億円へと飛躍的に成長すると予測されている。
 2015年にシンガポールで設立されたNTは、2020年からマレーシアでBlack Soldier Fly(アメリカミズアブ:BSF)を養殖・加工する、アジア最大規模の昆虫由来代替タンパクの工場を運営している。昆虫由来のタンパク源としては、コオロギやバッタ、ミールワームなどが候補となる中、BSFは、繁殖の容易さ、豊富なタンパク質量、病原菌の媒介リスクの低さが特徴で、FAO(国際連合食糧農業機関)からも期待を寄せられている昆虫だ。NTは、近隣の工場やプランテーションから出るヒト用食品の残さ・副産物を原料としてBSFを養殖している。また、欧州の大手同業他社は、自社電力需要のうち、33%をBSF育成のための空調に充てていると言われているが、NTは東南アジアの温暖な気候のもと空調を必要とせず、製造コストの低減に加え、CO2排出量の削減を実現している。

(BSFを粉末として製品化)

 住友商事は、2022年10月にNTへの出資を行い、様々な協業検討を進めてきた。今般、NTと戦略ビジネスパートナーシップを締結し、日本での独占販売店として、既存事業の知見やネットワークを生かしながら国内で更なる市場開拓を進めていく。現在は、供給不足・価格高騰が懸念されているカタクチイワシなどの養食魚用飼料(魚粉)の一部をBSFに置き換え、養殖魚やエビに与える実証実験を国内外で行っているが、更に取り組みを加速させ、十分に安全性および機能性を検証の上、今年度中に製品の提供を開始することを目指す。また、将来的には加工過程で生成されるオイルを利用した化粧品や化学品などの分野においても開発に取り組み、2030年までに日本市場において、年間約3万トンの昆虫由来代替タンパクおよびオイルの取り扱いを目指す。

詳しくは、→https://www.sumitomocorp.com/ja/jp/news/topics/2023/group/20230424

 

2023-04-26 | Posted in 研究情報 |