研究情報
積水化学と東海カーボン、CCUS実用化に向けパートナーシップ締結。新たな手法開発へ(2023.4)
積水化学工業㈱と東海カーボン㈱は、CO2を一酸化炭素(CO)へ高効率で変換する技術(ケミカルルーピング反応技術)によって生成されたCOを用いた、各種炭素素材・製品の製造技術(CCU)及びCO2を固体炭素として回収・貯留する技術(CCS)の実用化を目指し、4月18日、パートナーシップを締結した。この技術が実現すれば、化石資源への依存度を低減し、各種炭素製品生産時の脱炭素化へ貢献すること、CCSの新たな手法の一つとなることが期待される。このパートナーシップにおいて環境負荷の優位性や経済性が認められれば、パイロットプロジェクトを進め、2030年を目途に商用化を目指す考えだ。
●背景
CO2を燃料や化学製品に変換して活用するCCUや、CO2を回収・貯留するCCSがCO2の大気中への放出を削減する技術として注目されている。
また、炭素製品は、自動車や建築、機械、電子部品などさまざまな用途で使われ、生活を豊かにしている素材ですが、原料の多くは化石由来の物質であり、製造工程における CO2排出量も大きいため、グリーン化が大きな課題となっている。CO2を炭素に直接変換する技術は既にありますが、変換効率が低く、CCU実現のためには更なる技術開発が求められている。
また、現在のCCSはCO2を地中や海底に直接貯留する方法が一般的ですが、その貯蔵方法では圧力が必要となり貯留施設の立地に制約が生じる。今後拡大するCCSの需要に鑑みると、固体炭素としての貯留のような、立地の制約を受けず、圧力に依らない貯留形式の開発が望まれている。
現在、積水化学は、ケミカルルーピング反応技術において、独自開発した触媒と反応プロセスによって、CO2を90%という高い転化率でCOに変換する革新的技術を開発している。東海カーボンは、100年以上にわたり培ってきた各種炭素素材・製品の製造・評価技術や設備を活かし、各種形態(固体、液体、気体)の原料を用いて、これに適した組成配合・製造方法により製品開発を行っている。両社の保有する技術を活用することで革新的なCCUSプロセスを実現することができると考えている。
● パートナーシップに基づく実施目標
ケミカルルーピング反応技術により炭素製造に由来する排ガス中のCO2を一度COへ変換し、そのCOを炭素へさらに変換して炭素製品を製造するCCU技術と、CO2を直接貯蔵するのではなく、固体炭素として貯蔵するCCS技術の実現を目指す。炭素製造時に発生するCO2を削減することを目指すと同時に、前者は2段階に変換することで、CO2を炭素に直接変換する技術よりも高い変換効率を見込み、後者は圧力を利用する必要がなくなることで貯蔵場所を広げ、また、化学素材やエネルギーの備蓄になる。
詳しくは→https://www.sekisui.co.jp/news/2023/1386374_40075.html