研究情報

出光興産、海洋アルカリ化を活用したCO2除去(CDR)に注力の米・スタートアップVycarb社に出資(2025.9)

 出光興産㈱は、9月中旬に海洋アルカリ化(Ocean Alkalinity Enhancement:OAE)を用いて、大気中のCO2除去(Carbon Dioxide Removal:CDR)に取り組む米国のスタートアップ企業のVycarb Inc.(Vycarb社)に出資したと発表した。出光興産はVycarb社への出資を通じ、OAEに関する知見を獲得し、北米におけるCDR事業モデルの構築を推進する。なお、出資は出光アメリカズホールディングス(同社100%子会社、IAH)を通じて行った。

 海洋アルカリ化とは、水中に溶解しているCO2を、石灰石などの自然界に存在するアルカリ性鉱物に固定化するCDRの手法。水中のCO2濃度を下げることで大気中のCO2が海水や河川水に溶け込みやすくなるため、結果として大気中のCO2の除去に寄与する。

 2050 年のカーボンニュートラル達成には、CO2排出量の削減にとどまらず、大気中のCO2を回収し除去することが不可欠である。この実現に向けて、大気中のCO2を直接または間接的に取り除くCDRの社会実装が期待されている。CDRの手法は、OAEのほかにDACCS(Direct Air Capture and Carbon Storage、直接空気回収・貯留)や風化促進(岩石などを利用した大気中のCO2除去・貯留)、植林など多岐にわたる。数あるCDRの手法のなかでも、OAEは年間数十億トンの削減・吸収ポテンシャルがあるとされており、世界規模でのCO2削減策として期待されている。 Vycarb社は、海水や河川水のCO2の除去および貯留技術の開発を推進しており、特にOAE において高い専門性を有している。Vycarb社のOAEは、陸上にある小型コンテナ内の独自設備でアルカリ性鉱物と海水や河川水を反応させてCO2を固定化し、炭酸塩・重炭酸塩と水にして海や河川へ放流するというもの。また、一般的にOAEでは、CO2除去量の測定・報告・検証(Measurement, Reporting and Verification:MRV)が難しいとされているが、Vycarb社はリアルタイム計測が可能なセンサー技術を活用することで、高精度なMRVを実現している。

詳しくは、→https://www.idemitsu.com/jp/news/2025/250919.pdf                           →https://www.vy-carb.com/

2025-09-26 | Posted in 研究情報 |