研究情報

JSTと東工大、アンモニア合成促進する新しい水素化物の開発発表。大気安定性と高触媒活性(2023.4)

 東京工業大学の研究グループは、充填トリジマイト型構造を持つアルミン酸バリウム「BaAl2O4」内の酸素の一部をヒドリドイオン(H)に置き換え、さらにこの新材料をコバルト触媒の担体として用いると、既存のルテニウム触媒よりはるかに高いアンモニア合成活性が実現することを発見したと発表した。コバルト触媒の活性を高めるこの新材料は、3次元的に連結した四面体がカゴ状の骨格をつくり、結晶構造の内部の空間にHや電子が安定した形で取り込まれて保護されるため、大気中での安定性が向上する。そのため従来のHを含む材料の弱点を克服など、コバルト触媒として世界最高レベルの性能を実現した。また、研究成果はJSTやNEDO等の支援や委託によって行われた。

 水素社会の構築に向けて、再生可能エネルギー由来の水素をアンモニアに変換する「グリーンアンモニア合成」に注目が集まり、そのための触媒開発が世界中で行われるようになった。なかでも環境負荷を低く抑えられる低温でのアンモニア合成については、Hを有する触媒材料が有効に働くことが報告されているが、そうした材料のほとんどには「大気に暴露すると活性が大幅に低下する」という課題があった。
 アンモニアは、窒素肥料や窒素含有化成品の原料であり、化学産業の基幹物質でもある。さらに近年では、クリーンエネルギーとして期待を集める水素を高い密度で含み、貯蔵・輸送する水素キャリアとしても注目されるようになった。現在、工業的なアンモニア合成では、天然ガスなどの化石資源を水蒸気とともに触媒存在下、高温で反応させることで得られた水素を利用し、高温(400~500℃)および高圧(10~30 MPa)を必要とするハーバー・ボッシュ法により大量生産されている。しかしこの方法では、水素を作るのに、副産物として大量の炭酸ガスが発生してしまうという問題があり、風力や太陽光などの再生可能エネルギーを利用してCO2を排出しない方法で生成した水素を利用しながらアンモニアを合成する「グリーンアンモニア合成」の実現が重要な課題とされてきた。このため、低温・低圧という温和な条件において、高効率で作動する触媒の開発が求められている。
 そうした温和な条件下でのアンモニア合成で最も高い活性を示す触媒としては、ルテニウムが知られており、近年は、Hを有する触媒材料が、ルテニウムなどの遷移金属触媒上でのアンモニア合成を大幅に促進できることが本グループを含め国内外の多くの研究者によって報告もされている。しかし、ルテニウムは貴金属であるため実用面で課題がある。さらに、これまで報告されたHを有する材料のほとんどは、大気に暴露すると触媒活性が大幅に低下する点も課題であった。したがって、非貴金属であるコバルトなどを触媒に利用し、そのアンモニア合成を大幅に促進できる安定な材料が求められていた。

詳しくは、→https://www.jst.go.jp/pr/announce/20230427-4/index.html

 

2023-04-30 | Posted in 研究情報 |