研究情報
NTT、半導体光触媒用いた人工光合成で世界最長の連続動作時間を実現。樹木が年間固定する炭素量上回る(2023.11)
日本電信電話㈱(NTT)は、太陽光エネルギーを利用する半導体光触媒とCO2を還元する金属触媒を電極として組み合わせた人工光合成デバイスを作製し、世界最長の350時間連続炭素固定を実現した。CO2変換反応による累積炭素固定量は420g/m2に達し、これは樹木(スギ)が年間で固定する単位面積当たりの炭素量を上回る量に相当する。
今後は、より高性能な人工光合成デバイスを実現するために、電極での反応の高効率化、電極の長寿命化の両立を図る。さらに、屋外試験を通じて、太陽光エネルギーを用いたCO2削減技術のひとつとして確立し、気候変動の抑制に寄与し、持続可能な社会の実現に貢献する考えだ。
気候変動を抑制するため、世界中で脱炭素に向けた取組が加速している。NTTグループでは、2040年にグループ内でのカーボンニュートラルを実現するため、再生可能エネルギーの導入やIOWNによる消費電力の削減など、さまざまな温室効果ガス排出量削減の取り組みを進めている。これらに加え、既に大気中に排出されたもしくは排出されるCO2を一酸化炭素(CO)やギ酸(HCOOH)などに変換して固定化する技術として、半導体や触媒などの無機物で構成され、植物の光合成を超えるCO2変換性能を実現できる人工光合成の研究開発を行っている。
人工光合成はこれまでに世界中で様々な研究が進められており、特に高いCO2変換効率を実現できる触媒に関する検討が盛んだ。一方で、連続したCO2変換の試験時間は数時間から数十時間レベルに留まっており、長時間化に向けた劣化抑制の技術確立が課題となっている。
人工光合成は、半導体光触媒を用いた酸化電極と金属触媒を用いた還元電極から構成される。実用化に向けての具体的な課題として、腐食等による劣化を抑制し、長時間の反応に耐えうる長寿命な電極設計が求められている。また、人工光合成によるCO2変換は、水溶液中の溶存CO2をCOやHCOOHへ還元する手法が広く用いられているが、水溶液中に溶解できるCO2の量には限りがあり、副反応が起こりやすくなる。このため、CO2を選択的に変換する電極構造やデバイス設計が求められている。
NTTでは、長時間連続して気相中のCO2をより効率的に変換可能な人工光合成の実現をめざし、光をエネルギーとして利用するための長寿命な半導体光触媒電極と、気相のCO2を高効率に変換するために電解質膜と一体化した繊維状の金属触媒電極により構成した人工光合成デバイスを設計した。
詳しくは、→https://group.ntt/jp/newsrelease/2023/10/27/231027a.html